調べ学習の進め方やまとめ方のコツは?小学生におすすめのテーマ例も

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「調べ学習」が授業で取り入れられたり、宿題や課題で出されたりすることが増えてきています。夏休みに課されることの多い「自由研究」も調べ学習の一つです。とはいえ「何を調べたらいいの?」「どう進めて、どうやってまとめるの?」など悩んでしまうお子さまも多いもの。
そこで、調べ学習の進め方やまとめ方のコツ、保護者ができるフォローについて、20年近くの公立小学校教員経験を持つベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター の庄子寛之主任研究員に聞きました。

調べ学習の進め方やまとめ方のコツは? 小学生におすすめのテーマ例も

この記事のポイント

調べ学習とは?

調べ学習とは?

「調べ学習」とは、自分で決めたテーマについて調査をし、結果や自分の意見をまとめ、報告(発表)する学習のこと。2000年代に入り「総合的な学習の時間」での取り組みが進み、小学校で2020年度、中学校で2021年度からスタートした新学習指導要領で、さらにその重要性が高まってきています。「総合的な学習の時間」の中でも「探究的な学習」として位置付けられることが多くなっています。

目的

調べ学習の目的は大きく2つあります。1つは、生徒が自分で決めた興味のあるテーマを題材にすることで、学習意欲を高め、主体的に学ぶ力を向上させること。もう1つは、テーマ設定→調査→分析→まとめという一連のプロセスの中で、論理的思考力や問題解決能力を育むことです。

身に付くスキルや能力

調べ学習に取り組むことで「問題解決能力」「自己表現力」「批判的思考力」「情報リテラシー」といった多様な能力が養われます。これらは、学校においてだけでなく、社会に出てからも求められるスキル。変化が激しく、正解が一つとは限らないこれからの社会を生き抜くうえで、特に重要なものです。それぞれ次のようなものとなっています。

問題解決能力:問題に対して、課題や原因を分析し、解決策を考え実行する能力
自己表現力:自分の意見や考えをわかりやすく伝える能力
批判的思考力:さまざまな観点から多角的に考え、本質を見極める力
情報リテラシー:情報を見極め、適切に活用する力

何年生ごろから始まる?

調べ学習は、小学校3年生ごろから本格的に増えてきます。それ以前においても、一人1台配布されたタブレットを活用した調査の機会があります。現在の教育では、主体的で対話的な学びが重視されていることから、個人はもちろんグループで調べ学習に取り組むことも多くなっています。

調べ学習の進め方5ステップと注意点

調べ学習の進め方5ステップと注意点

自分の興味のあるテーマについて調べるといっても、具体的に何からどう進めればよいかがわからず、迷うこともあるでしょう。ポイントは、5つのステップに従って進めること。
「1:テーマを決める」「2:テーマについて予想を立てる」「3:調べ方やまとめ方の見通しを立てる」「4:必要な情報を収集する」「5:集めた情報を整理・分析しまとめる」という5つのステップを意識していきましょう。

1:テーマを決める

テーマ決めは、実は悩む子が最も多いもの。
普段の授業や学習では、与えられた課題に取り組むことが多いため、戸惑ってしまうようです。

よいテーマ設定のポイントは、お子さまの興味・関心を起点にすることです。お子さま自身が好きなことを手がかりにできるとよいですね。
また、テーマは絞り込みがポイント。たとえば「米」について調べる時には、お米の何について調べたいかまで具体的に落とし込むことが大切です。「育ち方」「流通」「栄養」など、テーマを絞らないと何を調べればいいかの見通しが立たず、右往左往してしまいます。具体的なテーマ選びについては、このあと、詳しく説明します。

2:テーマについて予想を立てる

テーマを決めたら、予想を立てます。予想を立てることは、社会でも求められる仮説を立てる力につながるもの。お子さま自身が知っていることや、習ったことを手がかりに自分なりの予想を立ててみましょう。予想を立てることで、調べた結果についての驚きや発見も大きくなるため、記憶にも残りやすく、学びを深められます。

3:調べ方やまとめ方の見通しを立てる

いきなり調べ始めても、行き当たりばったりの調査になって混乱してしまいます。まずは、調べ方やまとめ方の全体像を考えることが大切。何について、どんなことをどんな順番で調べるか、どのようにまとめるかを計画しましょう。見通しを立てることで、横道にそれずに、要点を意識しながら調べ学習を進めていくことができます。まとめ方についても、図で示したい、表で整理したいなど最初にできあがりイメージを意識しておくことで、より精度の高い調査ができるようになります。

4:必要な情報を収集する

調べる材料となるのは、次のようなものがあります。まずは基本的な内容を調べたうえで、より詳しい内容を深掘りして調べていくようにしましょう。

・百科事典・辞典・図鑑
・図書館などの本
・白書などの統計資料
・資料館や博物館
・新聞・雑誌
・インターネット
・詳しい人へのインタビュー

調べる際は、次の2点に注意しましょう。

注意点1:複数の資料に当たって調べる
1つの資料だけだと、視点が足りなかったり、偏ってしまったりします。複数の資料を組み合わせて、客観的で偏りのない事実をつかむようにしましょう。

