保健室の先生に、中学生はどんな悩みを相談している?【心の悩み編(1)】

過去には養護教諭として保健室を訪れる子どもと向き合い、現在はスクールカウンセラーとして子どもの内面のケアにあたる相樂直子先生に、中学生の心の悩みについて2回にわたって伺います。
今回は、同級生との人間関係やいじめに関する悩みについて。学校内でのトラブルに加え、近年ではSNSをきっかけとした関係悪化に悩む子どもも多いようです。
トラブルが起きる背景と、保護者ができることについてお話しいただきました。

中学生の人間関係は、今も昔もこじれやすい!?

中学生の人間関係にトラブルがよく起きる背景には、発達段階としての特徴と、現代的な社会事情があります。

「同じ」であることが仲間のあかし

中学時代に陰口、嫌がらせ、無視などの人間関係のトラブルと全く無縁だったという保護者のかたは、少ないのではないでしょうか。今の子どもたちも同じ。10代前半は、どうしても人間関係がこじれやすい時期なのです。

中学生のトラブルで今も昔も変わらず見られるのは「仲間外れ(仲間外し)」です。10代前半の思春期は自我がつくられる過程にあり、周囲からどう見られているのかが気になる時期。人と同じであることに安心し、似ている者同士でグループ(仲間)をつくる姿がよく見られます。

こうした発達段階にあることから、無理に周りに合わせてしまったり、「人と違う」部分に敏感に反応したり、自分とは異なるタイプの人を受け入れられなかったりといったことが起きやすくなります。これは、同調圧力(ピアプレッシャー)と言われるものです。
特に思春期の女子は、似た者同士の仲良しグループで固まる傾向が強く、ささいなことをきっかけに、グループから外された、抜けたい……と、保健室を訪れる生徒が多数現れます。

人付き合いのトレーニングが積めない現代

一方、保護者世代と異なるのは、人と接触する機会が少なくなった社会環境です。

まず少子化により、単純に同級生の数が減り、昔と比べるとコミュニケーションの相手が限られています。都市部では「ご近所付き合い」がほとんどないところも珍しくなく、子どもたちを地域で育てるといった場面も減りました。全般的に見てもSNSをはじめオンラインでの交流が増える一方で、直接顔を合わせる対面コミュニケーションの機会は減少気味。さらにコロナ禍によって人との接触が制限されました。

対面コミュニケーションでは、言葉以外にも表情、視線、しぐさなど多くの情報を伝え合っています。その伝え方、読みとり方を「練習」する機会が少ないため、人間関係を築くスキルがなかなか磨かれません。
また、SNSなどのオンラインでのやりとりは、言葉以外の情報が読み取りにくいため、微妙なニュアンスがわからず、既読無視、未読無視、ブロック、グループ外しといったトラブルのもとになりやすいといえます。

望まない「いじり」や「キャラ化」に要注意

  • 子ども時代は特に、場を盛り上げる人、面白い「キャラ」の人が一目置かれますよね。笑いを取る方法の一つに、人のネガティブな部分をおちょくる「いじり」があり、おちょくられる側を「いじられキャラ」などと呼ぶことがあります。
  • いじられキャラを引き受けることによって周囲を喜ばせ、自身のネガティブな部分を明るく笑い飛ばす人もなかにはいます。
    しかし、本当は苦痛なのに、いじられキャラが自分の存在意義だと思って演じ続けてしまう子どもがいるのも事実です。実際は心にダメージを負っていても、本人がそれに気付いておらず、身体症状などが現れてから初めて苦痛だったことを自覚するという例も珍しくありません。グループ(仲間)内に居場所を確保しようと必死で、気付かないうちに無理をしているのです。
  • からかう側は楽しくいじっているつもりでも、受ける側が苦痛に感じていたら、友達付き合いの範ちゅうを超えています。面白さのために、人を傷付けたり人に傷付けられたりしてはならないという原則を、子どもにしっかり伝えておきたいですね。

子どもを守るために、保護者ができること

子どもが人間関係のトラブルに巻き込まれたり、人を巻き込んだりしないために。巻き込まれたときのダメージを最小限にするために。保護者にできることは何でしょうか。

いつもと違うところがないか、子どもを観察する

いじめについては、子どもが自分から「いじめられている」と訴える例は、非常に少ないといえます。学校教員も注視はしていますが、特にスマホなどを使ったSNSによるいじめは、学校でスマホの持ち込みや使用が制限されていることから、教員が気付きにくい状況にあります。

