英語の授業改善、徐々に効果? 「話す」「書く」能力で
政府は2017(平成29)年度までに、子どもの英語力を、中学校卒業段階で英検3級程度(GTEC for STUDENTSなら564点など)以上、高校卒業段階では英検準2級程度~2級程度(同565~979点など)以上の割合を50%にするという目標を立てています(第2期教育振興基本計画)。しかし2015(平成27)年度の段階で、依然として目標に届いていないことが、文部科学省の調査でわかりました。ただ、中学生には好ましい変化も見られるなど、授業改善の効果は着実に表れているようです。
政府が英語力の到達目標を資格・検定試験の成績の形で示しているのは、日本人の英語力を「国際標準」によって向上させようという意図からです。その代表例である「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠」(CEFR=セファール)によると、政府目標の中卒相当の「A1上位」はゆっくり、はっきりした会話なら日常的やり取りができるレベル、高卒相当では、個人や家族の情報をやり取りしたり、買い物・地元の地理・仕事など自分に直接関係ある表現ができたりするレベルの「A2」から、身近な話題について標準的な会話を理解したり、個人的に関心のある話題について簡単な文章を作ったりできる「B1」レベルまでとされます。
英語能力には、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能があります。ペーパーテストでは「読む」「書く」の2技能を中心としてしか測れないのに対して、英語を使えるようになるには、4技能をバランスよく育成することが必要で、英語能力の資格・検定試験は、4技能の測定に優れています。
今回、文科省がCEFRに沿って独自に4技能調査を行ったところ、中学3年生で国の目標を達成していたのは、「読む」で26.1%、「聞く」で20.2%、「話す」で32.6%、「書く」で43.2%と、いずれも50%には及びません。高校3年生でも、「読む」32.0%、「聞く」26.5%、「書く」17.9%、「話す」11.0%と、目標には遠いのが現状です。
ただ、中学生では「話す」「書く」が、他の2技能を上回っていることに注目すべきかもしれません。対象となった生徒は、小学校高学年で必修化された英語の「外国語活動」を受けた、最初の学年です。小学校外国語活動では「聞く」「話す」を中心に指導し、中学校ではそれをもとに、会話などの活動を充実させるなどして、4技能をバランスよく向上させることを目指しています。その効果が表れつつあると見ることもできるでしょう。
一方、高校生は入学した時から、英語で行われることを基本とした授業を受けてきた最初の学年ですが、「読む」「聞く」はもとより「書く」「話す」には相当の課題があると言わなければなりません。
文科省では、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で2019(平成31)年度から数年おきに英語を出題して、中学校の授業改善に役立ててもらうことにしています。特に「話す」の調査は、各学校の教員に、実施と評価を行ってもらう考えです。
グローバル人材の育成が求められるなか、同年度に始まる「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の英語と併せて、生徒の飛躍的な英語力向上が期待されます。
(筆者:渡辺敦司)
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。