高校無償化ギリギリ対象外で不公平感…今からやっておくべき対策とは?

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子どもの高校受験を考えたとき、高校無償化制度は気になるポイントの1つではないでしょうか。しかし、少しの差で無償化対象から外れてしまい「もしかして、うちは無償化対象外かも!?」という家庭もあるでしょう。そのようなギリギリ対象外の家庭はどのような対策を取ればよいでしょうか。今からできる対策についてお伝えします。

この記事のポイント

高校無償化の所得制限の仕組みとは

高校無償化制度とは高校の授業料が無料になる制度で、公立高校の場合、年間11万8,800円、私立高校の場合は年間39万6,000円まで授業料が無料になります。公立私立ともに適用される制度ですが、 無償化対象外になるかどうか悩むのは、どちらかというと私立高校を視野に入れた時ではないでしょうか。約40万円分の支援を3年間受けられるかどうかは家計に大きな影響を与えます。

そして、この私立高校授業料の支援を受けられるのは、年収目安が約590万円未満(片働きで子どもが高校生・中学生の4人家族の場合)です。この590万円という、やや中途半端な数字は、子育て世帯の収入の中央値が600万円であることから設定されました。決して高所得者が対象外になっているというわけではないのですね。

ちなみに、下記が高校無償化対象となる年収の目安額です。参考までに確認してみてくださいね。

出典:文部科学省「私立高等学校授業料の実質無償化に係る所得判定基準(2020年7月分以降)」

各都道府県の取り組みをチェックしよう

さて、今までお伝えしてきた内容は国の制度ですが、各都道府県では国の制度に支給額を上乗せしたり、所得制限を引き上げたり対策をとっています。上記の表で、対象外だとしても都道府県の対策次第では対象になる可能性もありますから、まずは、お住まいの都道府県の支援事業を調べてみてください。

とはいえ、それでも対象外の家庭はあるでしょう。しかも、ギリギリ対象外の家庭だと「少しの差しかないのに……」と不公平感も感じますよね。きょうだいがいるなら、なおさらその影響は大きくなり、むしろ、無償化対象家庭に比べ教育費の負担が重くなってしまうかもしれません。では、そのような家庭はどのような対策を取ればよいでしょうか。

今からでもできる高校教育費の対策

・高校でかかる費用を調べて今から準備をする

高校無償化制度では年間約40万円の授業料が支援されますが、これは私立高校の平均的な授業料が約40万円であるためです。しかし、授業料は学校によってピンキリです。

たとえば、東京都の私立高校の場合、授業料が約130万円する学校もあれば、約35万円の高校もあり、その差は、なんと約100万円です。無償化対象だとしても、支援額を超える授業料は自己負担です。制服代や入学金、修学旅行代なども必要ですし、まずは3年間でかかる費用を学校のホームページなどで調べてみましょう。

情報収集して、ある程度の金額がわかれば、今からできる限り準備したいものです。もし、まだ目指す学校が決まっていないなら、200万円を目安にするとよいでしょう。

200万円という数字は、文部科学省「2018年度 子供の学習費調査」の私立高校3年間にかかる学校費用の金額です。この金額の半分は、その時の収入でやりくりするとして、残り半分の100万円は逆算して今から積み立ててみてはいかがでしょうか。

まだ子どもが小学生の場合は、高校生になるまで時間があります。無償化対象になるかどうかは、今の状況ではわからないですし、制度が続いているとも限りません。堅実に積み立てるのが、一番の近道といえそうです。

既に子どもが中学生で積み立てが間に合わない状況だとしても、大学受験対策に力を入れて授業をしてくれ、塾に行く必要がない私立高校なら、公立高校に行って高い塾代を払うより無償化対象外だったとしても、結果安くつくこともあります。

公立と私立では学習環境も違いますから、何を優先すべきかポイントを絞り、大学用に準備していたお金が減ってしまうことのないよう、今の貯蓄状況や収入を考慮して資金計画を今一度行いましょう。

・高校無償化の所得制限対策を行う

無償化対象の主な判定基準となるのは住民税の課税標準額です。難しい言葉ですが、この金額は収入から必要経費や生命保険料控除、医療費控除など各所得控除を差し引いた後の金額を表します。計算式に表すと、下記の通りです。

課税標準額 = 年収—必要経費—所得控除
(注:わかりやすいように計算式を簡易化しています)

かなり簡素化した表現ですが、上記の課税標準額が一定金額以下なら、私立高校無償化対象となります。つまり、必要経費や所得控除を増やせば判定額が下がるのです。

しかし、必要経費は会社員の場合、金額は国で決められています。一方、所得控除は、人によって適用される控除や金額が異なります。年末調整などで所得控除の申告をしますが、手続きが面倒で申告していなかった控除はありませんか? 心当たりがあるなら、もれなく行いましょう。

ちなみに、筆者のオススメはiDeCoです。iDeCoは老後のための資産形成制度で、毎月老後のために積立をすると、その積立金額を全額、所得控除として差し引くことができます。積み立てられる金額には、上限があるので、大きな効果は期待できないものの、ギリギリ対象外ならギリギリ対象になる可能性はあります。

なお、無償化対象の判定は、前年、前々年の所得に基づいて行われます。すぐに対策の結果が出るものではないので、計画的に行いましょう。

まとめ & 実践 TIPS

高校無償化対象外の家庭は、児童手当も支給額が引き下げられているケースもあり、必ずしも家計に余裕があるわけではないでしょう。とはいえ、子どもが望む進路の希望は叶えてあげたいもの。そのためには、やはり計画性を持った資金管理が必要です。今からできることを始めて、子どもの進路選択を応援しましょう。


私立高等学校授業料の実質無償化に係る所得判定基準(令和2年7月分以降)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/__icsFiles/afieldfile/2020/04/22/20200422_mxt_kouhou02_100014428_4.pdf

文部科学省「高校生等への修学支援に関する参考資料 平成29年5月」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/132/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/06/28/1386444_001.pdf

令和3年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/12/10/17.html

文部科学省「結果の概要-平成30年度子どもの学習費調査」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00102.html

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前田菜緒

前田菜緒

ファイナンシャルプランナー、公的保険アドバイザー。保険代理店に7年間勤務後に独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。相談は、夜、子どもが寝てからでも可能で未就学児ママに配慮したサービス体系になっている。2児の母。FPオフィスAndAsset代表(https://www.andasset.net)

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メンバー全員が子育て経験を持つ女性FPのグループ。各自の子育て経験や得意分野を活かして、消費者向けのセミナーや相談業務、執筆、監修などを手掛けている。教育資金に関する情報発信の機会も豊富。

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