教育用語解説|学校推薦型選抜(旧推薦入試) 教育用語解説|学校推薦型選抜(旧推薦入試)

2023.2.1

学校推薦型選抜(旧推薦入試)とは?仕組みやメリット、対策を専門家が解説

大学入試の選抜方式には、①一般選抜、②総合型選抜、③学校推薦型選抜、の3種類があります。以前は、それぞれ、一般入試、AO入試、推薦入試、と言われていましたが、2021年度入試(2年前の高校3年生の受験年)から現在の呼び方に変更されました。このうち学校推薦型選抜は、高校の推薦を受けることで出願できる方式で、「その大学でこんなことを学びたい」という意欲や入学後の目標が特に重視されます。総合型選抜と似ている部分はありますが、学校推薦型選抜ならではの特徴や注意点がありますので、それらを含めて説明します。

学校推薦型選抜とは

学校推薦型選抜は、高校時代の学業成績やスポーツ・文化活動などの推薦基準を満たしている生徒を、高校の学校長が推薦する形で出願できる入試方式です。保護者世代からある、いわゆる「推薦入試」はこれにあたることが多いでしょう。一般選抜は測れない多様な能力を持った生徒を獲得することが大学側の目的で、選考は書類審査や小論文、面接が中心ですが、一部の国公立大は大学入学共通テストや独自の学科試験を課すこともあります。学校推薦型選抜は、大きく分けて「指定校制」と「公募制」の2通りがあります。

「指定校制」と「公募制」の違いとは

指定校制は、大学が指定した高校からしか出願できません。出願枠は各高校に数名ずつしか割り振られず、人気の大学の場合は高校内で選考を行って推薦者を決めることになります。主に私立大が実施することが多く、大学がその高校を信頼して出願枠を設ける試験のため、高校内の選考さえ通ることができれば、入試での合格率はかなり高いと言えます。

もう一方の公募制は、大学の求める条件を満たしていればどの高校の生徒も出願できる制度で、多くの大学で行われています。全国の受験生がライバルになるため、指定校制に比べると合格の難度はやや高くなる傾向があります。学校の成績が一定の基準を超えていれば出願できる「公募制一般推薦」と、スポーツや文化活動で活躍したことをアピールできる「公募制特別推薦」の2種類あります。

出願条件は、一定の評定平均を超えることがほぼ必須

ほとんどの大学は出願条件として評定平均値(高校3年間すべての教科科目の5段階評価の合計の値を、すべての科目数で割った数値)を定めています。「評定平均値4.2以上」などと大学が指定した推薦基準をクリアしないと、学校長の推薦を得ることができず、出願できません。通常はすべての教科・科目の成績が対象となりますが、英語、国語など、志望する特定の学科に関連する特定の教科について指定される場合もあります。
また、指定校制推薦で高校の内部で校内選考が行われる場合、客観的に決められるように、評定平均や校内テストの順位などを参考に決められることが多いようです。

そのほかの合否を決める評価基準として、資格取得の有無や課外活動の経歴、大学入学共通テストの成績、独自の学科試験の成績、面接の結果などがあります。

スケジュールは、総合型選抜より遅く、一般選抜より早め

スケジュールは、総合型選抜より遅く、一般選抜より早め

学校推薦型選抜は出願が11月1日以降、合格発表が12月1日以降と決められています。細かい時期は大学によって異なるものの、大まかに言うと、総合型選抜よりやや遅く、一般選抜より早い時期に行われます。大学入学共通テストを選考に利用する大学では、合格発表が1~2月以降と遅くなります。また、指定校制は校内選考を経て出願することになりますので、校内選考のスケジュールは早めに高校の先生に確認しておきましょう。

学校推薦型選抜で不合格だった場合は一般選抜も受けることになりますが、一般選抜の試験日までは通常1か月程度しかありません。出願の際は学校推薦型選抜一本に絞るのは避け、併願大をしっかり考えたうえで受験スケジュールを立てることが肝心です。また、総合型選抜はいくつも掛け持ちして出願することは原則的にできず、特に「専願」の方式では入学を辞退できないため、早めに進学先を決めたいといった安易な気持ちでチャレンジせずに、よく考えて受験先を決めるようにしましょう。

学校推薦型選抜はこんな人に向いている!

その大学・学科でこれを学びたい!という明確な志望動機をもっている人には学校推薦型選抜は適していますし、選考時もその点がしっかりチェックされます。加えて、部活動やボランティア活動、取得した資格なども重要な評価対象になることが多いので、高校3年間全体の努力の成果を評価してほしい人には向いているでしょう。

明確な志望動機に次いで大学が求めることは、基礎学力です。出願条件に一定以上の評定平均が求められるのは、学力は大切ですよ、という大学側の意思表示でもあります。ただし、評定平均が高いほど選考に有利というわけではなく、出願条件となる基準値を満たしていれば、評定平均の高低だけで差をつけることは少ないと言われています。

早い段階からの準備と情報収集が肝心

注意したいのは、学校推薦型選抜は、受験学年だけでなく高校での3年間のがんばりが評価対象となる点です。評定平均は3年間の成績が算出対象になりますし、面接では、3年間の学校生活で自分が何に費やし、どのように充実して過ごしたかを語れることが重視されます。進路の選択肢を一つでも多く持っておくためにも、3年生になってから慌てないように、1年次から学校生活をしっかりと送ることが大切です。また、オープンキャンパスや大学案内パンフレットなどを活用して、自分の志望がその大学と合致するかをよく吟味して出願を考えるようにしましょう。

取材・執筆:神田有希子

※掲載されている内容は2023年2月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

谷本 祐一郎たにもと ゆういちろう


ベネッセコーポレーション学校カンパニー
教育情報センター長

1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。
九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。2021年度より島根県総合教育審議会委員を担当。

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