「学校に行きたくない」と言われたら?行き渋りの理由と保護者ができるサポート【プロが解説】

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昨日まで普通に登校していたお子さまが、「学校に行きたくない」と言い出したら?
保護者のかたとしては、「どうして急に……?」と不安を感じるのではないでしょうか。
お子さまが「登校したくない」と感じる原因は、実にさまざまです。
この記事では、中学校の教師を11年にわたり経験されたのち、現在はフリースクールの運営に携わっている信田雄一郎さんに、「行き渋りの理由や原因で多いもの」や「保護者のかたができるサポート」について解説していただきました。
保護者のかたやお子さまの気持ちが少しでもラクになるよう、参考にしていただけたらと思います。

この記事のポイント

学校に行きたくない理由はさまざま

「学校に行きたくない」と一口にいっても、理由はさまざまです。

不登校に関する調査でも、理由は「友人関係」や「無気力・不安」「学業の不振」「先生と合わない」などが挙がっています。

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また、近年の不登校の背景として、スマートフォンの登場によって子どもたちの自宅での過ごし方が変化していることが挙げられます。
学校に行かなくても、動画やオンラインゲームなど1人でそれなりに楽しく過ごせるコンテンツが揃っているのです。
だからこそ、ちょっとした行き渋りが長期の不登校に発展する可能性も。

ここからは特に多くみられる「行き渋りの原因」をご紹介しますが、いくつかの要因が絡み合っているケースも考えられます。
お子さまの表情や口調から「何が・どのくらいイヤなのか」を推しはかり、その後の対応を検討していきましょう。

「学校に行きたくない」理由1:生活リズムの乱れ

学校の長期休み中などは起床・就寝時間が不規則になりやすく、生活リズムが乱れがち
そのため、休みが終わった当初に「朝起きられない」「なんとなくだるい」と訴えるお子さまは、学齢に限らずたくさんいます。
こうした場合は、生活リズムを整えていけば、体内時計がもとに戻り、行き渋りは減っていくでしょう。
ただし思春期のお子さまの場合は、生活リズムが乱れる一因としてOD(Orthostatic Dysregulation:起立性調節障害)などの病気が隠れている場合も。
「毎日夜更かししているから」などと決めつけず、朝どうしても起きられずつらそうな場合などは、医療機関に相談するのも1つです。

※起立性調節障害について詳しく知りたいかたはこちら
起立性調節障害とは?症状や原因、保護者ができることを医師が解説

「学校に行きたくない」理由2:保護者のかたとの関わり

小学生のお子さまの中には、保護者のかたから離れることに強い不安や恐怖を感じ、登校を渋るお子さまが多くみられます。
小学校低学年のお子さまによく見られる事例ですが、近年は中・高学年でもこのタイプが増えています。

「学校に行きたくない」理由3:勉強ができない・勉強がつまらない

「学校の勉強についていけない」「勉強がつまらない」など学習に関する不調が行き渋りの原因になるケースは、特に中学生や高校生によくあります。
中学以降は定期テストの順位が公表されるなど、自分の学力が「見える化」される機会が増えます。
そのなかで思うような結果が出せない場合は、「勉強がつまらない」と考えるお子さまも出てくるでしょう。
また高校には同じような学力の生徒が集まるため、「中学では成績上位だったのに、定期テスト順位が300人中280位」といったことも起こり、学校への意欲が下がる場合もあります。

「学校に行きたくない」理由4:先生との折り合いが悪い

小学生の場合は、「担任の先生と合わない」という理由から行き渋りを始めるケースが非常に多く見られます。
中学や高校と異なり、小学校では担任の先生が1日にわたってクラスの授業や学級活動を担当します。
子どもが、先生に対して「こわい」などのネガティブな感情を抱いてしまうと、「学校に行きたくない」という思いに発展しやすいようです。

「学校に行きたくない」理由5:人間関係のトラブル・いじめ

同級生や先輩とのトラブルが原因で不登校になるケースは、昔から見られます。
ただし近年は、SNSやチャットアプリの登場によって事情が変わってきました。
「あの子はクラスのカーストで下のほう」「なんとなく周りから浮いている」などいじめにつながりやすい人間関係が、目に見える形で認識されやすくなってしまったのです。
そのため、「チャットアプリのグループから外されたから友達に会いたくない」といった理由で行き渋りを始める中学生・高校生も多くいます。

「学校に行きたくない」理由6:無気力・不安など

はっきりした理由がわからないこともよくあります。
無気力や不安の背後には、人間関係のトラブルや勉強への不安、思春期特有の体調変化など複数の原因が絡み合っている場合がありますが、それらをうまく認識できない、言葉にできない状態とも言えます。
そのため、語彙(ごい)が少ない低学年のお子さまほど「なんとなくイヤだ」というケースが増えます。

