9割の小・中学生がいじめを経験!? 子どもの心理を専門家が解説
「いじめ追跡調査2010-2012」(国立教育政策研究所)によれば、小学4年生から中学3年生までの6年間で、いじめにあったことがある子どもも、いじめに関わったことがある子どもも、ともに9割に及ぶという。我が子がいじめの被害者にも加害者にもなりうる状況だ。いじめの現状といじめ加害者の心理について、東京学芸大学教育学部准教授でスクールカウンセラーでもある、松尾直博氏に話を伺った。
いじめは特定の学校や問題のある学年だけで起こっているわけではありません。同調査の報告書には、「『いじめられっ子』や『いじめっ子』はほとんど存在せず、多くの児童生徒が入れ替わりながらいじめに巻き込まれている」と示されており、残念ながら子どもたちの間でいじめは、日常的なことになりつつあるといえます。
子どもたちは、どうして「いじめ」をしてしまうのでしょうか。いじめの件数が特に多い小学校高学年から中学校の年代は、自分づくりの途中段階です。自分に対して自信が持てず、「仲間から排除されてしまうかもしれない」と不安な心理状態になりがちです。ここに家庭や習い事などのストレスが加わると、自分とは異なる言動、容姿の友達に対して寛容な気持ちを持てず、仲間はずれにしたり、陰口を言ったりします。
エスカレートすると、クラス内の人間関係を操作するいじめや、自分の力を誇示するいじめによって、クラス内を支配しようとします。特に中学1年生は、さまざまな小学校から子どもたちが集まり、一から人間関係を築かなくてはならないため、自分の居場所づくりのためにトラブルが起きやすいと考えられます。
高校生になると、自分のアイデンティティーが確立してきて、自分とは違うタイプの友達にも寛容になり、苦手な人への対処法もわかってきます。スポーツや勉強、好きな分野で自分をアピールするなど、他の手段で自分の居場所を作れるようになることで、いじめはぐっと減ってくるのです。