2026.10.05
PISAとは? 日本の順位や調査のポイントを解説
世界の15歳はどんな学力を身に付けている? 日本の15歳は世界と比べてどんな強み・弱みがあるの?——そんなことがわかる国際調査「PISA2025」の結果が公表されました。世界が注目する「PISA」とはどのような調査なのでしょうか。
この記事のポイント
注目の国際学力調査「PISA(ピザ)」とは?
「PISA」とは、国際機関であるOECD(経済協力開発機構)が行う国際的な学力調査です。Programme for International Student Assessmentの略称で、日本語の正式名は「OECD生徒の学習到達度調査」。2000年から、おおむね3年に1回のペースで実施されており(*1)、大抵の人は「ピザ」と言います。
調査の目的は、義務教育を終える15歳までに学んだ知識や技能を、実生活でどの程度活用できるかを測ること。単に覚えた知識を回答するだけでは解きにくい問題が出題されます。また、調査の結果を国別に比較することで、各国がよりよい教育をつくっていくための参考資料とすることも目的としています。実際に、日本の学校教育の指針を示す学習指導要領などにもPISAの知見が活用されています。
日本では2025年に高校1年生だった、現高2生が調査の対象となりました。全国から国際規定に則って選ばれた183校、6,500人の生徒が、合計4時間弱の試験に臨みました。調査の目的はあくまでも国単位での教育の質改善なので、受験者一人ひとりの成績を評価するものではありません。
*1 PISA2025の後は、実施サイクルが3年ごとから4年ごとに変わる予定です。
調査方法は? ~3つの分野+革新分野をコンピュータで回答~
PISAは、問題に対して答えを求めるテスト形式の調査と、アンケート形式で質問に答える質問調査の2つから成り立っています。
テスト形式の調査は、「科学コンピテンシー(*2)」「読解リテラシー 」「数学的リテラシー」という3分野。毎回、3分野とも調査しますが、各回ごとに3つのうち1つの分野を重点的に調査することになっています。2025年は科学的コンピテンシーが中心分野となりました。
さらに今回は、3つの分野に加えてオプションで実施される教科横断的な分野(「革新的分野」)にも日本は参加。「ラーニング・イン・デジタルワールド(LDW)」という分野で、インタラクティブな問題を通して、デジタル社会において自律的に学習できる能力が問われました(*3)。
出典:OECD「PISA test」
一方の質問調査は、テストを受けた生徒とその学校(長)を対象に行われ、学習に関する意識や態度、家庭や学校での学習環境、ICTの利用状況などが問われます。テストのスコアと合わせて分析することで、参加国の教育の強み・弱みを、より詳しく知ることができます。
これらが、紙とペンを使う方式ではなく、コンピュータを活用した「CBT」という方式で行われるのもPISAの特徴です。2015年度から段階的に、受検者の解答結果に応じて出題内容を変える「多段階適応型テスト(MSAT)」が導入されており、スコアを過去と比較する際などに高い精度が得られるようになりました。
*2 PISA2022までは「科学的リテラシー」.
*3 日本は参加しませんでしたが、PISA2025では外国語(英語)スキルを測定するオプション調査も設定されました。
日本の結果は? ~15歳の学力は世界トップクラス~
気になる日本の結果ですが、2025年調査では、91か国・地域中で、科学コンピテンシーが5位、読解力が4位、数学的リテラシーが5位。OECD加盟国内で見ると3分野とも1位となり、国際的に見ても高い水準です*4。2022年以前も、多少の上下はありつつも、日本の15歳の学力はトップクラスを維持してきました。
出典:国⽴教育政策研究所「PISA2025のポイント」
また、社会経済的地位による成績の差が、国際水準に比べて小さいことも日本の教育の強みです。以下は、社会経済的地位の上位25%と下位25%の科学コンピテンシーの得点差を国別に示したものです。日本は全体として高いスコア、かつ、得点差が小さいことが分かります(日本の得点差は71点、OECD平均が85点差)。OECDの報告書も「日本の教育システムは優れた成果を挙げつつ、包摂性と公平性においても高い成果を挙げている」と述べています。
出典:OECD「PISA 2025 Results (Volume.1)」より算出
そして、今回の結果からは、日本の子どもたちがデジタルツールをうまくコントロールしながら学習できていることも示されました。学校におけるデジタルツールの使用時間は、2022年調査の2.1時間から2.3時間に微増したものの、「デジタル使用で注意散漫になる」生徒は、国際水準より大幅に低い6.6%。さらに、私的なSNS利用時間もOECD平均2.8時間に対し、2.3時間にとどまりました。
出典:OECD「PISA 2025 Database」
日本の課題は? ~学習意欲や自律して学ぶ姿勢に課題~
一方で課題も見えています。PISA2025では、従来のテストの点数(習熟度)に加えて、学習へのエンゲージメント(関与度)を重要な観点として評価していますが、日本はこの点で課題が見られました。
まず指摘されるのが、学習に対する興味や好奇心の低さです。「科学について学ぶこと興味がある」「様々なことに対する好奇心が強い」「物事の仕組みを知ることが好きである」といった質問の肯定率は、国際平均を大きく下回っています。日常生活の中でのちょっとした発見や気づきを、ぜひ家庭の中でも大切にしたいものです。
出典:国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」
また、学習を自律的にコントロールしたり、方法を工夫する姿勢の弱さも浮き彫りになりました。「勉強への取り組み方を計画する」「勉強への取り組み方がうまくいかないと気づいたら、取り組み方を変更する」「自分がすべて理解したかを確認するため学習した内容について自問自答する」といった質問の肯定率は総じて低くなっています。
出典:国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」
今後、AIをはじめとしたデジタルツールの活用が学校でもさらに進む見通しです。「ツールに頼って学ぶ」のではなく「ツールを使って学ぶ」姿勢を育む上でも、学び方を自分で考える習慣づけが大切になるでしょう。
まとめ:PISAの結果は国別ランキング以外にも注目して
PISAの結果は、国別の順位を見て一喜一憂するためのものではありません。大切なのは、日本の子どもたちがどのような力を身に付けているのか、また、どのような課題があるのかを把握し、その結果を教育政策の改善に生かしていくことです。
保護者にとっても、日本の子どもたちの強みと課題は、わが子の日々の学びを考えるヒントになります。正解を出せたことだけでなく、「なぜだろう」と考えたこと、うまくいかないときにやり方を変えてみたこと、学校で習ったことを家庭で話してくれたことにも目を向けたいものです。PISAの結果は、学びを支える社会と家庭の在り方を考えるのにも、きっと生かせるはずです。
※掲載されている内容は2026年9月末時点の情報です。
出典
OECD「PISA 2025 Results (Volume.1)」
https://www.oecd.org/en/publications/pisa-2025-results-volume-i_73451bc5-en/full-report.html
国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pisa/index.html#PISA2025
監修者
小村俊平こむらしゅんぺい
ベネッセ教育総合研究所 理事長 教育イノベーションセンター長
加藤健太郎かとうけんたろう
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員
これまでにさまざまな官庁や自治体の委員、大学・高専・高校の委員やアドバイザーを務めており、複数の学校設立に携わるなど初等中等教育から高等教育まで幅広く活動する。また、OECDシュライヒャー教育局長の書籍翻訳等の経験があり、国際的な教育動向にも詳しい。
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