保護者のかたの体験談

保護者のかたから寄せられた体験談をご紹介します。以下のような理由で、学校に行きたくないお子さまがいます。

「クラスの雰囲気が悪く、『意地悪な子が何人もいて疲れる』と子どもから言われました」
(中学3年生の保護者)

「学校が大好き、というわけではないようで、朝になると『お腹が痛い』と訴えてきます。でも、登校すればそれなりに楽しく過ごしているようで……。どう対応すればよいか毎日悩みます」
(小学1年生の保護者)

「コロナ禍で行動制限があった時期、クラスでゲーム対戦が流行しました。でも、我が家はゲームを持たせない方針だったので、子どもは友達と共通の話題がなく、いつの間にか孤立。毎日泣いていました」
(中学1年生の保護者)

「中学入学から間もない時期、午前中に泣きながら帰宅。定期テストや部活、委員会などで急に忙しくなり、心が限界に達したようでした」
(中学1年生の保護者)

※出典:お子さまは「学校に行きたくない」と言うことがありますか?
調査地域:全国
調査対象:小学生・中学生・高校生のお子さまをお持ちの保護者のかた
調査期間:2023年1月30日~2023年2月24日
調査手法:WEBアンケートによるベネッセ調べ
有効回答数:1,537名

「学校に行きたくない」を見逃さない 不調のサインは

お子さまが「学校に行きたくない」と感じても、保護者のかたに伝えられない場合もあります。
それでも、お子さまの様子を注意深く見守れば、不登校につながる兆候を見つけやすくなります。ここでは、お子さまが「学校に行きたくない」と感じている時に示しがちなサインをいくつかご紹介します。
ここに挙げたこと以外でも、「目を合わせてくれなくなった」「自室から出てこない」「部活を辞めたいと言い出した」などの変化が起きる場合もあります。

頭やお腹が痛くなる

学校に行こうとすると頭痛や腹痛を感じたり、じんましんが出たりするお子さまは多いです。
また、どうしてお腹が痛いのか原因がわからず、あとから気持ちが追いついてきて、学校に行きたくないからなんだ、と気付くこともあります。

寝つきが悪くなる・朝起きられない

寝つきが悪そう朝なかなか起きてこない、といった状態が続くようなら、お子さまが何らかの悩みを抱えているのかもしれません。
ただ、前述のOD(起立性調節障害)によって睡眠リズムが乱れている可能性も。
お子さまの様子を見ながら、「どんなふうにだるいの?」など詳しく話を聞いてあげることも大切です。

疲れているように見える・イライラしている

「すごく疲れているようにみえる」「最近イライラしているみたい」などは、学校に行きたくないと感じている初期サインかもしれません。
注意深く見守っていれば、微妙な変化があった時に必ず気付けるはずです。

口数が急に減る、増える

学校でいじめや友達とのトラブルがあった時、お子さまは無意識に「学校のことは考えたくない」と感じるため、ご家庭では口数が減るかもしれません。
逆に、小学生のお子さまの中には、学校で受けたストレスを紛らわそうと、保護者のかたに甘えたり、よくしゃべるようになったりすることもあります。

子どもの「学校に行きたくない」と向き合うサポート

お子さまが「学校はイヤだ」と言い出したり、実際にしばらく休んだりしている時、保護者のかたは「何かあったんじゃないか」「このままで大丈夫?」と、心配になってしまうことでしょう。
しかし、保護者のかただからこそできることもあります。
できることから少しずつ、試してみてください。

ゆっくり休ませる

「学校に行きたくない」と感じる時は、心身が元気をなくしているもの。
まずは数日間学校を休ませて、次の行動を起こすための体力や気力をチャージさせてあげましょう。

話をしっかり聞いてあげる

お子さまは、口には出さなくても「自分の気持ちを誰かにわかってほしい」と感じています。
特に、一番近い存在である保護者のかたに対しては無意識のうちに期待を寄せているのではないでしょうか。
学校に行きたくない理由などを無理に聞き出すのはよくありませんが、話し始めた時はじっくり聞いてあげてください。

生活リズムを整えるサポートをする

長期休み明けなどでお子さまの生活リズムが乱れている時は、保護者のかたのサポートが大いに役立ちます。
食事の時間を固定したり、決まった時間に起床・就寝できるよう声をかけたりしてあげましょう。
ただし、OD(起立性調節障害)の可能性もあるので、お子さまが「朝起きた時にめまいがする」などの症状を訴えるようなら、医療機関で受診したほうがよいでしょう。

ゲームや動画についてルールを話し合う

学校を休んでいる期間、基本的には規則正しい生活ができるようサポートしてあげることが大切です。
自宅で過ごす時間が多いと、動画やゲームにハマって昼夜逆転の生活になるお子さまも多いので、「ゲームは1日何時間までにする?」などと話し合ってルールを決めるとよいでしょう。
ただ、お子さまがストレスを感じているようなら、1週間など時間を区切って飽きるまで好きなことをさせてあげるのもよいと思います。

