学校の働き方改革、先生任せでいいの?

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学校の先生が忙しすぎることは近年、社会的にも認知されてきました。2023年は「学校の働き方改革」論議が本格的に再開されます。課題は何なのでしょうか。

この記事のポイント

教育委員会の調査では改善が見られるものの…

文部科学省は2022年12月、公立学校教員の給与や勤務、働き方改革を検討するため、有識者や関係者を集めて調査研究会を発足させました。その3日後には、毎年行っている働き方改革の取り組み状況の結果を公表しています。
2019年に定めたガイドラインでは、時間外勤務を月45時間以下にする目標を掲げています。22年度(4~7月の平均)にこれをクリアできた教員は、小学校で63.2%(前年度比1.9ポイント増)、中学校で46.3%(同1.8ポイント増)でした。
改善は進んだものの、働き方改革「元年」で新型コロナウイルス感染症のため臨時休校措置が続いた2020年度(各69.9%、62.9%)には及びません。むしろ感染症対策や、全国一斉休校を契機に導入が一気に進んだ1人1台端末への対応など、ますます多忙化する要素が加わったともいえます。

「過少報告」求められる実態も

ここで気になることがあります。毎年の調査は、あくまで教委を対象にしていることです。
内田良・名古屋大学教授らの研究グループが行った独自調査によると、時間外勤務が月40時間以上の教員では、小学校で3人に1人、中学校で4人に1人が、勤務時間数を少なく書き換えるよう求められたことがあると回答しました。
働き方改革は本来、教委や学校全体で進めるべきものであり、勤務実態はその結果として現れるべきものです。しかし上限ガイドラインに近づけるため、個々の教員任せにしたり、ましてや教員に虚偽の報告を強いたりしていたとしたら、本末転倒です。

2023年は再検討の年

文科省が2016年度、教員を直接対象として行った勤務実態調査では、小学校で約3割、中学校で約6割の教員が過労死ライン(月80時間)を超えて残業しているという過酷な実態が明らかになりました。ただし当時は、個々の教員がどれくらい働いているか、校長などがきちんと把握することさえ一般的ではありませんでした。これでは先生の数を増やしたいと文科省が予算要求したところで、財務当局を説得することさえできません。
そこで2019年1月の中央教育審議会答申では、まず働き方改革を進めたうえで、改めて16年度調査と比較できる形で勤務実態調査を行い、結果に基づいて再検討しようということにしました。
2022年度に行われた勤務実態調査の結果は、23年春ごろに速報値が公表され、調査研究会に報告される予定です。

まとめ & 実践 TIPS

教員が心身ともに健康に働けているかどうかは、子どもの教育の質に直結する問題です。決して個人任せにしていいことではなく、全体として勤務環境を改善していく必要があります。
2023年は「異次元の少子化対策」(岸田文雄首相)のため、「こども予算」倍増の財源をどう確保するかも喫緊の課題となっています。教員の給与や勤務をめぐる教育予算に関しても、今度こそ国民的な論議が求められます。

(筆者:渡辺 敦司)

質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/183/index.html

令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1407520_00010.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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