私立と公立、どう違う? (教育内容 授業時間数詳細)[中学受験]
前回の小3向け記事では、私立中高一貫校(以降「私立」と称す)と公立中高一貫校(以降「公立」と称す)の週当たりの授業時間数についてお話しした。「公立」は、「私立」よりも指導要領に拘束されて授業時間が少ない傾向にあるが、授業時間数をどのように割り振っているかを調べなければ、違いについて述べることはできない。今回の調査では、前回と同様、東京都の「公立」11校と比較するためにできるだけ同じ条件の所在地が東京・共学・進学校・偏差値(首都圏の大手模試の偏差値で63.5~54)の「私立」10校を選んで比較した。
その結果が下に掲げた表である。この表から、以下のことが考えられる。
(1)各教科の週当たりの授業時間数
理・社の授業時間数にはそれほどの差はないが、英・数・国は、数学と国語では25%~30%、英語に至っては40%もの差がある。確かに、指導要領に比べれば「公立」は各科目で授業時間は多くなっているが、「私立」と比べると各段に少なく、これでは「私立」の教育が充実しているといわれても仕方がない。特に英語は大学受験では避けて通れない教科で、受験生・保護者が重視する科目であるのに、40%もの差がついているのは大きすぎる。
(2)週当たりの英数国の授業時間数
英・数・国は大学受験科目として時間をかけて学習すべき科目だが、「私立」は「公立」に比べ31.4%も授業時間が多い。これは、大学受験で大きなハンデとなるだろう。「公立」の週当たりの授業時間数は、指導要領と比べ13.9%程度しか多くないことで「公立」が指導要領に沿っている学校が多いことが分かる。英数国の授業時間数は、「私立」の方が「公立」よりも多く、指導要領と比べても49.7%も多いのだ。
(3)主要5教科の週当たりの授業時間数
週当たり英・数・国の授業時間数を比べると、主要5教科の授業時間数は「私立」と「公立」での差が少なく、理科では「公立」の方が「私立」よりも授業時間数がわずかだが多くなっている。
(4)全教科の週当たりの授業時間数
全教科の授業時間では、「私立」と「公立」の差は、5.5%だけ「私立」が多いだけであった。土曜授業がない、または、隔週の学校が多い中で、指導要領よりも「公立」は12.2%も授業時間数が多いのだ。
(5)週当たりの全教科授業時間数における英・数・国の割合(%)
全教科の中で、英・数・国が占める授業時間数は、「私立」が約49%で「公立」と指導要領が約39%で10%も低い。「私立」が英数国に重点を置いていることと「公立」が指導要領に沿っていることが分かる。
(6)週当たりの全教科授業時間数における主要5教科の割合(%)
週当たりの全教科授業時間数における英・数・国の割合(%)と全く同じ傾向だが、「私立」と「公立」ともに、指導要領との差が少なくなっている。
以上により、全体の授業時間数は私立よりも公立で少なめだが、大学受験におけるデメリットはそれほどでもないといえる。しかし、英・数・国の授業時間数が少ないことは、大学受験で大きなハンデとなりかねない。特に英語は、文系だけでなく理系においても重要な教科であることを考えると、「私立」と「公立」の大きな違いとなっていることと言える。