クラス替えはどう決める?保護者の要望は通る?元小学校教師に聞いた

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学年が変わると行われることがあるクラス替え。誰と一緒になるか、誰と別のクラスになるか、お子さまにとっては学年最初の一大イベントです。

「どうやってクラスを決めてるの?」
「どうしてクラス替えをするの?」

元小学校教師門川良平さんに、他の先生方にもヒアリングいただいた上で公立小学校でのクラス替えの決め方についてお答えいただきました。

この記事のポイント

クラス替えをする理由は? いつ決めるの?

【Q】クラス替えをする理由は何ですか?

(A)新しい人間関係の中で子どもたちの伸ばせるところを見つけていくためです。

クラス替えにはいろいろなねらいがありますが、主に人間関係の固定化によって子どもたちの成長が妨げられることを防ぐためです。人間関係が固定されると居心地の良さを生む反面、もっと伸ばせる部分があるのに伸びにくくなってしまうこともあります。たとえば、お子さまのクラス内でのキャラクターが決まってしまうなどです。クラス内で苦しい人間関係になっている場合には、クラス替えはそれをリセットするタイミングにもなります。

また、社会性として将来世の中に出ていく時、新しい人たちと関わっていく力が必要です。クラス替えは、新しく関係性をつくるという経験を積む機会でもあります。

【Q】いつ頃、次のクラスを決めていますか?

(A)2~3月頃に検討することが多いです。

2~3月は学年末の通知表をつける時期でもありますが、同じ時期に新しいクラス編成を検討することが多いです。

クラス替えの「あのウワサ」は本当?

【Q】「クラス替えはくじ引きで決める」というのは本当ですか?

(A)「くじ引きでクラス替えをしている」という例は聞いたことがありません。

すべての学校の事例を知るわけでは無いので、もしかしたら、くじ引きによるクラス替えもあるかもしれません。しかし、複数人の現役教員の方にヒアリングした情報を踏まえても、そうしたやり方を実際に聞いたことはありません。

【Q】双子など、同じ学年にきょうだいがいる場合はクラスを分けますか?

(A)基本的に分けます。

同じ学年にきょうだいがいる場合、一緒のクラスにする理由があまり考えられません。単学級(一学年に1クラスしかない学校)の場合は除きますが。きょうだい同士が比較されるのは、その子たちにとって良いことではありません。それぞれが、それぞれの個性を認められる場所を用意するのが基本です。もしかしたら一緒のクラスになるケースもあるかもしれませんが、相当稀なケースだと思います。

何を優先してクラスを決めているの?

【Q】クラス替えの決め方には、どのようなパターンがありますか?

(A)例えばスポーツの得意な子、リーダーシップのある子など、長所を振り分け、「学級間の格差がなく、いろいろな個性が集まっているクラス」を目指します。

たとえばクラスにスポーツができる子ばかりを集めてしまうと、クラス全体の個性に偏りが出て運動会などでバランスが取れません。クラスの中で数人しか選ばれないリレー選手のような役割に、スポーツが得意であるにもかかわらず選ばれない子も増えてしまいます。クラスを分けることで、スポーツが得意な多くの子たちに、より多く活躍の場を与えられます。

リーダーシップのある子をそれぞれのクラスに分けることもあります。

つまり、より多くの子に自分の良さを発揮する機会を作れるよう「長所を分散させる」というのが基本です。その他様々な要因を複合的に踏まえて決定するため、一概に言えるわけではありませんが、子どもたち全員が活躍できるクラスになることを最も重視して検討されています。

【Q】成績でクラスを決める場合、どうやって決めていきますか?

(A)いろいろなやり方がありますが、成績はあくまで1つの要素に過ぎません。

「成績でいったん振り分けた後で調整をする」というのは1つのやり方としてありますが、他にもいろいろなやり方があります。「リーダーシップのある子をまず振り分けてから…」などのやり方です。成績はあくまで1つの観点であり、子どもたちが持つさまざまな個性の中の1つの項目という位置付けですので、成績中心のクラス替えがスタンダードだとは思いません。

最終的にはクラス間による学力の格差がないように調整は行いますが、あくまで成績は1つの要素に過ぎません。

【Q】児童・生徒同士の人間関係がクラス替えに影響するのは、どんな時?

(A)これまでに、いじめなどのトラブルが発生している場合などです。

いじめや、いじめが考えられる場合は配慮します。高学年になるほど1年生の時からの申し送りがたくさん残っていますので、いろいろなものを判断材料にしています。

「仲が良すぎるとバラバラにされる」という話を聞くこともありますが、わざわざ意図的に仲良しな子たちを狙って別のクラスにすることはないと思います。ただ、他の要因で分けていった結果として離れることはあるかもしれません。

【Q】クラス替えで成績や人間関係以外に配慮していることはありますか?

