幼稚園受験や小学校受験の願書に「家庭の教育方針」をどう書けばいい?ポイントや記入例を紹介

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幼稚園受験や小学校受験の願書に「家庭の教育方針」をどう書けばいい?ポイントや記入例を紹介

幼稚園・小学校受験の願書には「家庭の教育方針」の記入が求められることがよくあります。しかし「教育方針を深く考えたことはない」「何を書けばいいのかわからない」というかたもいらっしゃるかもしれません。

そこで幼稚園面接官としての豊富な経験をもとに、1,000名以上の幼稚園受験・小学校受験の支援に取り組まれる藤川海美さんに「家庭の教育方針」の考え方や書き方を伺いました。

この記事のポイント

「家庭の教育方針」とは?

家庭の教育方針とは?

ーー 「家庭の教育方針」とは、どのようなものでしょうか。「何となく考えてはしているものの言葉にしたことはない」「夫婦で深く話し合ったことはない」というご家庭も多いかもしれません。

家庭の教育方針とは、簡単にいえば「家庭でどのような子育てをしているか」を言語化したものです。保護者には「我が子には将来このような大人に育ってほしい」という思いがあります。ご夫婦で話し合ったことがなくても、愛するお子さまが生まれた時に「こんなふうに育ってほしい」と感じたはずです。

「家庭の教育方針についてあまり考えたことがない」という保護者のかたの相談に乗ることも多いのですが「ただ何となく子育てをしてきた」と思われているかたでも、深く掘り下げて話を聞いていくと「自分はこういうふうに育てられたから、我が子にもこう教育している」「国際的に活躍できる大人になってほしいから、日常的に英語を取り入れて育ててきた」など、何かしらの思いをもとにした教育を行っているものです。

ーー 言語化ができていなくても、教育方針を持ち、それに基づいた行動をしているものなんですね。

はい。ご家庭で日々行われている一つひとつの小さな取り組みも、それが積み重なっていけば大切にされている教育方針となります。

幼稚園や小学校受験の願書で「家庭の教育方針」の記載が求められる理由

幼稚園や小学校受験の願書で「家庭の教育方針」の記載が求められる理由

ーーなぜ願書に「家庭の教育方針」を書くことが求められることが多いのでしょうか。

「ご家庭の教育方針」と「学校の教育理念」が一致しているかを見るためです。お子さまの成長を支援するには、園や学校と保護者の協力が必要不可欠です。幼稚園や小学校に入園・入学されるお子さまはまだまだ幼く成長途中です。一貫校であれば、高校あるいは大学まで長い期間を共にすることになります。ご家庭がどのような教育を行っているのか、それが幼稚園や学校の考えとどこまで一致しているのかを知ることは、よりよい関係性を築き、協力していけるかを判断する手がかりとなります。

逆にいうと、学校が掲げる建学の精神や教育目標と別方向の子育てをしているご家庭とは、さまざまなミスマッチが起こるリスクがあるということです。ミスマッチが発生することは、互いにとって不幸ですよね。事前に合致しているか否かを判断することは大切です。

ーー 園や学校は、具体的にどのような点を見ているのでしょうか。

「どういう大人に育ってほしいか」という目標が園・学校と一致しているか、そして「そのために、家庭ではこういう教育をしている」という実践に筋が通っているかという点です。

園・学校は、ご家庭の教育方針がどれだけ現実的に落とし込んで実践されているかを見ています。壮大な教育方針を掲げていても、それが実践されていなければ意味がありません。
また、うそのエピソードを書いてもプロがお子さまを見れば「本当にその方針を実践しているのか」は感覚的に理解できます。そのため、実際にご家庭で実践している現実味のある教育方針、かつお子さまの長所や能力にそれが表れているものだとより望ましいでしょう。

ーー 「家庭の教育方針」はどの程度の文字量が求められるのでしょうか。

実際に書く量は、学校によって異なります。1,000字ほどのところもあれば、2〜3行ということもあります。願書への記載はなく、面接で確認されるというケースも見られます。

文字量の多い少ないにかかわらず、家庭の教育方針を言語化しておくことは大切です。ご家庭にとっても、希望する学校の求める保護者像、子ども像に近いかどうかを確認する材料にもなります。

「家庭の教育方針」の書き方

「家庭の教育方針」の書き方

ーー 「家庭の教育方針」を言語化するには、どのような項目を整理していくといいのでしょうか。

1:お子さまにこう育ってほしいという理想の人物像を一言でまとめる
2:実際に取り組んでいる取り組みを整理する
3:取り組みをとおしたお子さまの変化をまとめる

というステップで整理していけるといいですね。

まずは、「お子さまにはこうなってほしい」という理想像を一言でまとめます。あれこれ挙げると焦点がボヤけるので、「他者を助けられる人間になってほしい」というように一言で言い切ることがポイントです。