学習のサポートをする

お子さまが勉強に対して不安を感じているようなら、「どの教科・単元が心配なのか」を聞いてあげるとよいでしょう。
お子さまが小学生なら、一緒にスケジュールを立てて学習のサポートをしてあげるのもおすすめです。

保護者のかたがやってはいけないこと・NGな声かけは

「学校に行きたくない」と感じているお子さまと接するにあたっては、基本的には率直に話し合うことが大切です。
ただし、保護者としての本音をそのままぶつけると、お子さまが心を閉ざしてしまう場合もあります。
「できれば避けたほうがよいこと・NGな声かけ」を事前に知って、お子さまが心理的安全を感じられる雰囲気をつくっていきましょう。

「学校に行きなさい」

登校を強制すると、お子さまは心の行き場をなくしてしまいます。
まずは「行きたくない」気持ちを受け止めて、「少し休んでみる?」などと声をかけてあげてください。
2~3週間動きがないと保護者のかたもつらいと思いますが、そのときは担任の先生や青少年相談センターなど専門家に頼るなどの方法を試してほしいと思います。

「どうして学校に行けないの?」

学校に行きたくない原因がわからないと、保護者のかたとしては今後の対応策が立てられず困りますよね。
ただ、「どうして行きたくないの?」と理由を聞こうとすることで、お子さまは責められていると感じてしまうこともあります。
理由をうまく言葉にできない場合もあるので、「タイミングが来れば話してくれるだろう」と信じて、しばらくそっとしてあげるのはいかがでしょうか。

「勉強は大丈夫?」

学習の話を切り出すのも、しばらくは控えたほうがよいかもしれません。
中学生以上のお子さまなら、口には出さなくても勉強の遅れが気になっていると考えられるからです。
「何かやりたいことがあったらいつでも手伝うから言ってね」と声をかけておき、お子さまの意思に委ねてみてください。

保護者のかたが気持ちを少しでもラクにするために、してほしいこと

「子どもの気持ちに寄り添いたい」という気持ちが高まっている時ほど、「先が見えなくてつらい」と感じてしまうことも多いのではないでしょうか。
こんな時はスクールカウンセラーに相談したり、場合によっては心療内科で話を聞いてもらったりしてもよいと思います。
「自分でなんとかしなければ」と思わずに、お子さまを青少年相談センターなどの施設に数時間任せ、少しでもご自身の時間をもつことを大切にしていただきたいと思います。
保護者のかたの気持ちが整えば、お子さまにも安心感が芽生えるのではないでしょうか。

「学校に行きたくない」を相談できる窓口

お子さまから「学校に行きたくない」という思いを訴えられたら、まずは担任や学年主任の先生に相談してみてください。
それでも、解決が難しそうな時は学校の校長や副校長(教頭)、養護教諭など別の先生に話してみてもよいでしょう。
通っている学校に限らず、青少年相談センターや各自治体の適応指導教室、児童相談所など専門家の力を借りるのもおすすめです。
お子さまが精神的にひどく落ち込んでいる、ひどい不眠などが見られる、などの場合は心療内科への相談をすることも考えられます。

以下の厚生労働省のサイトなどで相談先を探すこともできますので、お子さまの様子に合わせて活用してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/index.html

どうしても学校に行けないときは

心身を休ませてもお子さまが「学校に行く気になれない」と訴えるなら、フリースクールや通信制高校を検討するのもひとつの方法だと思います。
ちょっとした環境の変化で、お子さまの気持ちや行動が変わることも珍しくはありません。

中学校で教員をしていたころ、2年生の時ほとんど登校できなかった女子生徒がいました。
しかし3年生からは「高校受験のため」と週2~3回通学するようになり、第2志望の高校に合格しました。
進学した高校は同じ中学の同級生がいない大規模校で、最初は前向きではなかったものの、入学時には気持ちを切り替え、新しい環境の中で彼女はのびのびと過ごすようになりました。そして、生徒会役員として活躍するほどに成長したのです。人はいつからでも変われる、成長できると思った出来事でした。

保護者のかたが「あなたは大丈夫だよ」と信じてあげることで、今はつらさを感じているお子さまも、力強く未来を作っていけるのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが学校に行かない時期が続くと、保護者のかたも不安や辛さを感じるでしょう。
しかし、「我が子の問題だから」とご家庭だけで解決しようとする必要はありません。
学校や専門家の力を借りたり、信頼できる友人・知人に相談したりしてみてください。
お子さまが前向きに歩んでいける方法を見つけられるよう願っています。

プロフィール



11年にわたり中学校で教員を務めたのち、現在は愛知県豊田市でフリースクール「Tao Haus」を運営。
Tao Hausホームページ
https://note.com/nobuta314/n/ne7c0c16aa4b8

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