私立と公立、どう違う? (教育内容 授業時間数など)[中学受験]

学校の教育内容はわかりづらく、客観的な数字にしなければ評価のしようがない。そこで、評価の基準となるのが大学合格実績だが、その他にも客観的な評価の基準となるものに、授業時間や1クラスあたりの生徒数がある。そこで、私立中高一貫校(以降「私立」と称す)と公立中高一貫校(以降「公立」と称す)の授業時間と1クラス生徒数について調べてみた。調査では、前回と同様、東京都の「公立」11校と比較するためにできるだけ同じ条件で所在地が東京・共学・進学校かつ難易度が同じくらいの「私立」10校を選んだ。

表1の「1週当たりの授業時間数」は、学習指導要領では29時間(1コマ50分)となっているが、「私立」は少ない学校でも33時間で、多い学校は37時間のところもある。「公立」は、30時間と34時間に分かれており、1週当たり34時間(*)が多数派となっている。1週当たり30時間の学校は4校あるが、そのうちの3校は土曜授業がない学校であったことで、土曜日の4時間分がその差分として納得できる。授業時間数34時間の7校の内、5校は毎週または隔週の土曜授業があるが、2校は土曜授業がない。それらの学校では、1コマ45分で7時間授業を行うなどで工夫している。このように「公立」の土曜授業や1コマの授業時間の違いにも意味があることがわかる。「公立」では、学習指導要領と保護者のニーズの両方を尊重して独自の工夫をしているようだ。

表2を見ると、1クラスの生徒数は、「公立」が39.8人で、ほぼすべての学校で学習指導要領どおりの40人となっている。「私立」が36.4人というのは、「公立」よりも10%ほど少ない。30人ないし35人学級が求められている現在において「私立」は保護者のニーズに沿っていると思える。1クラスの生徒数では土曜授業以上に、「公立」は学習指導要領から逸脱できないようだ。土曜授業が無いことは、少なくとも隔週で授業を行ったり、7時間授業を行ったりするなどで工夫できたが、1クラス生徒数は工夫のしようがない。

最終的には、大学合格実績で教育内容を結果から評価するのが適切であろう。「公立」の合格実績分析については翌月以降のコラムで詳しく解説するが、概要としては、2011年には「公立」として最初に開設された白鷗高等学校付属中学校が東大に5人合格を成し遂げ話題になった。2012年には白鷗中だけではなく小石川中等教育学校・両国高等学校付属中学校・桜修館中等教育学校・九段中等教育学校が「公立」として、同じランクの私立に匹敵する合格実績を上げた。「公立」は、「私立」よりも学習指導要領に拘束されて、授業時間が少ない環境にある中では、すばらしい成果だと思う。

このような成果が出るのは、「公立」の受験指導が優れていることはもちろんだが、やはり合格倍率が高いことで学力だけではなく精神的にも優れた生徒が集まっていることだと思われる。「公立」は学費が安いからだけではなく、むしろ、そのように優れた生徒が集まる学校であると考えられており、我が子に6年間過ごさせたい環境として保護者が求めるのだろう。



* 34コマ/週:土曜授業のある学校が月曜日~金曜日の6コマ×5日と土曜日の4コマの授業をする場合、授業コマ数の合計


表1 1週当たりの授業時間数



表2 1クラスあたりの平均生徒数

※表1、2ともに首都圏の公立・私立中高一貫校から、任意の10校を抽出して作成。
小数点以下を四捨五入しているため、合計は100%にならない場合がある。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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