中教審、なぜ「学習内容の重点化」を検討!?

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中央教育審議会の部会が、「学習内容の重点化」を検討課題に上げることになりました。児童生徒に何を学ばせるかは現在、学習指導要領に規定されています。なぜ今、学習内容の重点化なのでしょうか。

この記事のポイント

既に始まる「次期」指導要領の改訂論議

学習内容の重点化を課題に上げたのは、中教審の初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」(学校教育特別部会)です。2023年2月20日、部会の下に設けられた義務教育の在り方ワーキンググループ(WG)・高等学校教育の在り方WGとの合同会議を開催し、義務WGからの論点整理案を了承しました。その中に「学習内容の重点化」が盛り込まれたのです。
授業や教科書のもとになる指導要領は、おおむね10年に1度の頻度で改訂されています。前回の改訂(告示)は2017年3月(小中学校など)から順次、行われました。「次期」改訂は2027年から始まってもおかしくありません。
中教審では文部科学相の諮問を受け、約2年間かけて改訂内容を審議するのが通例です。ただし近年は、諮問前に準備作業を担う会議体を設置するのが通例です。特別部会も、その役割を担っているわけです。

「少なく教え豊かに学ぶ」が世界的な課題

学校教育をめぐって今、世界的な問題になっているのが「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)」です。人工知能(AI)の急速な発達をはじめ、時代の進展に応じて新しく学ぶべき内容がどんどん増える一方で、従来の学習内容がなかなか削減できず、学び切れないほどの学習内容を抱えてしまうことです。
それに対する解決策の一つが、《Less is more》(少なく教え豊かに学ぶ)です。学習内容を「教えるべき内容」「覚えるべき内容」ととらえるのではなく「例」として扱い、学習内容のもとにある「概念」の獲得を重視しようという考えです。そうすれば、どんなに新しい学習内容が出てきても自分で応用して学ぶことができるというわけです。

もう知識の丸覚えは通用しない時代に

実は現行の指導要領でも「何を学ぶか」だけでなく「何ができるようになるか」を重視した改訂が行われました。ただし、「ゆとり教育批判」の再燃を恐れるあまり学習内容の削減が行われず、逆に統計やプログラミング教育など新しい学習内容が追加されたため、カリキュラム・オーバーロードに拍車を掛ける格好になりました。

まとめ & 実践 TIPS

現在は何でも検索すれば知識が得られるとともに、誰も答えを持っていない課題の解決に取り組まなければならない時代を迎えています。もはや知識の丸覚えだけでは、社会で活躍できなくなりつつあります。大人になっても学び続ける必要性は、保護者のかたほど実感していることではないでしょうか。
ますます先行き不透明な時代を生き抜かなければならない子どもたちの教育はどうあるべきか、自分たちの子ども時代の常識にとらわれない議論が求められそうです。

(筆者:渡辺 敦司)

個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会(第3回)・義務教育の在り方ワーキンググループ(第6回)・高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第6回) 合同会議 会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/11/1422470_00036.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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