「子育てに疲れた…」そんな時、どうしたらいい?「お疲れ回復メソッド」を経験者と一緒に考えてみた

  • 育児・子育て

子育てをしていると、お子さまが日々成長する姿に幸せを感じつつも、忙しい毎日に「とにかく疲れた」「ストレスがたまって限界」と感じることもあると思います。
やるべきことは次々にやってきて、思いどおりにいかないことも多いですよね。
それでも子育ては続いていくもの。
そこで、リカバリーに役立つ「お疲れ回復メソッド」を自身も子育てを経験しながら、現在は子育てをする家庭に向けた事業や情報発信に携わるお二人にご提案いただきました。
産後サポート事業を手がける渡邊大地さんと、ライフイベントと仕事の両立に悩む人に向けてコーチングを提供する佐伯早織さんです。
つらいと感じた時に、参考になさってみてください。

この記事のポイント

「子育てに疲れた」「つらい」と思うのはどんな時? 特につらい時期は? 先輩保護者の体験談

まずはベネッセ教育情報サイトが子育て中の保護者のかた約400名に向けて実施したアンケート結果をご紹介します。

※2023年11月に行った「保護者のかた向けアンケート」(393人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

「『子育てに疲れた』と思ったのはどんな時?」と質問したところ、一番多く挙がったのは「自分のペースで家事育児や仕事を進めることができない時」という項目でした。
また、「自分の自由な時間が取れない時」や「睡眠時間が十分に取れない時」「身近に家事や育児を手伝ってくれる人がいない時」を選んだ人も目立ちました。
育児に関わる時間が長時間になったり、思うようにいかなかったりすると、疲れを感じる人が多いようです。

仕事復帰のため、1歳前に保育所へ通わせ始めたころは大変でした。子どもがたびたび発熱し、そのたびに仕事を抜けなければならず……。職場は常に人員不足なので、自分が休んだり早退したりすると同僚に迷惑をかけてしまい、肩身が狭かったです。
(奈良県・よーさん 第1子は小学3年生)

子どもが1歳になるまでは「疲れた」の連続でした。母乳もオムツも沐浴も、初めてなうえに指導もほとんどなく、当然ですが子どもからレスポンスもないため、やり方が正しいのかどうかわからず、「私がこの手を滑らせたらどうなる?」と、毎日気が気じゃなかったです。
(愛知県・かつおさん 第1子は小学2年生)

第1子は眠りが浅く、少しの物音でも起きたり、幼稚園に入園してからは夜泣きが出たりして、とにかく夜の寝かしつけが大変でした。第2子もいたので、上の子が幼稚園に行っている間も寝ているわけにいかず……。近所に住んでいる実母の力を借りたかったですが、母も祖母の介護に追われていたので頼れず、毎日が眠気との闘いでした。
(山口県・まんまるままさん 第1子は小学4年生)

それぞれの立場から子育ての悩みと向き合う二人の専門家、渡邊さんと佐伯さんにも、「子育てで疲れを感じやすい時期」を伺ってみました。

渡邊大地さん

株式会社アイナロハ代表取締役・札幌市立大看護学部非常勤講師
一般企業に勤務後、妻の出産をきっかけに産前産後の男性の役割を模索し、株式会社アイナロハを設立し、産後サポート事業「産後サポート《ままのわ》」を開始。両親学級や父親学級、講演会などで精力的に活動。著書に『赤ちゃんがやってくる!〜パパとママになるための準備カンペキBOOK〜』(KADOKAWA)など多数。お子さまは中学2年生、小学5年生、小学1年生。

佐伯早織さん

ライフコーチ
ソフトウェア開発・販売企業やコンサルティング企業に勤務後、出産を経て2022年からコーチングを提供。現在はフリーランスとして、オンラインでコーチングセッションを行っている。ママコーチ仲間と共に、ママ向けの講座やイベント、コーチングを提供するBoshitoを運営中。お子さまは2歳。

