女の子を育てるうえで気を付けること [教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】女の子を子育て中です。男の子に比べて女の子は育てやすいと言われることがあるのですが、本当にそうなのでしょうか? 女の子を育てるうえで気を付けることがありましたら、教えてください。
相談者・カフェオレンジ さん (小学1年生 女子)
カフェオレンジさん、拝読しました。
ひとくちに女の子と言っても個人差も非常に大きいです。ですから、十把一絡げにしないでその子の個性と資質に応じて育てることが大切です。まずはそれをご理解していただいたうえで、女の子について気を付けてほしいことを挙げたいと思います。
たしかに、一般的に女の子のほうが男の子よりも育てやすいとよく言われます。その理由の一つは、女の子は親の気持ちを読めるということです。男の子は親の気持ちが読めないことが多いので、親がこうしてほしいと思っていることをやってくれないことがよくあります。でも、女の子はこうすれば親が喜ぶということがよくわかるので、そのとおりにやろうとします。
理由の二つ目は、女の子は男の子に比べて自己管理力が高いということです。 男の子は自己管理力が低いので、「やりたくないことでも、やらなければならないことはやる」ということができません。とにかく、自分のやりたいことが最優先で、嫌なことはやらないのです。でも、女の子は少しくらい嫌なことでも、やらなければならないことはきちんとやろうとします。
これらの2つの理由は女の子の脳の特質によるものです。ですから、女の子でも男の子脳の度合いの高い子はこれに当てはまりません。
さて、これらの2つの理由によって女の子は育てやすいと言われているのですが、長所は短所の裏返しでもあり、気を付けなければならないこともこの2つに起因します。
親の気持ちが読めるのはいいのですが、場合によってはこれがいきすぎて、親がはっきり「やって」と言わないことでも、先回りしやろうとします。あるいは、本当は親の願いなのに、それを自分の願いとして受け入れてしまうこともあります。生活習慣的なこまごまとしたことから、進路・進学、夢や人生設計などの面においてもこういうことが起こります。
加えて、母親の多くが女の子を自分の分身のように感じているので、自分が子どもだった時と同じようなことをさせたがるという問題点もあります。自分がやった習い事を娘にもやらせたい、自分が行った同じ学校に行かせたい、というようにです。
あるいは、自分が実現できなかった夢を娘に託すこともあります。自分がやりたかった習い事をやらせたい、自分が行きたかった学校に行かせたい、自分がやりたかった仕事につかせたい、というようにです。
そういう母親の気持ちを読んで、女の子はそれがあたかも初めから自分の願いであったかのように受け入れます。しかも、自己管理力が高いので、「もう嫌。やめたい」などの愚痴も言わずにがんばり続けます。その結果、ストレスが溜まり続け、ある日限界点に達します。燃え尽き症候群のようになって、すべてを投げ出してしまうということが実際に起こるのです。
また、常に親の願いを優先してきた結果、本当に自分がやりたいことがわからなくなります。大きな無力感にとらわれて苦しむことになります。同時に、親に対する猛烈な反抗と拒否が出てきます。
この時、親はなぜ娘がこうなってしまったのかまったく理解できません。 本人が嫌がることを無理にやらせてきたつもりもありませんし、「もう嫌。やめたい」と言われたこともなかったからです。
ということで、女の子は育てやすいという思い込みには気を付けてください。育てやすいということは、イコール親の思いどおりになるということです。親自身が気付かないうちに、子どもをコントロールし、支配し続けているのかもしれません。
母親は娘を自分のコピーにしないでください。親にも自覚がないまま、巧妙に押し付けているのではないかと振り返ってみてください。親がやらせたいことでなく、本人がやりたいことをやれるようにしてあげてください。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
(筆者:親野智可等)