【中学生のマラソン大会】持久走で疲れない方法は?効果的な練習やタイムを縮める走り方を伝授!

冬の学校行事の定番であるマラソン大会。持久走に苦手意識をもつ子どもは少なくありませんが、せっかくチャレンジするのですから前向きに取り組んで、成長のきっかけにしたいものです。マラソン大会に向けた練習法や疲れないための走り方のコツについて、シドニーオリンピックでマラソン代表に選ばれ、現在も旭化成の陸上コーチを務める川嶋伸次さんにアドバイスをいただきました。

この記事のポイント

持久走で疲れないための3つのポイント

「持久走は疲れるから苦手」「息が苦しくなるから好きじゃない」という中学生も多いのではないでしょうか。そこで、疲れにくくするための3つのポイントを紹介します。

1:効率的なフォームで走る

効率的なフォームは、無駄な体力を消耗しないため、疲れにくくなります。持久走の際に、前傾しすぎていたり、後ろに倒れすぎたりしてないでしょうか?ドタバタと地面に着地していないでしょうか? 正しくないフォームだと、余計な力がかかってエネルギーをロスしてしまいます。この後で紹介する走り方のコツを参考に、効率的なフォームを意識していきましょう。

2:自分の走るリズムに合わせた呼吸

疲れにくくするためには、呼吸も大切です。走るのに必要な酸素をしっかり体に取り込んでいきましょう。さまざまな呼吸法が紹介されていますが、まずは自分の走るリズムに合わせてしっかり息を吸うことを意識しましょう。

3:ペース配分

ペースを一定に走ることで、体への負担も少なくなり疲れにくくなります。まわりの人のペースに無理に合わせようとせず、自分のペースで走るようにしましょう。

どんな練習が効果的?

陸上部の生徒でもなければ、マラソン大会に向けて、どんな練習をすればよいのかと迷われることが多いと思います。持久走は、突然タイムが縮まることはありませんから、コツコツと練習を積み上げることが大切です。運動部などに所属しておらず、普段、運動不足の場合は、3か月前くらいから練習を始めるとベターです。持久走に限りませんが、運動のトレーニングの本格的な成果はそれくらいの時期から表れるからです。

持久走のトレーニングは苦しそうなイメージがあるかもしれませんが、基本的には無理をしない範囲で取り組んでも十分に効果があります。「3km走ろう」「30分間走ろう」などと、距離でも時間でもよいので一応の目標を設定して無理のないペースで走ります。その際は、後半で説明する走り方のポイントを心がけてください。

走っている途中で苦しくなったら歩いてもかまいませんが、立ち止まると疲れがドッと出てしまいますから足は止めないようにしましょう。タイムを縮めようと無理をしなくても大丈夫です。トレーニングを続けていると、気づかぬうちにペースは速まり、走ること自体がどんどん気持ちよく感じられてきます。

トレーニングの頻度は、週3回以上がおすすめです。一般に運動のトレーニングは、週1回以下は「低下」、週2回は「現状維持」、週3回以上は「向上」といわれています。筋肉痛や疲労感が残る場合は休む必要がありますが、効果を得るためには継続が不可欠と心がけてください。

具体的な練習方法は?

・〇〇間練習

まずは目標タイムを設定します。
例えばマラソン大会は3kmで7分00秒/kmのペースで走り切るのが目標であれば21分間動き続けることになります。その場合「21分間練習」となります。
公園など景色が変わるところで行いましょう。初めは走り疲れてきたら歩き、回復したら早歩きからまた走り出す。これを繰り返していきます。大事なことは21分間休まずに動き続けること。
何度かおこなっていくうちに走っている時間の割合が増え、最終的には走り続けて終われるようになります。更に余裕が出てきたらペースを少しずつ上げていきましょう。

・ダッシュ練習

校庭などで30m〜50mを全力の8割くらいのペースで走ります。ゴールしたら完全に呼吸が回復する少し前くらい(時間にすると90秒後)に再スタート。これを3〜5回繰り返します。この練習では、息が上がっている状態で走り続けるためのトレーニングになります。はやいペースの練習を取り入れることでゆっくりのペースでは使わない筋肉に刺激が入り、より体全体を使って走れるようになり効率の良い走りになります。

・ペース練習

これは周回ができる校庭や運動公園でおこないます。
校庭や運動公園(1周200m~400m)を一定のペースで5周走ります。この練習をすることで、ペースをつかんで走り続けることができるようになります。

走り方のコツは?

