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2024.8.30

「コミュニティ・スクール」とは?概要やPTAとの違い、取り組み事例を解説

地域と学校が共によりよい学校をつくるための「コミュニティ・スクール」を導入する学校の割合が、全国の公立学校の5割以上を占めるようになりました。※学習指導要領の考え方と相まって、学校が地域とともにあり、そのなかで子どもを育てるという流れは今後も強まっていく見込みです。その中心的な役割を期待されている「コミュニティ・スクール」とは、どのようなものでしょうか?

学校の人事にも意見を言える「コミュニティ・スクール」とは?

コミュニティ・スクールは「学校運営協議会」という組織を設置している学校のことです。そのため、コミュニティ・スクールのことを「学校運営協議会制度」ともいいます。この協議会を通して、保護者や地域住民等が一定の権限をもって学校運営に参画することで、学校の教育目標やビジョンを皆で共有し、共に子どもたちを育て、よりよい学校づくりをしていくことが目的です。会議などに参加する委員は教育委員会が任命し、校長やPTA役員、自治会長、地元企業の代表者などでバランスよく構成されること、とされています。
主な役割は次の3つです。
1.校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
2.学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる
3.教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる

このように、学校づくりに参加する意思と権限をもっているのがコミュニティ・スクールなのです。

拡大の背景には、地域活性化へのニーズ

コミュニティ・スクールが制度として導入されたのは2004年のことです。その少し前から、日本の社会全体で規制緩和や民営化を進める新自由主義の色が強くなっていました。教育政策もその影響を受けて、2000年に「学校評議員制度」が導入され、さらに強い権限を持たせようと地域や保護者が積極的に運営に関わる公設民営の学校制度を海外から取り入れようとしました。曲折を経て、既存の学校への参画に重きを置いて制度化された組織がコミュニティ・スクールです。しかし当時は、そうした仕組みを本格活用しようとする学校は多くありませんでした。また、すでに学校とのつながりが強い地域にとっては、制度化による新たなメリットを感じにくい面もありました。

一方、その間も地方部を中心に人口減少が進み、地域の中心的存在である学校の存続も危ぶまれる状況が各地で見られるようになりました。そこで、地域と学校が共に維持・発展していくために、「社会とともにある学校」をキーワードに据えて、教育を通してまちづくり・ひとづくりに力を入れようとする流れができました。2017年には法律を改正し、コミュニティ・スクールは教育委員会が設置するものとして努力義務化されます。並行して、現行の学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」が掲げられました。その結果、全国のコミュニティ・スクールの数はここ数年で急激に増え、2023年の設置校数は18,135校、導入率は52.3%にのぼります。※

PTAとの違いは?コミュニティ・スクールの特徴とメリット

地域と学校をつなげる仕組みは、PTAや学校評議員制度、地域学校協働本部などさまざまな組織があります。コミュニティ・スクールとそれらの最大の違いは、持っている権限の大きさと、設置者の違いです。例えば、学校の人事に影響を及ぼす力を持つのはコミュニティ・スクールだけです。また、コミュニティ・スクールの設置者は教育委員会で努力義務が課されているのに対して、PTAは保護者と教職員、学校評議員制度は校長、地域学校協働本部は複数の団体・組織が設置者となっており、いずれも任意の組織です。今後は、それらがコミュニティ・スクールと連動性を高める動きが強まり、地域の資源を生かした教育活動がよりスムーズに行われるようになるでしょう。

コミュニティ・スクールの仕組みを活用した事例は?

コミュニティ・スクールの仕組みを活用することで、地元の特産物を生かした商品開発や、地域の公民館と連携した活動、放課後の居場所づくりなど、さまざまな取り組みが広がってきました。例えば、高知県の山間部にあるコミュニティ・スクールの小中一貫校では、「総合的な学習の時間」の一環として、地元のよさを実感できる観光ツアーを県内の旅行会社と共同で開発し、実際に販売し、ツアー当日はガイド役も務めました。地域活性化につながり、学校への地域・支援の輪が広がり、子どもたちにとっては探究的な学びが深まり地域への愛着も増すという「三方よし」の成果が生まれました。また、そこまで大々的な活動でなくても、地域の人が日常的に学校に出入りすることで、子どもにとっては様々な大人にふれ、ふるさとに対する思い出や愛情が増えること自体が将来にわたる財産となり、地域の活性化にもつながっていきます。

「形式だけで終わらせない工夫」が課題

コミュニティ・スクールの中には、年数回の会議を行うだけの形ばかりのコミュニティ・スクールが一定数あるのも事実です。実効性を高めるには、いかに学校が地域と共に活動できる場を増やすかがカギです。活動を共にする中で、地域と共にどのような学校をつくっていくのか、そのために何ができるのかを保護者自身も考えていく必要があります。

まとめ
今後強化される「総合的な学習の時間」にコミュニティ・スクールの役割が増す

文部科学省の有識者会議は2024年7月、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の仕組みを活用して学校安全の質の向上を図るよう提言しました。子どもの生命や生活を守るためにも、コミュニティ・スクールの存在が期待されているのです。
また、少し先の話ですが、学習指導要領が2027年ごろに改訂される見通しです。その際は、これまで以上に子どもたちの資質・能力を育成するための中心的な役割を「総合的な学習の時間」が担うと予想されます。「総合的な学習の時間」は地域とのつながりが強く求められる授業ですので、学びの質を高めるためにも、保護者を含む地域全体が、子どもをどのような教育方針で育てていこうとするのかを学校と話し合い、実践していくことが大切です。その足掛かりとなる存在がコミュニティ・スクールであり、期待される役割は今後さらに大きくなるでしょう。コミュニティ・スクールが今後「地域とともに未来社会をつくる学校」になってほしいものです。

取材・執筆:神田有希子

※出典:令和5年度のコミュニティ・スクール及び地域学校協働活動の実施状況について - 文部科学省

※掲載されている内容は2024年8月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

渡辺 敦司わたなべ あつし


教育ジャーナリスト

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする ―検証 教育課程改革―

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。著書に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。

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