渡邊さん:僕の会社では、産前産後のご家庭に向けたサービスの提供をしていますが、お悩みの声をよく聞くタイミングといえば、「生活環境が変わる時」ですね。まず退院直後や里帰り出産からの帰宅後など「人手が一気に減る」タイミングです。今までは他の人がやってくれたことを、自分たちの力だけでやらなければならなくなり、お子さまのお世話にもまだ慣れていないため、疲れを感じるかたは多いですね。

佐伯さん産前産後は、ホルモンバランスの関係で感情が大きく揺れ動く時期だといわれていますね。もちろん体力的にも、「出産は全治2か月の交通事故に匹敵する」というたとえもあるほどで、回復には時間がかかりますよね。私も産後数か月は心身共にきつかった記憶があります。

渡邊さん:お客さまにお渡ししている「産後目安表」という図にも書いているのですが、産後4週間は授乳以外、家事・育児はできるだけ誰かにお願いしたほうがよい体調なんですよね。その状態の時にがんばろうとすれば、それはしんどいですよね。
他につらさを感じる人が多い時期は、卒乳やトイレトレーニング、ネントレ(決まった時間に自然と眠りにつく習慣を付けるためのトレーニング)など、お子さまの生活習慣を変えようと大人から働きかける時です。トレーニングがスケジュールどおりに進まないと、「どうしてうまくいかないんだろう」「周りでは『うまくいった』という声が多いから焦る……」と思うかたが多いようです。

佐伯さん:確かに……。うちの子は保育園生活が始まってから体調を崩すことが多く、私も休みを取らなければならないため、疲れを感じていました。環境が変わるタイミングは大変ですね。ただ、「大変な思いをしているのは自分のせい?」と思ってしまうと、ますますつらくなってしまいますよね。「大変なことは必ず起こるもの」と受け入れたうえで、それでもがんばっている自分をほめてあげることが「疲れからの回復」につながるのかな、と感じます。

提案! 育児疲れからの回復メソッド

ここからは渡邊さんと佐伯さんに、子育ての疲れを軽減するのに役立つメソッドを伺いました。
二人の専門家が提案する方法を、毎日の生活に少しずつ取り入れてみませんか?

回復メソッド1:不満をためずに吐き出す

渡邊さんイチ押しの育児疲れ回復法は、日々の不満をためずに吐き出すこと。
ご自身も続けていくことで、心の疲労や悩みが軽減されたそうです。

渡邊さん:会社員時代にうつ病を発症したことがありました。
そのころ妻が提案してくれて始めたのが、週1回の「グチ(愚痴)タイム」。
食事をしながら必ずグチを言わなくてはいけないので、会社への文句などをとにかく吐き出しました。
毎週続けているうちに、だんだん吐き出したいグチがなくなって、「自分にはたいした悩みがないんだな」と思えるようになったんです。
疲れの一因には「モヤモヤや不満をためてしまうこと」もあると思うので、家族でときどき「グチを言う日」をつくるのもアリかもしれません。

回復メソッド2:自分の心身状態を把握する

「なんとなくイライラする、体調がすぐれない」という時は育児疲れを感じやすいもの。
そこで渡邊さんと佐伯さんは、自分の心身状態を言葉や図でアウトプットすることを提案してくれました。
自分の心身状態を把握すれば、「疲れているのは当たり前」と現在の状態を受け入れやすくなり、頭の中を整理できそうですね。

渡邊さん:僕たちの産前産後サービスをご利用いただいたお客さまには、体調と気分を「見える化」できる「ヨメーター」という早見表をお渡ししています。

これは千葉県のご夫婦が僕に「我が家ではこんなものを作って活用してますよ」と教えてくれたもので、ご夫婦の許可を得て、僕の会社でデザイン化して無料ダウンロードできるようにしているものです。
「ヨメ」と名前はついていますが、もちろん男性にもお使いいただけます。
記入すれば今の自分の状態がなんとなくわかるし、パートナーとシェアすることで「体調が悪いなら、僕に何かできることはある?」といった会話のきっかけにもなります。
「見える化」で納得できることは多いので、イライラ・モヤモヤしたら自分の状態を客観的に眺めてみてくださいね。