保護者は誰よりも子どもの日常生活を支え、見ている立場。常に注意を払い、表情が暗い、口数が減る、持ち物がなくなっている、身体に傷があるなど、普段の姿との違いに気付いたら、保護者のほうから声をかけること、様子について聞く(聴く)ことが大切です。

身体の不調には、心の悩みが隠れているかも

普段の様子との違いのうち、特に注意すべきは身体の不調です。
心の悩みは身体にもダメージを与えています。たとえば、子どもに悩みについて聞くと、「特にない」「大丈夫」といった言葉がよく返ってきますが、そのような場合でも体調の変化から、背景にある悩みの存在が明らかになることがあります。保健室でも、子どもの身体的な訴えから、徐々に心理面について話を聞いていく方法がセオリーとなっています。

心の悩みによってどのような変化が現れるのかは、個々で異なります。お腹が痛い、疲れた、眠れない、食欲がない、息がしづらい……。子どもが発信するSOSの特徴を知っておくとよいでしょう。

朝の登校時、子どもから体調不良の訴えがあった場合は、それが身体の病気なのか、心に由来するものなのか、ほかに何か登校をしぶる要因があるのか、すぐにはわからないかもしれません。だからこそ、大人の目線から決めつけない姿勢が大切です。
たいしたことがないと考え、「気にしないで」「気のせいだ」などと返事をしていると、子どもにとって保護者は「話を聞いてくれない存在」「気にかけてくれない存在」となり、悩みを抱え込んでしまうようにもなりえます。子どもの訴えをしんしに聞く(聴く)姿勢が必要です。訴えに対して「どの辺が痛いの?」「いつごろから?」などとやりとりを行っているうちに、心の悩みにたどり着くケースもあるかもしれません。

身近な大人として、適切なモデルになるふるまいを

中学生は、親離れが進んでいるように見えてもまだまだ発達途上にあり、周囲の大人のふるまいを、生き方のモデルとしてとらえている面があります。
特に対人関係では、「いじめ」について、社会的に許されない行為であると子どもに示し、子どもの規範意識を育てる必要があります。一方、子どもは大人の対人関係をしっかり見ています。大人の相手を傷付けるような言動についても、敏感に受け止めています。大人が子どもの生き方のモデルになるという視点から、大人自身の対人関係についても見直すことが大切であると思います。

いじめの問題の解決に向けては、子どもだけではなく、大人の介入が必要です。
相談先として、下記のような窓口があります。

各自治体の子ども家庭支援センター
(自治体によって、「児童家庭支援センター」「家庭支援総合センター」など名称が異なります)

都道府県警察の少年相談窓口
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/soudan.html

子どもの人権110番
0120-007-110
月~金 8時30分~17時15分

インターネット人権相談受付窓口
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html

まとめ & 実践 TIPS

●子どもは大人を見ています。保護者が、自身の交友関係の中で、いじめにつながるような行動をしないことが、大前提です。
●保護者は、子どもの一番の観察者でありたいですね。何かあったかと心配して声をかけると、その場では「うるさい」などと反抗的な態度をとるかもしれませんが、「何もなさそうでよかった」と思うようにしましょう。態度はネガティブでも、自分を見てくれているという安心感を得て、心理的にはポジティブになっていることも多いものです。

取材・文 / 児山雄介(オンソノ)

プロフィール

相樂直子(さがら なおこ)

相樂直子(さがら なおこ)

宮城大学看護学群准教授。博士(カウンセリング科学)。
学校心理学が専門で、子どもたちのメンタルヘルス、学校における多職種連携などについて研究している。
大学での養護教諭養成教育のほか、小・中学校のスクールカウンセラー、巡回相談心理士としても活動している。
著書に『教師・保育者のためのカウンセリングの理論と方法 : 先生をめざすあなたへ』(北樹出版)、『保健室・職員室からの学校安全 事例別 病気、けが、緊急事態と危機管理 vol.1、 vol.2』(少年写真新聞社)など。

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