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2022.12.20

調査書(内申書)とは? なぜ大学受験に必要? 内容やもらい方を解説

「調査書」とは、受験生がどのような高校生活を過ごしたのかを記した書類のことです。学業成績を点数化した内申点(評定)が記載されていることから、内申書ともいわれます。学校の先生が作成し、ほかの出願書類と同時に志望校へ提出します。中学入試から大学入試まで幅広く活用されていますが、たとえば中学入試では調査書の提出を求めない学校も多いなど、活用の度合いが学校段階によって異なります。大学入試では、原則としてすべての大学への提出が義務づけられています。そこで今回は、高校が作成し大学入試で使用される調査書について説明します。

調査書に書かれる内容は9項目

調査書には、生徒一人ひとりのさまざまな情報を記載します。内申点や表彰歴だけではなく、次の内容を書くことが決められています。

  1. 氏名、生年月日、住所、在学中の高校などの個人情報
  2. 各教科・科目の学習の記録(各教科・科目で習得することができた単位数と評定)
  3. 各教科の学習成績の状況(各教科における成績を5点満点で評価したもの)
  4. 学習成績概評(A〜Eの5段階による本人の評価と学年全体の分布)
  5. 総合的な探究の時間の内容・評価(点数化せず、文章で記載)
  6. 特別活動の記録(委員会の役員を務めた記録など)
  7. 指導上参考となる諸事項(資格・検定、各種大会の成績、部活動やボランティア活動など)
  8. 備考
  9. 出欠の記録

大学はこれらの情報を合否材料の一つとしますが、調査書の内容をどれくらい重視するかは大学の方針や選抜方式によって異なります。たとえば、学校推薦型選抜(いわゆる推薦入試)では、一定以上の評定値を出願条件としていることから、調査書は重視要素の一つといえます。

学業成績以外の様子も幅広く記載される

現行の調査書で、見た目のボリュームが最も多く割かれているのは「各教科・科目の学習の記録」と「指導上参考となる諸事項」の2つです。「各教科・科目の学習の記録」部分については、すべての高校で作成と保管が義務化されている「指導要録」というものの内容を転記すればよいのですが、「指導上参考となる諸事項」については、「学習における特徴」「行動の特徴、特技等」など6つの項目を学年ごとに3年分、文章として記す必要があります。作成する先生の負荷が大きい反面、学業成績以外で輝いている生徒をきめ細かく評価できるメリットがあります。一部の高校では、学期や学年の節目、大きな行事のあとなどのタイミングで生徒が振り返りを行い、調査書にある6つの観点で文章化しているケースも見られます。自らの学びを振り返って言語化すること(ポートフォリオ化)は教育的にも効果があるとされており、このような流れは今後強まるかもしれません。

現在の高校1年生の受験タイミングで書式が変更予定

これらの内容を、2023年度入試(現高校3年生)の時点では、枚数の制限なく記載することが可能になっています。しかし、2025年度入試(現高校1年生)以降は、A4の裏表1枚にまとめる書式にスリム化される予定です。実は、2020年度入試までは裏表1枚という制限がありました。数値化された評定値だけでなく、生徒の様子をより幅広く丁寧に把握して入試選抜の材料とすべき、という大学入試改革の趣旨を踏まえ、2年前から制限をなくしたのです。しかし、書き手である高校の先生は大変です。担任はクラスの生徒一人ひとりについて、1、2年生時の様子を詳しく調べ直したり、選考時に不利にならないようにたくさん書いたりするなど、働き方改革の流れとも逆行する弊害が見られるようになりました。そういったことも踏まえ、次の変更では、生徒を多面的に評価するという趣旨はそのままに、記入量を抑えた書式に変わるのです。

電子化が予定されているが、詳細は未定

調査書は、書式のほかにもう一つ変更が予定されていることがあります。それは電子化です。現在、調査書は紙で作成して授受されていますが、電子化することで志願者と大学の双方にとって効率化、省力化が進みます。そのため、国の検討会などでも電子化を進めること自体は合意されているものの、当初の予定どおりに進んでいません。必要なシステムの整備や政府全体のデジタル化の流れとの兼ね合いなどから、今後のスケジュールは未定(2022年12月時点)です。

また、入学時点から最新の学習指導要領で学ぶ現高校1年生以降が対象となる大学入試は、調査書の書式変更に限らず、大学入学共通テストの入試科目が変わるなど、さまざまな点での変更が予定されています。該当する学年のご家庭では、常に最新の入試情報をチェックしていただきたいと思います。

調査書の活用度合いは志望校によって異なる。情報収集をしっかりと!

大学入試で調査書に重きを置いている大学はいまのところ少数で、全体的には、参考程度にとどめている場合が圧倒的に多いです。しかし一部では、調査書の内容を得点化して一般選抜の得点に加算するなど、積極的に活用している大学もあります。志望校を検討する際は、その大学の入試方式とせて、調査書をどの程度活用しているのかも確認するとよいでしょう。

高校受験を控えているご家庭の場合は、高校選択の際に大学受験を踏まえた視点を加えてもよいかもしれません。進学先の高校が、定期テストの点数と、テスト以外の場面(思考力を働かせる学習活動など)をどの程度の比率で内申点とするかは、各校で異なるからです。内申点の算出方法(重みづけ)は、その高校の教育方針や指導の重点を表しているともいえます。どこまで詳細に公開しているかは学校により異なりますが、学校のWebサイトを見たりオープンスクールに参加したりして、志望する学校の教育方針や特徴をよくつかんでおくようにしましょう。

まとめ

生徒の多様な力を評価するために、今後も変更が予想される

今は大学入試が変わる過渡期にあります。これまでは定期テストでよい点をとってさえいれば、評定「5」をもらえて調査書で有利になり、入試に役立つ、という考え方が一般的でした。それが、最新の学習指導要領の趣旨も踏まえて、学習内容を主体的に深く考える力や意欲・態度など、テストの点数以外の要素も含めて評定が決まる動きが加速していきます。この傾向は中学の調査書も高校の調査書も同じです。教わったことを筆記テストではき出す力だけでは社会で通用しないことは、保護者の方々も感じていると思います。調査書の中身も、そうした実状に合わせた内容に変わりつつあるのです。

取材・執筆:神田有希子

※掲載されている内容は2022年12月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

谷本 祐一郎たにもと ゆういちろう


ベネッセコーポレーション学校カンパニー
教育情報センター長

1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。
九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。2021年度より島根県総合教育審議会委員を担当。

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