走り方のコツは、短距離走と長距離走は大きく異なります。長距離走では次の点に注意していきましょう。

軽く手を握り、肩の力を抜いて腕を振る

腕の振り方も大切です。気持ちが入りすぎ、両手を強く握って前後に勢いよく振るのは、スタミナの無駄づかいです。手は卵を包み込むイメージで軽く握り、肩の力を抜いて、リズミカルに振るように心がけましょう。

リズミカルな足運び

足の運び方でも大切なのは、力を込めすぎないことです。勢いよく踏み出したり、後ろに強く蹴ったりすると、無駄な力が地面に伝わり、その分、体力を消耗してしまいます。イメージとしては、前方に並べられた空き缶をポンポンと上から踏みつぶしながら進んでいく感じで、腕と同様にリズミカルに足を運んでください。
足の「接地」は身体の中心(おへその前方)を意識します。開いた接地(右足が右足前方で左足が左肩前方)より、身体の中心の接地は推進力が大きくなります。

ひざ下と地面が垂直になるように足裏全体で接地

着地は足裏全体でまっすぐ踏み込むような形で、ひざ下と地面が垂直になるように行いましょう。足裏全体ではなく、かかとだけや足先だけの接地となると、足への負担も大きくなることに加え、前に進む推進力も弱まってしまいます。

しっかり息を吸い込む

呼吸法は専門的にいうといろいろと難しいことがありますが、呼吸にばかり意識が向くのはよくありませんから、とりあえずしっかりと息を吸い込むことだけを心がけてください。息を大きく吸うと、自然と大きく吐くことになり、呼吸が安定します。

当日の戦略としては、最初から最後まで同じペースを保って走り、ゴールした時点で体力を使いきるようにするとベストタイムが出やすくなります。そのために、事前のトレーニングで本番と同じ距離を走ってみて、だいたいのペースをつかんでおきましょう。

視線は10m前に

疲れてくるとどうしても視線が足元に落ちてしまいます。そうすると背中が丸まり呼吸がしにくくなります。しっかり前をみて走るようにしましょう。

自分の走り方の癖を知っておく

理想のランニングフォームを心がけていても疲れてくると崩れてきます。前に傾いたりあごが上がり後ろに倒れたり横ブレや肩が吊り上がったりします。
普段の練習から後半疲れてくるとどんな走りの癖がでるか知っておき、癖が出てきたと思ったらすぐに修正するよう意識しましょう。自分では気づきにくいので周囲の人に見てもらい声をかけてもらうのも良いと思います。
マラソンランナーがレース中に沿道の窓ガラスなどに映る自分の走る姿を見ていることが良くあります。これは悪い癖が出ていないか確認して、出ていたらすぐに修正するためです。

トレーニングを通して、こんな効果も期待できる!

持久走の練習を継続すると、タイムがアップする以外にもさまざまな効果が表れます。免疫力が高まって体調を崩しにくくなりますし、体力とともに気力や忍耐力、集中力などもアップし、勉強をはじめ、運動以外の場面でもがんばれるようになるでしょう。勉強などで疲れたときに、気持ちを切り替えるスイッチとしても適しています。マラソン大会前に限らず、ぜひ生活の中に無理のないジョギングを取り入れていただきたいと思います。

監修:

川嶋伸次

1966年、東京都出身。日体大時代、箱根駅伝では山下りの6区を担当し区間賞を取るなどチームに貢献。卒業後は旭化成陸上部に入部し、各大会で活躍した。2000年の琵琶湖毎日マラソンで自己ベストとなる2時間9分04秒をマーク(日本人トップの2位)、シドニー五輪マラソン代表に選出された。その翌年に現役を引退、02年からは東洋大陸上競技部の監督に就任。現在は旭化成陸上部コーチ。

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