おもしろくて、ためになる! 博物館の歩き方【前編】見学編
博物館は、「学校で見学に行く場所」というイメージを持つかたも多いと思いますが、実は親子でも気軽に楽しめる施設です。今回は、親子で博物館を楽しむためのヒントを、国立科学博物館事業推進部学習企画・調整課の岩崎誠司さんと神島智美さんに伺いました。
博物館は《立体的な図鑑》
博物館とは、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学などに関する資料を集め、整理・展示し、その資料に関する調査研究を行う施設です。全国には、さまざまな種類の博物館があります。
国立科学博物館はその中でも最も歴史のある博物館の一つであり、国立最大級の総合科学博物館です。どのような博物館か、少しご紹介しましょう。国立科学博物館は、地球館と日本館の2つの建物で構成されています。地球館では、地球の誕生から現在までの歴史、世界各地の自然についての展示を見ることができます。日本館では、日本列島の自然、生い立ち、生き物などがよくわかるように展示しています。そのため、館内を歩けば、ヒマラヤから深海まで世界各地を旅する気分が味わえるだけでなく、地球誕生から現在までの46億年という時間も旅することができます。
また、国立科学博物館では自然史および科学技術史研究に関する400万点を超える貴重なコレクションを保管しており、展示室では動物の標本や恐竜の化石などの貴重な資料を見ることができます。教科書や図鑑でしか見たことがない世界が目の前に広がるため、博物館は《立体的な図鑑》と言えるでしょう。
地球館・大地を駆ける生命
日本館・縄文人精巧復元模型
年齢別・博物館の楽しみ方
博物館の展示室内はとても広く、展示内容も豊富です。たとえば、国立科学博物館では、お客さまが自由に見て回れるよう、順路を設けていませんが、どこから見学しようか迷ってしまいますよね。そんなかたのために、お子さまの年齢別に楽しみ方をご紹介します。
●幼児におすすめの楽しみ方
世界の多様さ・不思議さをぜひ、博物館で楽しんでほしいですね。普段の生活や絵本の中で見たことのある植物や動物を探したり、お子さまの好きな色や形に注目したりして展示物を見るのが楽しいでしょう。ただ、暗い場所や動物の剥製がたくさんある場所は、怖がってしまうかもしれません。まずは、お子さまの興味のあるところだけ回ると良いですね。
学習シートは、ビギナー、ミドル、アドバンストの3つのコースが用意されています。
●小学生におすすめの楽しみ方
すべての展示を見るには時間がかかります。来館される前にどのエリアを回るか、お子さまと話し合ってはいかがでしょうか。国立科学博物館では、ホームページでおすすめコースを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。学びながら見学してみたいという高学年のお子さまは、学習シートなどを使ってみると良いでしょう。
●中学生におすすめの楽しみ方
学習シートはもちろんのこと、学校での学びを確認する場として活用していただけるとうれしいですね。博物館に来ると、教科書で学んだ断片的な情報がつながっていることが理解できるはずです。たとえば、熱帯雨林の生物というコーナーでは、地理で学んだ気候と、生物で学んだ生き物、2つの分野のことを同時に紹介しているので、理解が今まで以上に深まるはずです。また、学校での学習に関係する展示を探したいという場合は、常設展示データベースで検索できますのでぜひ活用してください。
保護者の関わり方
館内を見学する際には、お子さまの興味を大切にしてほしいですね。といっても、お子さま任せに見学するのではなく、お子さまの気付きや興味・関心を受け止めて、ぜひ共感してあげてください。たとえば、小さなお子さまが「お母さん、この恐竜大きいね」と言ったら、「そうだね、とっても大きいね」とお子さまの気持ちを受け止めて、共感してあげるのです。そのうえで、「卵はどれくらいの大きさなのかな?」とお子さまの気付きを次の新たな興味や関心へとつなげるように声がけしていただけるとうれしいですね。
ときには、お子さまが「どうして恐竜はこんなに大きいの?」など、疑問を持つことがあるでしょう。そうした疑問に正しく答えられなくて困ってしまうということもあるかもしれません。そんなときは、正解を言おうと思わなくて良いと思います。「わたしは○○だと思うよ」と言えば、お子さまが「いや僕は○○だと思うよ」と言ってくれるかもしれませんし、会話が盛り上がっていくはずです。まずは、正しいかどうかよりも、家庭内でその話題で盛り上がってくれれば、博物館としてはうれしいですね。本当に気になることであれば、親子で調べたり、お子さまが大きくなれば自分で調べたりするようになってくれると思います。
博物館では、お子さまの感性を刺激し、新たな興味を引き出す工夫がされていますので、ぜひ親子で来ていただきたいですね。
次回は、「自由研究活用編」をお送りします。
●取材協力/国立科学博物館