小学校の「いじめ最多」は本当か‐渡辺敦司‐
文部科学省が発表した2013(平成25)年度の「問題行動調査」(外部のPDFにリンク)では、いじめの件数が全体としては前年度に比べ減ったものの、小学校だけは増加しました。こうした結果を見ると、問題行動が低年齢化しているのかと思ってしまいそうです。実際、「小学校 いじめ最多」といった見出しを見ると、そんな印象を抱いても無理はないでしょう。しかし、これまでの記事でも紹介してきたとおり、調査の数字の読み方には注意が必要です。そして、そうした注意深い読み方が、お子さんの通う学校でのいじめ対策を考えるうえでも大きなキーポイントとなるのです。
調査によると、いじめの件数は小学校で11万8,805件と前年度に比べ1,421件増えましたが、中学校では8,386件減の5万5,248件、特別支援学校では49件減の768件。高校では今回から通信制課程を調査対象に加えましたが、それでも5,235件減の1万1,039件となっています。
ここで注意しなければならないのは、調査結果のグラフを見てもわかるとおり、2012(平成24)年度は数値がどの校種でも2~3倍に跳ね上がっており13(同25)年度はそこからの増減だということ、そして、調査しているのは「発生件数」ではなく「認知件数」であるということです。認知件数というのは、子どもの観察やアンケート調査などをとおして学校が「いじめ」だと認知した件数です。
2012(平成24)年度は大津市の中学生自殺事件(11<同23>年10月)などをきっかけにした社会問題化を受け、各学校で改めて調査が行われるなど、把握が格段に進んだ年です。ささいないじめも含めて「認知」されたということは、その後の解消につながるのなら悪いことではありません。実際、認知件数18万5,860件のうち9万7,203件と半数以上は「アンケート調査など学校の取組により発見」したものだといいます。今回、小学校で件数が増えたのも、認知しようという努力が進んだためと捉えることもできるでしょう。
また「認知件数」といっても、その中身は軽微な冷やかしから危険な行為に至るまで、さまざまです。その点では、「いじめ防止対策推進法」(2013<平成25>年6月公布)に規定する「重大事態」(<1>生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき<2>相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき)の件数が181件だったというのは、件数としては少ないといえども決して無視できない数値です。
また、全国的な数字の増減よりも肝心なのは、お子さんの通う個々の学校で、どれだけいじめ対策(外部のPDFにリンク)が行われているかです。これまでにも紹介したように、早期発見・早期解決も重要ですが、それにも増して重要なのは「未然防止」です。表面的な数字だけに振り回されるのではなく、調査結果や社会問題化をきっかけに、いじめの起きにくい学校づくりを保護者や地域も一緒になって真剣に考える、地道な取り組みを続けることが何よりも大切です。