佐伯さん:コーチングのメソッドでは、自分の思いを否定せずに受け入れることを大切にしています。
子育てをしているとネガティブな感情がわいてくることもありますが、そんな自分を認めてあげることが癒やしにつながると考えられています。
さらに、「私はこういうところに怒っているんだな、はらわたが煮えくりかえっているな」などと心の状態を客観的に描写してみると、心が落ち着くともいわれます。
不満を誰かに吐き出すのが難しければ、自分の中で言語化してみるだけでも疲れの回復が期待できると思います。

回復メソッド3:意識的に「自分の時間」をつくる

子育てでは、子どもを優先しなければならない場面が多く、自分の時間が置き去りになりがち。
そこで佐伯さんは、毎日少しでも自分が満足できる時間を取っているそうです。
やるべきことがたくさんあるなかでも、あえてゆったり過ごしてみることで疲れの回復が期待できます。

佐伯さん:私は子どもが寝たあとに、自分の好きなホットドリンクを飲むのが好きでした。
温かい飲み物をゆっくり味わうと心がほぐれて、自分を取り戻せる気がしましたね。
「子どもが寝たら家事をしなきゃ」「ほ乳瓶を洗わなきゃ」などやるべきことはたくさんありますが、休むことを自分に許してあげてもよいのではないでしょうか。
短時間でも子どものお世話をパートナーや他の人に任せられるなら、1人で外出するのもおすすめです。
私は、出産後初めて1人で散歩した時、「自由だ!」と感動しましたよ。

渡邊さん:僕の妻は子どもたちが小さかったころ、韓流ドラマのDVDをたくさん借りてきて子どもを抱っこしながら見たり、ちょっとぜいたくなスイーツを買ってきて楽しんだりしていました。
また最近お客さまから聞いたのは、「高級冷凍食品を常備しておき、子どもが寝てからゆっくり味わう」というストレス解消法。
自分が好きなこと・好きな食べ物で満たされる気持ちを大事にしたいと思います。

回復メソッド4:周囲の人の手を借りる

ちょっとした悩みでも、「誰にも相談できない」と感じるとストレスが募りやすいもの。
佐伯さんは、「パートナーなどにイライラを吐き出すだけでもスッキリするけれど、身近な人に相談しづらければプロの手を借りてもよいのでは?」と提案します。

佐伯さん:各自治体には子育ての相談ができる支援センターもあるし、電話相談ダイヤルなどを利用してもいいですね。
有料の場合もありますが、コーチングやカウンセリングのサービスを利用する方法もあります。
各自治体の児童館で、子育て支援員に話してもよいと思います。
初対面の相手のほうが話しやすい場合もあるので、利用しやすそうなサービスを探してみてはいかがでしょうか。

育児疲れ、私はこうしてリフレッシュしました! 先輩保護者の体験談

先述のアンケートから、先輩保護者のかたが実践していた育児疲れを感じた時のリフレッシュ方法をご紹介します。
ピンとくるものがあれば、1つでも2つでも真似してみてください。

「疲れた~」と思ったらパートナーにお世話を代わってもらって時間をつくり、ショッピングモールに出かけていました。実際に買い物をしなくても、1人で少しブラブラするだけでリフレッシュできました。
(岐阜県・くまさん 第1子は小学6年生)

食事を作る時に、音楽を流しながら大熱唱! イライラが晴れてスッキリしました。
(東京都・みーなさん 第1子は小学2年生)