次に、そのためにどのようなことに取り組んでいるかのエピソードを整理します。「他者を助けられる人間に育てたい」に関するものであれば、毎月老人ホームのボランティアに親子で参加するかたもいますし、地域のゴミ拾いをするかたもいます。
また、保護者が日頃からお手本となり近隣のかたの手助けを進んで行う姿を見せるかたもいるでしょう。どんな小さなことでも構いませんので、こういった実際のエピソードを教育方針ごとに整理し、箇条書きにまとめていくことをおすすめします。

最後に、取り組みや保護者の関わりをとおしてお子さまにどのような変化があったのかもまとめられるといいですね。教育方針の実践の成果を感じていただきやすくなります。

ーー 言語化していく中で、つまずきやすいポイントはどのような点でしょうか。

ご家庭の教育方針を表すエピソードを整理するのにつまずくかたが非常に多い印象です。教育方針とエピソードとのつながり、関係性が意識しづらいのかもしれません。
実際に、保護者のかたのお話を深く伺っていくと「その関わり方、取り組みはお子さまのこういった部分を伸ばすものですよね」となるものが多いのですが、周囲に指摘されるまでそれがご家庭らしさを表すものだと気付いていないケースがほとんどです。

ーー 気付けるようにするにはどうすればいいのでしょうか。

幼稚園や保育園の先生、仲のよい友達の保護者のかたや習い事の先生など、第三者から見て「こういう子に育っているよね」という意見をいただくことをおすすめします。
たとえば第三者から見て「この子は探究心が強い」と言われれば、それがご家庭の教育方針を言語化したものであるかもしれません。
それをヒントに「そういえばこういう子に育ってほしいという思いからこんなことをしていたな」と気付くきっかけにもなるでしょう。ご家庭のことを客観的にとらえるためにも、第三者から見た印象を尋ねてみてください。

園・学校の教育方針とのマッチをアピールするには

ーー 「家庭の教育方針」が園・学校の教育方針と一致していることは、どのようにアピールしていけばいいのでしょうか。

願書に「学校の教育方針との一致点をお書きください」と書かれていなければ、無理に「ここが一致しているところです」と書く必要はありません。ご家庭の教育方針が、学校の方針と一致しているのであれば願書を確認する先生方もすぐにわかります。

ただ、無理に合致していることをアピールするため、学校の定める教育方針と一言一句同じ言葉を使用するのは避けましょう。「無理に寄せているのかな」と思われてしまいます。ご家庭らしい言葉で合致していると感じる教育方針とエピソードを記入すれば学校側もその意図をくんでくださいます。

また、受験校に合わせようとするあまり、それほど実践していないエピソードを入れてアピールするといったことも避けてください。間に合わせのエピソードは、見抜かれます。受験校に合致したエピソードがないのであれば、今から実践していったうえで願書に書くという準備が必要です。そのためにも「家庭の教育方針」は、受験を検討し始めたら、すぐに考えていきたいですね。

他のご家庭との差別化は必要?

ーー 「家庭の教育方針が普通の内容になってしまう」と悩む保護者のかたもいらっしゃいます。差別化するにはどうしたらいいのでしょうか。

無理に差別化する必要はありません。大切なのは「いかに他者とは異なる教育方針を打ち出すか」ではなく、「教育方針が実際の生活や育児に生かされているか」です。

たとえば、多くのご家庭が教育方針の一つとしてお話しくださるのが「思いやりのある子に育てる」というものです。これだけ聞くと、ほとんどすべての家庭が書くものなのではないかと思われるでしょう。実際、特にキリスト教など宗教系の学校の願書で書かれるかたが多いのも事実です。

しかし、大切なのは思いやりを育てるために実践している内容にご家庭らしい特色があること、志望校の先生方がお子さまを見た時に「確かに思いやりが育っているな」と感じられることです。ご家庭らしさを表すエピソードが書かれていれば、おのずと他のご家庭とは異なるものになるはずです。

「普通かもしれない」と感じる教育方針であっても、必ずそれを正しく実践しお子さまも成長されているとわかるようなエピソードを願書に書きましょう。
くれぐれも、差別化しようとするあまり「それ、本当に実践されていますか?」と思われるような教育方針を書くことは避けたいですね。

