【幼児英語教育の考え方・4】「発達」と「英語教育」を切り離して考えないこと・年齢別の英語教育テーマとは

 小中高等学校を中心に英語教育研究を行う、ベネッセ教育総合研究所 主任研究員(グローバル研究室)・加藤由美子氏のお話です。今回は、年齢ごとの特徴を具体的にとらえていきましょう。

 


0~1歳は「五感で感じること」が大切

 基本は「音声」「語りかけ」ですが、0~1歳児には五感を刺激することが重要です。赤ちゃんは「五感」でいろいろなことを感じとろうとします。0~1歳児には0~1歳児の「発達に合った教材」が必要です。また、発達には当然個人差がありますので、常に慌てず、「その子の発達状態に合っているか?」をよく注意しておきましょう。

 

 

2歳ごろからは文字に興味を持つが、まずは音から慣れ親しむことが大切

 2歳になれば日本語のボキャブラリーも増え、「文字(アルファベット)」の形もだんだん認識できるようになります。保護者としては文字を覚えさせたい気持ちになってしまいますが、慌てず、「文字」として教えるのではなく、形合わせやブロック遊びの中で文字の形に慣れ親しむことからやっていきましょう。紙に書かれた字を見せて「これはAだよ」と教えても、子どもの頭に入っていきません。体験の中で自然に「アルファベットに慣れ親しむ」というスタンスが不可欠です。この体験には、「音」が十分に頭に入っていることが前提となります。日本語も、文字を見る前に、「音」がたっぷり頭に入っているからこそ音と文字がつながります。英語の場合も同じです。

 

大人でも何の脈略もなく単語を言われれば、「あれ?」と思いますよね。子どもはもっとそうです。一つの単語をインプットするにしても、常に「文脈」が必要であり、たとえば「自分が欲しいもの」あるいは「自分が好きなもの」などという、自分とのつながりも必要です。「自分のこととして受け入れる準備」を仕組んであるような教材をうまく選びましょう。

 

 

一気に成長する3、4歳。でも、あくまでも発達に合わせて

 3、4歳では、記憶力や認識力もあがってきます。このころになると過去を少し思い出すことができ、集中力も増していますね。そうなれば、少しずつ「学習要素的なもの」を入れやすくなります。ただし、「入れやすくなる」というだけで、基本は五感を通した遊びの体験であることはそれまでと変わらず大切です。

 

親としては「アルファベットを早く書いてほしい」という気持ちも出てくるかもしれませんが、きちんと鉛筆を持てない子どもに文字を書かせるのは、日本語であっても無理なこと。そこでも「身体的発達」という側面を見る必要があります。身体的発達と精神的発達に、ふさわしい体験をすることは、どんなことにおいても重要です。

 

ここで、身体的発達と精神的発達を無視して教育を進めれば、「あたまでっかち」な人をつくり上げてしまうことになりかねません。もちろん「努力」は必要ですが、「無理」をすることはおすすめしません。

 

 

5~6歳は「学習へのかけ橋」が完成

 椅子に座れる、順番やルールを守れる、協力ができる...個人差はありますが、ぐっと英語学習がしやすくなる時期。小学校段階での「学習へのかけ橋」が完成する時です。英語で「質問に答える」ということも、だんだん上手になるでしょう。

 

しかし、発達に合わせるという意味では、質問したあとに反応を「待つ」ということも必要です。なかなか答えが出てこないからといって、答えを教えて「リピート!」あるいは「繰り返して言ってみて!」と急がせないで、待つことが大切です。答えられないのは、質問の意味がわからないのか、意味はわかってもどう答えたらいいのかがわからないのか、いろいろな状況が考えられます。質問を理解するにも答えるにも、言葉の蓄積が十分でないとうまくできません。

 

 

 取材協力
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