授乳期間中にイライラした時、子どもを寝かしつけたあと、1人でゆっくりお風呂に入ってからおやつを食べるのが楽しみでした。「太るかな?」と思ってもあえて気持ちの切り替えを優先! 卒乳後は自然とやめることができました。
(福島県・まこさん 第1子は中学1年生)

バタバタしている時こそ、短くても自分磨きの時間をとっていました。顔のマッサージをすると気持ちがよくて、疲れも和らぎました。
(石川県・かこさん 第1子は小学5年生)

子どもが寝てから、録画してあったドラマを倍速で見るのが楽しみでした。「好きなことをしている」という満足感は侮れません!
(茨城県・あくさん 第1子は小学6年生)

子育ては疲れて当たり前。子どもだけではなく自分も大切にすることが家族のハッピーにつながる

最後に、「最近ちょっと疲れているかも……」と感じている保護者のかたに向けて、渡邊さんと佐伯さんからのエールをお届けします。

渡邊さん:我が家では、妻の産後をブログに綴るということをやっていました。
もともとは、妻が、産後の妻の大変さを僕に知ってもらうため、という理由で《やらされていた》ことなんですが、僕はそれによって、妻の産後の体調や気分の変化を知ることができましたし、自分自身も「今こんなことがストレスになっているんだな」と納得することができました。
今となっては、妻も、「産後のことは覚えていないことが多いから、記録に残してもらって助かった」と言っています。
体調や気持ちの変化を記録しておくことは、「あの時はこういうことでイライラしたんだな、でも乗り越えられた」と自信につながるはずです。

佐伯さん:子育てをしていると、毎日が「疲れた」の連続ですよね。
1回は乗りきれても、また次の「疲れた」がやってきて……。
そんな日々の中で私が大切だと思うのは、自分の正直な思いを声に出して、周りの人に頼ることです。紙に書き出してみるのもおすすめです。
私自身、あまり人に頼るタイプではなかったのですが、「我慢せずに助けを求める」というマインドに切り替えると、かなりラクになりました。
人に頼ることでできた時間で、好きなことをしたりゆっくり休んだりして、ご自身を大切にしてあげてください。

まとめ & 実践 TIPS

渡邊さん・佐伯さんからのアドバイス、そして先輩保護者たちが教えてくれた体験談には、いくつかの共通点があることがわかります。
それは、「自分だけで抱え込まず周りを頼る」ことで、自分のやるべきことを減らす「ひき算」の考え方と、「我慢」せずストレスを軽減すること。
ひき算することによって、逆にお子さまやご自身がもっと楽しくなれる「子育てのたし算・かけ算」が実現するかもしれません。
また、我慢しないことで疲れが癒やされ、次の日の活力へとつながっていくでしょう。
「そうは言っても自分が無理しないと回らないし……」と思うことも多いかもしれません。
それでも、1つでもよいのでラクになれる方法を試すことで、「疲れた」を軽減していきませんか?

※記事内の体験談コメントは2023年11月に行った「保護者のかた向けアンケート」(393人回答)より掲載。

プロフィール

渡邊大地

株式会社アイナロハ代表取締役・札幌市立大看護学部非常勤講師
一般企業に勤務後、妻の出産をきっかけに産前産後の男性の役割を模索し、株式会社アイナロハを設立し、産後サポート事業「産後サポート《ままのわ》」を開始。両親学級や父親学級、講演会などで精力的に活動。著書に『赤ちゃんがやってくる!〜パパとママになるための準備カンペキBOOK〜』(KADOKAWA)など多数。お子さまは中学2年生、小学5年生、小学1年生。

プロフィール

佐伯早織

ライフコーチ
ソフトウェア開発・販売企業やコンサルティング企業に勤務後、出産を経て2022年からコーチングを提供。現在はフリーランスとして、オンラインでコーチングセッションを行っている。ママコーチ仲間と共に、ママ向けの講座やイベント、コーチングを提供するBoshitoを運営中。お子さまは2歳。

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