「家庭の教育方針」に関するよくある誤解

「家庭の教育方針」に関するよくある誤解

ーー 「家庭の教育方針」の書き方で、よくある間違いやNG事項があれば教えてください。

「先取り教育のアピール」と「保護者のかたの関わり方がわからない」という2点が挙げられます。

1点目の「先取り教育のアピール」は、園や学校に響きにくいことが多いものです。
先取り教育を方針としている学校であればいいですが、そうでない限り「こんなにたくさんの習い事をして、こんなに素晴らしい成果を出してきました」という点を強く押し出すのは避けたほうがいいです。
学校としては、過度な量の習い事や先取り教育はお子さまの可能性を潰す恐れのあるものとして認識されることも多いためです。また「家庭の教育方針は結局のところ何なのか? 他人任せに教育を行うことなのか?」と感じる先生もいらっしゃいます。

そのため、幼いころから学業をがんばっている、いろいろな分野でたくさんの賞をもらっているという点ばかりを押し出すのではなく、「家庭でこのようなことを一緒にがんばった結果、賞も付いてきた」くらいにアピールするのがよいでしょう。英才教育をバリバリ行うご家庭よりは、人としての土台となる内面や非認知能力を重視して子育てを行っているというほうが印象はよくなります。

2点目の「保護者のかたの関わり方がわからない」については、学校が「協力していけるご家庭か」を判断することができなくなってしまうため注意が必要です。

「優しさを育てた結果、我が子はこんなに優しい子になりました」と、お子さまの現在のエピソードばかりを押し出しても意味がありません。
お子さまが優しい子に育つまでの過程には、保護者のかたの素晴らしい関わりや努力があったはずです。それをエピソードにすることで、学校側も「なるほど、実際に行動をしている人だ」と納得してくださいます。

「家庭の教育方針」の書き方例

「家庭の教育方針」の書き方例

最後に、「家庭の教育方針」の書き方について、具体的な例をご紹介します。学校によって望ましい家庭の教育方針は異なるため、あくまで一例として参考にしてみてください。

例1
私共夫婦は海外留学の経験から、相手の文化や宗教を尊重しつつ協働する重要性を学びました。そのため息子にも、多様性を理解し国際社会で多くのかたを支えられる人間になってほしいと考えています。家庭では週末にさまざまな国の料理を再現することで、他国の文化に触れるよう心がけています。また、海外に住む私共の友人たちと毎月テレビ通話をして、他国の現状や考え方、言語の違いなどを知る機会も設けてきました。息子は英語に興味を持ち、現在は「海外のお友達を100人つくる」という目標を持って歌や絵本で言語を学んでいます。息子の夢を後押しするため、家庭でも英語で話す時間を毎日つくり、コミュニケーション力を高めています。

例2
我が家では一つの物事をやり抜き、忍耐力と強い精神力を兼ね備えた大人になるよう育てています。娘は父の影響で、現在柔道を習っています。最初は少し相手に押されただけでも涙を流していましたが、稽古の前に「今日は何をがんばろうか」と小さな目標を立てることで、少しずつ達成感を得られるよう後押ししています。また練習風景を映像に残し、休日にはそれを見ることで娘自身も「ここはもう少し足を踏ん張りたい」と課題を見つけられるようになり、自宅で早朝練習を行うなど家族総出で娘の成長を後押ししています。先日初めて大会に参加した時には、「必ず一勝する」という目標を達成することができ、本人も大きな自信を得て諦めない心が育ってきたように感じます。

「多様性を理解した国際的な人になってほしい」「忍耐力と精神力を兼ね備えた人になってほしい」といった教育方針は、よく見られるものではあります。しかし、実際に取り組んでいる具体的なエピソードを盛り込んでいること、お子さまの様子や変化を記入していることで、ご家庭独自のものになっていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。面接の際に、目の前のお子さまを見た面接官が「確かに教育方針が体現されている」と感じられれば、好印象を残すことができるでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

「家庭の教育方針」を考えたことがないという場合も、必ず何かしらの思いに基づいて実践しているはず、との藤川さんの言葉にハッとしたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。当たり前に取り組んでいることだからこそ、客観的に気付きづらいこともあるもの。夫婦で話し合うだけでなく、周りの人の意見も聞きつつ、ご家庭独自の教育方針を言語化していけるといいですね。

編集協力/岡聡子、Cue`s inc.

プロフィール


藤川 海美

元お受験幼稚園の面接官として、数多くの願書を審査し、面接を担当。長年の経験をいかし、小学校受験指導・幼稚園受験指導に従事。累計1,000名以上の合格支援の実績を持つ。

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