注意点2:信頼のおける情報源で調べる
一人1台配布されたタブレットを活用して、インターネットで情報収集することが増加しています。最新の情報にスピーディーにアクセスできて便利な半面、注意も必要です。特に注意したいのは、情報の信頼性。どんな人やどんな機関が発信している内容かを確認するようにしましょう。調べたい分野の専門家による情報と、誰だかわからない人の情報とでは、情報の信頼性が大きく異なります。情報リテラシーを高めていきましょう。

5:集めた情報を整理・分析しまとめる

集めた情報を整理して、自分なりの分析をしたうえで結論をまとめていきます。調べた結果をまとめる時には、「はじめ(序論)」「なか(本論)」「おわり(結論)」の構成を意識しましょう。詳しくはあとの段落で説明していきます。

集めた情報をただ写すだけでなく、そこから考えられることや、自分なりの解釈・意見を自分の言葉でまとめることが大切。ただし、事実と意見・感想を混在させないように注意が必要です。

調べ学習のテーマの選び方

調べ学習のテーマの選び方

調べ学習のテーマは、お子さまの好きなことや身近な事柄、興味のあることから選ぶのがおすすめです。インターネットを検索すると、自由研究のテーマ例などたくさんあがっていますが、役に立ちそうなものや、学びが深そうなものより、本当に興味を持てるやりたいことを選ぶほうが、意欲高く自分らしい調べ学習にできるものです。

また、時事性を考慮したテーマや、人気テーマを選ぶ必要もありません。「アメリカで大統領選があったから大統領制について調べよう」とか、「円安だから円安が日本にもたらす影響を調べよう」といったことを考えるケースもあるでしょう。しかし、本当に興味があるのでない限り、「やらされ感」を覚えてしまうためおすすめしません。

「そうはいっても、好きなことが調べ学習になるの? ゲームやスポーツでも大丈夫?」と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、探究は身近なところから始まります。好きなことを客観的にとらえ、深く調べるからこそ、思わぬ発見があり、知的好奇心が刺激されることも。好きなことについて、知りたいこと、疑問に思うことを深掘りしてみてください。

それでも、やっぱり難しい……という場合は、テーマの案が掲載されているインターネット記事や本を親子で一緒に見てみるのがおすすめ。具体的なテーマ案を見ることで、興味を持てるものが見つかったり、好きなことを調べ学習にする際のアプローチ方法を思いついたりするかもしれません。たとえば、次のサイトなど見てみてはいかがでしょうか。

自由研究テーマ大特集!小学生・中学生の夏休みに試したい実験、工作、調べ学習|ベネッセ教育情報

200以上のアイデアが掲載されています。学年やカテゴリー別におすすめテーマを見つけられるほか、お子さまの興味・関心に基づいて、おすすめのテーマが見つかる診断テストも。
学年別の人気1位のテーマも参考にしてみてください。

学年別人気1位のテーマ(2024年11月時点)
・小学1、2年生:割れないシャボン玉を作ろう!
・小学3、4年生:色が変わる飲み物でキャンディーを作ろう
・小学5、6年生:虫メガネでカメラの原理を調べよう
・中学生:ブロッコリーのDNAを取り出す

調べ学習のまとめ方の5つのポイント

調べ学習のまとめ方の5つのポイント

調べた結果は、しっかり伝わる形でまとめることが大切です。次の点に注意して、まとめていきましょう。

1:序論・本論・結論の3構成でまとめる

まとめる時には「はじめ(序論)」「なか(本論)」「おわり(結論)」の3部構成を意識しましょう。自分の頭も整理しやすく、読み手にも筋道を伝えやすくなるはずです。それぞれ何を書けばいいかは、次のとおりです。

「はじめ」(序論)
「何を調べたのか(テーマ)」「なぜそれを調べようと思ったのか(動機)」をまとめましょう。

「なか」(本論)
「調査方法」「調べた資料や、実験に使った材料」「調査結果」について書きましょう。実験を行った場合は、実験のプロセスや途中経過についてもまとめられるとよいでしょう。

「おわり」(結論)
「わかったこと」と「考えたことや感想」をまとめましょう。客観的な事実と、自分の考えが混ざってしまわないように、見出しなどで工夫することが必要です。

2:見出しを立てる

どこに何が書いてあるかがわかりやすくなるように、項目ごとに見出しを立てましょう。文章を書く前に見出しだけ先に立てておくと、整理してまとめていきやすくなります。

3:図や写真など入れてわかりやすく

文章だけでは説明しづらい部分は、図解したり写真を入れたりするなど、視覚的にもわかりやすく伝える工夫をしましょう。実験を行った場合は、実験の途中経過の写真も入れておくと変化のプロセスをわかりやすく伝えられるはずです。

4:参考にしたものもまとめる

どんな資料を参考にしたかという出典も忘れずに示すようにしましょう。出典を示すことは、レポートや論文などでも求められる基本ルールです。図鑑やインターネット記事のタイトルを書くだけでなく、誰が書いたか、いつ書かれたものかも一緒に示しておくようにしましょう。

