ひと味違う!動物園の楽しみ方
動物園では、ゾウやキリン、パンダなど次々と動物を見て回るだけでも楽しいですが、お子さまともっと楽しめる方法があるのではないでしょうか。そこで、今回は、上野動物園教育普及係主任(学芸員)の井内岳志さんに、ひと味違う動物園の楽しみ方を紹介してもらいました。
すべてを見ようとせずに、好きな動物だけでOK
動物園に行ったら、ぜひお子さまの好きな動物から見学してほしいと思っています。保護者としては、「せっかく来たから、すべての動物を見せてあげたい」と考えるかもしれませんが、次から次へと急ぎ足で見学していては、お子さまが動物の生態について考えたり、疑問を持ったりすることはなかなか難しいですよ。1日に全部ではなく「ゾウとサルだけ」「動物と触れあうエリアだけ」などお子さまの好きなテーマやエリアに絞って見学することをおすすめします。「来月また来るから、今日は○○をたっぷり見ようか」と声をかけても良いかもしれません。多くの動物園のホームページでは飼育されている動物の種類や、「ゴリラの○○が出産した」といった動物園の最新ニュースもチェックできます。お子さまと一緒に見たい動物やエリアを事前に決めておくと、当日はより盛り上がると思います。
グルーミングしているニホンザル
動物園に着いたら、一つの動物の前で最低でも3分間、観察してみてください。たとえば、ニホンザルなど何頭もの個体を一緒に飼っている場合、よく見ていると、どのサルとどのサルの仲が良いかや、どのサルが強そうなのかなどがわかってきます。動物同士の関係に注目して観察してみるとおもしろいですよ。小学校高学年以上のお子さまであれば、そうしたサルの表情を双眼鏡で観察すると、より楽しめるはずです。また、双眼鏡を使えば、キリンやゾウなどの背の高い動物のまつげや舌がどうなっているかなど、動物の細部をじっくり見ることができます。
動いているパンダを見たいなら、朝イチに!
パンダが食事をしている時は前足や歯に注目!
上野動物園に行ったら、パンダを見るのを楽しみにしているお子さまも多いと思います。しかし、「せっかく行ったのに寝ていた」という声を聞くことがあります。そんなかたには、ぜひ開園直後の入園をおすすめします。
パンダは、開園後に寝室から運動場へ移動します。そして、自分のテリトリーに異常がないか、運動場の中をパトロールする習性があるのです。その後、運動場に置いてある大好きなササを食べ始めます。ですから、開園直後に行けば、動いているところか、エサを食べているところを見ることができるはず。キリンやカバなども同様の習性があるため、朝一番に行くと活動シーンが見られます。
パンダを見るのにもう一つおすすめの時間帯は、閉園間際です。運動場から寝室に移動させるため、室内にエサを置いています。パンダはその日の最後の食事を楽しみにしているので、良く動いている姿が観察できると思います。また、パンダは標高の高い所に住む生き物なので、気温が25度以上になると室内の運動場で過ごしています。室内の運動場だと面積が限られているのでダイナミックな動きは期待できません。パンダの動いているところを見たい場合は25度以下の涼しい時が良いですね。
パンダの食事を見る時は、前足の使い方や歯を観察してみてください。あの堅い竹をどの歯で割るのか、どうやって竹を持っているのかなど、パンダならではの特徴が良くわかります。ヒグマやツキノワグマと比べてみると、新たな発見があるかもしれません。
お子さまと来園される場合は休日が多いと思うので、どうしても混雑してしまう日が多いのですが、ゴールデンウイークよりは夏休みのほうが来園者数は少ないです。混雑を避けるテクニックをいくつかご紹介します。
・県民の日を狙う。
(○○県民の日は、小学校や幼稚園が休みになることが多い)
※県民の日(休日)を制定していない地域もある
・開園直後や閉園間際に来る。
・天気の悪い日を狙う。
(上野動物園の最多入場者数は、今年8万人[GWのみどりの日]だったのに対し、昨年、首都圏が大雪の日は600人だった。雨や雪の日ならではの動物の姿も見られる)
・冬の動物園を積極的に利用する。
(12~2月は一年で最も入園者の少ないシーズンだが、暑さに弱いジャイアントパンダやホッキョクグマは元気いっぱい)
自由研究のネタがいっぱい!
エサを食べるキリンの歯に注目してみよう
何回か動物園に行ったことがあるお子さまにおすすめなのが、一つテーマを決めていろいろな動物を比較しながら観察する回り方です。たとえば、動物の「口」に注目して観察してみると、草食動物のヤギやキリンには前歯がないですが、同じ草食動物の仲間でもウマやバクには上の歯があることがわかります。それらを写真で撮影したり記録したりするだけでも、分類学の研究になるんです。自由研究にもなりますし、お子さまと「どうしてかな?」と話し合いながら見学すればもっと盛り上がるはず。お子さまとぜひ、チャレンジしてほしいですね。
【こんなテーマで観察してみよう!】
・動物の足に注目
・動物の糞(ふん)に注目
・動物の毛に注目