中学受験しない子が、高校・大学受験を見据えて小学生のうちにやっておきたいこと

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中学受験はしない予定だけれど、高校受験やその先の大学受験も見据えて、小学生のうちから学校の授業以上の学力を少しずつ付けていきたい。けれど、具体的には何をすればいいのかわからない……という悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか。
そこで、中学~大学の受験技術に詳しく、受験生の指導や教材作成経験をもとに『学習の作法』シリーズを書かれた天流仁志さんに、小学生のうちにやっておきたいことについて解説していただきました。

この記事のポイント

自由に学習計画を組めることが、高校受験組のメリット

中学受験をしない場合の小学生の学習ですが、まず子どもの興味に合わせて自由に学習計画を組めることが、高校受験組の最大のメリットであることを押さえてほしいと思います。中学受験の勉強にはよい面もありますが、難しすぎる算数(中学・高校の数学にはあまりつながらない)や、細かすぎる理科・社会の用語知識を覚えることに、多くの時間とエネルギーが必要とされます。好きな子であればよいですが、そうでない子にとっては、相当ハードです。

中学受験をしないのであれば、その時間を自分の興味のある教科に使うことができます。算数が好きな子は中高の数学まで学習を進めたり、中学受験組がこの時期手薄になりがちな英語に力を入れたりしてもよいでしょう。それ以外でも、自分のやりたいことをじっくり追求する経験は、将来的に「やりたいことがない」とならないためにも有意義なのではないでしょうか。

とはいっても、高校受験のときには教科の好き嫌いにかかわらず、すべてある程度のレベルに持っていかなければなりません。そのため、小学生のうちから学習習慣と、正しい学習方法を身に付けておくことが重要です。

学習は、好きなものから&易しいものをシンプルなやり方で

学習習慣を身に付けるには、小学校低学年や幼児のころから、親も一緒に取り組むことが有効です。このとき気を付けたいこととしては、親が教えるのではなく、「一緒にする」ということ。自分の勉強や読書でもよいので、隣で一緒に学習タイムを過ごすことで、日々学習することを「当たり前」と子どもが思うようにしていきましょう。

学年が上がってくると学習内容も難しくなり、勉強を嫌がることもでてくると思いますが、ゲームの前に学習、などのきまりを守ることで、「やるべきことはやる」という意識付けを図ってください。気分が乗らないときでも手を付けやすいように、学習は好きな教科から始めるとよいでしょう。エンジンがかかれば、苦手な教科もその勢いで取り掛かりやすくなります。

正しい学習方法、つまり「何を」「どのように」学習するかですが、学習内容が難しすぎたり多すぎたりすると、たちまちやる気がなくなってしまいます。保護者のかたにお伝えしたいのが、最初は易しい教材を使うことをためらわない、ということです。はじめて学習する分野や、苦手な問題に取り組むときには、易しい教材をできるだけシンプルなやり方で進めるとよいでしょう。音読するだけ、書きこむだけ、といったシンプルな学習法なら、子どもが初めて見る内容でもできないことはありません。最初のハードルを下げて入り口をクリアすることを最優先し、レベルはあとから上げていけばいい話です。

教科別! 押さえておきたいポイント/おすすめ学習法/学習目標

■国語(全教科):「読解力」を高める

国語をはじめ、どの教科でも必要になるのが「読解力」です。読解力が不十分だと、他の教科でもいずれつまずいてしまうので、小学生のうちから意識して読解力を高めていきましょう。

読解力にも、いくつか要素があります。一つは語彙(ごい)力や、文章の背景知識といった知識事項。もう一つ大きいのが、文章の読み方です。感情移入して物語を読む読み方などとは異なり、文章全体の構造を客観的にとらえて、しっかり理解する練習をしておいたほうがよいでしょう。

そのための素材としておすすめなのが、中学生向けの理科・社会の参考書や、『岩波ジュニア新書』『ちくまプリマー新書』といった読み物です。高校入試で必要な知識量は、難関中学入試よりかなり少ないので、中学生向けの参考書は、理屈の理解を重視したものがけっこうあります。またジュニア向けの新書は、幅広いジャンルがそろっているので、さまざまな知識や語彙力を付けるうえでも役に立ちます。

語彙力でいうと、参考書で太字になっていない普通の言葉の意味がわからず、つまずいている子が少なからずいます。辞書をひいても載っている説明が難しいことがあるので、普段の生活の中で「この言葉わかる?」と確認するなど、大人が気にかけたいところです。教材や本を選ぶときは、子ども向けに言葉の意味を解説しているかどうかもポイントです。