5:コピペの多用や引用のしすぎに注意

参考資料を引用することはOKですが、コピペの多用や引用のしすぎには注意が必要です。著作権侵害となるうえ、調べ学習に求められる本人の考えや意見が不足してしまいます。インターネットで調べた記事のコピペの組み合わせで、何となく形にするのではなく、自分でしっかり考えて、自分の言葉で表現することが大切。比較的簡単に情報が手に入る時代だからこそ、安易にうのみにするのではなく、調べた情報を比較・整理したうえで、取捨選択し、考えることが重要です。「丸写しはダメだよ」と伝え、情報リテラシーを高めていきましょう。

調べ学習の際に保護者がフォローできること

調べ学習の際に保護者がフォローできること

調べ学習に戸惑うお子さまの姿を見て、フォローしてあげたいと思うこともあるのではないでしょうか。保護者にできるサポートの大原則は「教えすぎないこと」「聞かれたことにのみ答えること」。何とかフォローしてあげたいと、先回りしてあれこれアドバイスしてしまいたくなることもあるかもしれませんが、グッとこらえてください。よかれと思って、あれこれ助言することが、逆に調べ学習への苦手意識を高めてしまうことにもつながりかねません。また、教師の側から見ても、保護者が主導権を握って取り組んだであろうものはすぐにわかります。次の点を意識していけるとよいですね。

興味・関心を引き出すサポート

調べ学習は、自分で決めたテーマに取り組むため、本来楽しいものであるはず。好きなことや、興味のあることについて調べることで学習意欲もUPします。とはいえ、つい「ちゃんとしたテーマを考えなきゃ」と自分の興味・関心を置き去りにしてしまうこともあるもの。お子さまがテーマ選びに苦戦していたら「◯◯とか好きだよね」「あんなところ、行ったことあるよね」「あの時、やったあれ、面白かったね」といった声かけをして、興味・関心を引き出してあげてみてください。お子さまが好きなことや興味があることを10個書き出してみるということから始めるのもおすすめです。その中から、調べてみたいこと、深掘りできそうなことを考えてみるのもよいですね。

正解があるわけではない、失敗しても大丈夫と気持ちを軽くしてあげる

調べ学習は、一つの正解があるわけではないものだからこそ、「失敗したらどうしよう?」と不安になってしまうものです。臆せず、自由に楽しんで取り組めるように気持ちを軽くしてあげられる声かけができるとよいですね。きれいにまとめてコンクールに出すわけでもありません。「失敗しても大丈夫」というくらいの大らかなスタンスで、できたことをほめてあげましょう。そうすることで、のびのびと思うままに想像力豊かに調査を進めていけるでしょう。

興味深く話を聞く

調べ学習の様子を保護者が把握しづらいこともあるかもしれません。タブレットなどで取り組んでいる場合は、セキュリティーの関係等で見られないこともあるでしょう。お子さまが恥ずかしがって見せてくれないこともあるかもしれません。しかし、もしお子さまが「こんなことやっててさ」と話をしてきたら、興味深く話を聞いてあげてください。それ自体が心強いサポートとなるはずです。

たとえば「今、お米の種類について調べてるんだけどさ」といった話が出てきたとすれば「どんなふうに調べてるの?」と問いかけたり、「へ〜、そんなにも種類があるんだ。知らなかった」と関心を示したりしてあげられるとよいですね。「教える」「フィードバックする」という意識ではなく、「子どもに質問する」「教えてもらう」というスタンスで接することで、お子さまの意欲もUPするでしょう。

情報リテラシーや丸写しNGを伝える

保護者のサポートの基本原則は「聞かれたことにのみ答える」とお伝えしましたが、情報リテラシーや丸写しNGといった倫理面を伝えることは例外です。まだまだ情報の取り扱いがわからない子どもだからこそ、信憑(しんぴょう)性の薄い情報を信じたり、情報を吟味しないままコピペしてしまったりすることもあるでしょう。原則を伝えるだけでなく、お子さまのアウトプットをもとに具体的にアドバイスすることで、体験的に情報リテラシーを高めていってあげてください。

まとめ & 実践 TIPS

「調べ学習」は、お子さまにとってまだまだ慣れないものであるため、戸惑ってしまうこともあるかもしれません。しかし、自分の興味・関心に基づいてアプローチし、わかったことをまとめるという一連のプロセスは、学ぶ喜びや楽しさを感じられるものとなるはずです。多様な社会において生きるスキルも身に付くでしょう。お子さまが困りがちな部分を適切にサポートし、主体的な学びを深めていってあげてください。情報リテラシーへのフォローも忘れないようにしたいですね。

プロフィール


庄子寛之

公立小学校の教員を20年近く務めた後現職。
臨床心理学科を修了し、人をやる気にさせる声かけや環境づくりを専門とする。
全国各地で研修を行い、研修回数は400回を超え、受講者も10,000人以上となる。

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