(A)特別な配慮が必要な場合など、その子の個性を考慮しています。

特別な配慮が必要だという点も1つの個性として考慮します。配慮が必要な子に対して適切な対応をとることを目的として、クラス編成を検討します。

【Q】1年生のクラスは、どうやって決めていますか?

(A)1年生のクラスは、幼稚園や保育園からの情報、就学時健診の際の様子などを元に決めます。

判断材料は、1年生の場合、幼稚園や保育園から上がってくる情報など。入学前の就学時健診の際に子どもたちが来て健康診断や聞き取りを行いますが、その時の様子を判断材料にいかす学校もあると聞きます。特別な配慮が必要な子については申し送りもありますので、教員がきちんと対応できるように一つのクラスに固まらないように考慮することもあるようです。

限られた情報の中ででも、できる限り子ども達にとっても良いクラス編成になるようバランスがとれるようにしています。

【Q】クラス替えで最も重視していることは?

(A)バランスのとれたクラスにすることです。

さまざまな要素を考慮しますが、最も重要なのは、「学級間格差がなく、全員の個性が伸びやすい、長所の入り交じったクラスにすること」です。

クラス替えに対するご家庭からの要望

【Q】児童・生徒や保護者からクラス替えについて要望を出してもいいですか?

(A)トラブルにつながる可能性がある場合は、クラス替えに限らず、いつでもご相談された方が良いと思います。

表面から見えにくい心理的に奥のほうで起こっているトラブルは、教員も把握できていないことがあります。後にトラブルになったり子どもたちが苦しい思いをしたりする可能性がある場合は、教員に相談されることをお勧めします。

ご相談は電話でも、直接会うのでも大丈夫です。ご相談された内容を含めて、総合的に検討するので最終判断は学校側にはなりますが、単純にクラスを分けるという以外の方法での対処も視野に入ってくるでしょう。こうしたご相談は、クラス替え以外のタイミングでも遠慮なくされた方が良いと思います。

先生から見た「クラス替え後」の子どもたち

【Q】クラス替えのあと、新しいクラスのメンバーを見た児童・生徒の様子で印象に残っていることは?

クラス替えの後は、どの学校の先生に聞いても、いつも子どもたちは大騒ぎになるそうです。とても落ち込む子もいれば、すごくニコニコしている子もいます。4~5月は休み時間の廊下の人口密度がとても高くなるというのが教員の中での「あるある」です。それまでの人間関係が強い時期なので、前のクラスの子に会っているんですね。しかし、GWが開ける頃には新しい関係ができて、落ち込んでいた子も前向きになっているなど、落ち着いてきます。

子どもたちには新しい人間関係を作っていく力があるので、4~5月はその力を信じて見守ってあげる時期です。クラス替えを重ねることで別のクラスの知り合いも多くなり、世界が広がっていくでしょう。

お話した情報は、多数の先生方にヒアリングした上でお答えしました。日本国内には2万近く小学校があり、もちろんすべての事例を把握しているわけではありません。ただ、少なくとも私がヒアリングした先生方は皆さん、子ども達のより良い成長機会のため、真剣に検討するとおっしゃっていました。クラス替えには一喜一憂がつきものです。しかし、その瞬間はがっかりしたことが後々、良いきっかけになることもあります。ぜひ保護者の方には長い目で見守っていただければと思います。

新しいクラスになじめない子にはどう対応する?

新しいクラスに仲良しの子がいなかったり、新しい先生で緊張してしまったりしているお子さまには、「話しかけなさい」などと責めたり過敏に反応したりするのはNG。
急いで解決策を提示するよりも先に、「そっか、それは不安だよね」など、まずは共感を示すようにしましょう。そして、子どもの様子を見ながら「朝、挨拶をしてみよう」など小さいことから少しずつアドバイスをしてみてはいかがでしょうか。また、実際に挨拶ができたり、新しい友達ができた際にはぜひ褒めて勇気づけるようにできるといいですね。

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まとめ & 実践 TIPS

門川さんによれば、学校でのクラス替えは、子どもたちの成長や長所を発揮しやすい環境をつくるためにバランスを考えながら決められているとのこと。まずは「新しいクラスはどう?」など、お子さまの気持ちを穏やかに聞いてみてはいかがでしょうか。

新しい学年になる4月は、クラスメイトだけでなく求められることや学習内容等も含め、さまざまなことが変化する時期です。子どもたちは、時間をかけながら新しい環境に慣れていくことが多いもの。ご家庭でも、急かさずゆっくり見守ってあげてください。

監修プロフィール

門川良平

元小学校教員・学習ボードゲームデザイナー。民間企業での教材開発、公立小学校での教員、学習事業のプロデューサーを経て、すなばコーポレーション株式会社を設立。オリジナル開発した小学生からのSDGsゲームや様々な教育コンテンツを通じて、各地の企業・自治体との連携を進める。代表作「子どもと大人のSDGs学習ゲーム Get The Point」「数を楽しむカードゲーム ミーデン 」

プロフィール



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