我が子がいじめの加害者だった[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
同じクラスの保護者から、うちの子が学校である子をいじめているようだと指摘され、気が気ではありません。子ども本人に聞いたほうがいいでしょうか? 先生、あるいは直接相手の子や保護者に聞いたほうがいいでしょうか?
相談者・かぼす さん (小学6年生 男子)
【親野先生のアドバイス】
かぼすさん、拝読しました。これは心配ですね。
こういう指摘を受けた時、まったく事実を確認することなく、次のようにいきなり感情的になってしまう保護者がいます。
「うちの子がそんなことをするわけがない。証拠はあるのか?」
「相手が先にやってきたに違いない。うちの子は自分を守っているだけだ。うちの子のほうが被害者だ」
「悪いのはうちの子だけじゃないはずだ。なんでうちの子だけ責めるのか?」
我が子を守りたい一心なのでしょうが、これでは決して本人のためになりません。まず大切なのは事実をつかむことです。
本人に話を聞く時に大切なのは、子ども自身の口から本当のことを言えるようにしてあげることです。ですから、感情的な詰問口調にならないようにしてください。
または、「いじめなんかしていないよね。していないなら『していない』って言いなさい」というように、つい都合のいいほうに誘導尋問してしまう人もいますので、これも気を付けてください。
子どもに次のように伝えてください。
「正直に全部話してほしい。間違ったことをしたなら、それを話してほしい。話しにくいことも正直に話してほしい。それがつぐないの第一歩だよ。これからどうしたらいいか一緒に考えよう。謝るべきことはちゃんと心から謝って許してもらおう。お母さん・お父さんも一緒に謝るからね」
日頃から親子の間に信頼関係があれば、子どもは本当のことを話せます。
親を信頼していれば、「正直に話しても親は受け入れてくれる。間違ったことをした自分でも見捨てることはない。自分と一緒に謝ってくれる。これからどうすればいいか一緒に考えてくれる。間違ったことをした自分を正しいほうに導いてくれる」と思うことができるのです。
子どもの話を聞いたら、共感していいところはしてあげますが、やはり悪いところははっきり悪いと言ってあげてください。
「そうなんだ。そういうことがあったんだ。それは嫌だったね……。でも、だからといって仲間はずれやいじめが許されるわけではないよね。自分がやられたらどんな気がするだろうか? 相手の○○君は本当につらかっただろうね」
「自分でもわかっていると思うけれど、どんな理由があってもそれはやってはいけないことなんだ。そういうことはもう二度とやってはいけないよ」
「どうしたら許してもらえるか一緒に考えよう」
「こういうことは二度とやらないと心に誓おう。そして、○○君に心から謝ろう」
「でも、正直に話してくれてありがとう。正直に話すのは勇気が要るよね。自分の間違いに気付いて、正直に話してくれてうれしいよ」
「誰でも間違えることはあるよ。でも、それを繰り返してはいけない。本当に反省して二度と同じ過ちをしないことが大事なんだ」
この時、「いじめられる子にも問題がある」というようなことは、決して言わないようにしてください。こういう考え方をしている限り、心からいじめを反省することはできません。
「人をいじめるなんて、あなたはそんな子だったの? あなたにはがっかりしたよ。そんな子はうちの子じゃありません」などと、子どもを見捨てるような言葉も決して言ってはいけません。
学校と連絡を取り合って、学校がつかんでいる事実があれば教えてもらい、家庭でつかんだ事実は伝えます。
相手の子どもや保護者と直接やり取りするのはやめてください。相手に聞きたいことや伝えたいこともあるでしょうが、学校をとおして行いましょう。
というのも、お互い冷静に話すのは難しいからです。相手のちょっとした言葉に過剰に反応して、必要以上に感情的な対立をまねくこともよくあります。
我が子がいじめをしていたという事実は保護者にとっても大きなショックです。でも、だからといっていたずらに混乱したり、その子のすべてを否定的に捉えたりする必要はありません。
子どもはみんな発展途上であり、わかっているようでわかっていないことがたくさんあります。ちょっとしたきっかけや心の隙によって、道を踏み外してしまうこともあるのです。
この機会に保護者が子どもと真剣に向き合い、しっかりした対応をすれば、子どもは本当に大切なことを学ぶことができ、大きく成長することができます。また、この機会に親子の絆を強くし、より一層の信頼関係を築くきっかけにすることもできるのです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。