入試まで遠く、日々の学習の目標を立てにくい高校入試組ですが、外部の検定を利用するとよいでしょう。国語では、「文章読解・作成能力検定」が新傾向の高校入試問題にも傾向が合っていておすすめです。また、「ことわざ検定」も語彙力を高めるのに効果的です。
有名な「漢検」は、どうしても漢字の書き取り練習がメインとなり、意味や読みが手薄な対策教材が多い印象です。ただし採点が細かいので、きちんと漢字が書けているかの確認として、中学の早いうちに受けておくとよいでしょう。高校入試の国語では、漢字が正確に書けていないために減点対象となることがあるので、ていねいに字を書く動機付けになります。

■算数:「図や表を使った分析力」を身に付ける

大学入試まで見据えると、数の性質の問題で表をかく練習や、図形の移動の問題でいくつもの図を作成する練習は、ぜひ早いうちから取り組んでほしいと思います。算数でも数学でもよいですし、公立中高一貫校の適性検査にも、よい問題がたくさんあります。大切なのは、「自力で」図や表をかいて考えること。とっかかりとして「お絵かき算数」という、問題文を自分で絵にかいて表す手法も使えそうです。

計算スキルについては、四則演算(小数、分数を含む)はしっかり仕上げておきたいですが、中学受験算数で要求されるような複雑な計算は、よほど好きな子でない限り必要ないと思います。特に小数の計算は、中学・高校ではほとんど出番がありません。ただし、大体の見積もりができるようにしておくことは、他教科においても重要です。理科や社会でも概算は頻出ですし、高校生が多く受ける英語試験「GTEC」にも、概数計算をする問題が出題されています。

目標として、「思考力検定」はまさに図や表で考える問題ばかりなので、おすすめです。数学に進んで「数学検定」を目標にしてもよいでしょう。中学・高校で習うベーシックな内容が主なので学習しやすく、役立ちも実感しやすい検定です。

■英語は、「読む、聞く(+話す)」を中心に

英語のいわゆる4技能(読む、書く、聞く、話す)でいうと、バランスとしては「聞く」を多めに「読む、聞く(+話す)」力をつけていくとよいでしょう。親世代から様変わりしており、中学教科書の音声は速くて長いので、ついていくのが大変です。高校入試のリスニングテストも、地域による差はあるものの、量もスピードも段違いです。小学生のうちから聞き取りの力を伸ばしておくと、だいぶ楽になります。

日本人にとって大きな壁といえる、英語の「発音」「リズム」「後置修飾」の3つは、小学生のうちに身に付けたいものです。「後置修飾」とは、たとえば「the book on the desk」(机の上にある本)のように、後ろから前の単語を修飾する使い方のことです。この「英語では、後ろから前を修飾することがよくある」という構造の違いを知っておくと、内容がとらえやすくなります。

「発音」「リズム」を身に付けるためにおすすめしたいのが、英語の歌です。拍やリズム、発音を意識しながら聴き、自分で歌えるようになると、英語を聞き取る耳ができてきます。よくある童謡ではものたりない場合、最近は日本のヒット曲でも、たいていバイリンガルのかたが英語バージョンを歌う動画をYouTubeなどで見つけることができます。

目標として、「英検」は有名ですが、現在の英検は3級からライティングが必須で負担が重いので、まずは「TOEIC Bridge」、「JET」(ジュニアイングリッシュテスト)、「TOEFL primary」などから始めるとよいでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

小学生のとき自由に学習計画を組めるというメリットは、主体的に学ぶ姿勢にもつながるのではないでしょうか。まずは学習習慣を付け、検定などを活用しながら、正しい学習方法を身に付けるサポートをしていきましょう。

(取材・文/荻原幸恵)

プロフィール

天流仁志(てんりゅう・ひとし)

北海道生まれ。公立の中学校から鹿児島のラ・サール高校に進学し、そのカルチャーショックから受験技術の研究を始める。東京大学在学中から、複数の塾・予備校でさまざまな学力層の生徒を指導し、現在はGLS予備校の教務主任。学習参考書マニアでもある。著書に、『学習の作法(増補改訂版)』(中高生向け)、『学習の作法 実践編 中学生のための勉強法』、『学習の作法 中学受験・中学入学準備編』(小学生向け)など。

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