おもしろくて、ためになる! 博物館の歩き方【後編】自由研究活用編
歴史・芸術・民俗・産業・自然科学などに関する貴重な資料が間近で見学できる博物館は、学校で学んだことの理解を深めるのにとても良い施設です。ですから、夏の自由研究にもぴったり! 上手な活用方法について、前回に引き続き、国立科学博物館事業推進部学習企画・調整課の岩崎誠司さんと神島智美さんに聞きました。
「本当にそうなのかな?」展示を疑ってみよう!
博物館に来館すると、展示を見て「なるほど」「すごーい」と、本物の迫力に圧倒されるお子さまが多いと思います。でも、それらの展示や資料を「不思議だな」「本当にそうなのかな?」という観点で見学するともっと面白いはずです。実際に、博物館で紹介されていた説が新発見によって改められることはよくあります。以前、国立科学博物館に「展示している恐竜の復元方法が違うのでは?」と疑問をもったお客さまがいらっしゃいました。標本の前足を外して関節面を詳しく調べてみたところ、以前に考えられていた歩き方は間違っていたことがわかったのです。また、ふとした疑問が研究につながり、これまでの学説を覆すことだってあるかもしれません。たとえば、ある研究者は、始祖鳥から羽毛をとったら肉食恐竜にそっくりということに気がつき、鳥は肉食恐竜から進化したのではないかと考えたのです。それまでは、恐竜は変温動物で動きが遅い動物と考えられていたのが、鳥と同様の温血動物で活発に動いていたと考えられるようになりました。恐竜は完全には絶滅していなくて、鳥となって進化を続けているのです。
地球館・ティラノサウルス化石標本
ぜひ、博物館ではお子さまの疑問や気付きを大切にしてあげてほしいですね。それらは自由研究のテーマにもなりますし、将来進路を考えるうえでのきっかけになるかもしれません。国立科学博物館に所属している研究者の中には、子ども時代に疑問に思ったことが、現在の研究の根底にあるという者も多いのです。
博物館は夏休みの自由研究にぴったり!
博物館は《立体的な図鑑》です。実際に自分の目で展示物を見ることができるため、本やインターネットでは感じなかったさまざまな気付きがあるでしょう。自由研究のテーマ探しにも向いていると言えます。もちろんテーマが決まっていて、それを深めたい人にもぜひ活用してほしいですね。
●テーマ探しからしたい場合
気になるフロアを歩いてみてください。歩いていく中で、今まで気付かなかった疑問や興味を持つはずです。そうしたひっかかりは、自由研究のテーマを決める際のヒントになるでしょう。また、ガイドツアーに参加してみるのもおすすめです。国立科学博物館では、各館をダイジェストで紹介し、展示の裏話もご紹介しますので、なにかきっかけを得られるかもしれません。
●テーマが決まっている場合
「私の研究」では、研究者がどんなテーマを研究しているかわかりやすくまとめられています。
見たいものを事前に調べておくと良いでしょう。国立科学博物館のホームページでは、各階にどんな展示があるかも紹介しているので、チェックしておくと効率的に見学できます。また、常設展示データベースでは、何が展示してあるか検索できるので活用してください。たとえば「岩手県」と入力すれば、岩手県に関わる資料が検索できます。
展示を見ていて疑問が出た場合は、博物館のスタッフに質問してみてください。国立科学博物館では、「ディスカバリーポケット」という場所があり、ボランティアが展示に関する質問に答えてくれます。また、土日祝には、科博の研究者が交代で、展示や研究内容などについての解説や質疑応答などを行う 「ディスカバリートーク」というプログラムを実施しています。こうした機会も活用してほしいですね。また、自由研究のまとめ方やテーマは、地球館B3階にある「私の研究」コーナーを参考にすると良いでしょう。第一線の研究者たちが、どんな研究をしているかがわかり、そして研究テーマのまとめ方の参考にもなるはずですよ。
イベントに参加してより深められる
「かはく・たんけん教室」では、教育ボランティアによる実験・工作イベントを行っています。
多くの博物館では、楽しみながら学習できるイベントを多数開催しています。興味があるものに参加してみると、自由研究のアイデアを得られるかもしれません。国立科学博物館では、夏休みには「サイエンススクエア」という、実験・観察・工作を中心としたさまざまな企画を開催予定ですし、夏休み以外にも、「かはく・たんけん教室」という観察や実験・工作イベントなどを行っています。全国の博物館でも同様のイベントを開催しているはずですので、ぜひチェックしてください。
また、全国の博物館(科学博物館・科学館・動物園・水族館・プラネタリウムなど)を10回利用(同じ館を10回訪れてもOK)し、学習記録と感想文を提出した小中学生に「博物館の達人認定証」を贈呈するといった企画を実施していますので、家族旅行のついでに各地の博物館を訪れるというのも楽しいのではないでしょうか。
●取材協力/国立科学博物館