子どもがメイクをしたがる[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
小6の長女が、友だちの影響でおしゃれに興味を持ち始めました。洋服、靴、バッグへの興味から始まって、最近はメイクなどの化粧、ネイルやペディキュアもしたがります。
どこまで許容したらいいでしょうか?一切禁止したほうがいいのでしょうか?
カタコリびと さん(小6女子)
【親野先生のアドバイス】
拝読しました。
これはなかなか難しい問題ですね。
化粧に興味を持つのは、ある意味、成長の証でもありますが、親として心配になるのもまた当然です。
ただ、心配のあまり、子どもの気持ちを無視して「一切禁止」と押しつけても、うまくいかないでしょう。
子どもは「親に言ってもムダだ」と思うようになり、隠れてするようになる可能性が高いといえます。
この年代では、親よりも友だちとの関係を重視しますので、なおさらです。
それに、地域、学校、集団によって「相場」というものもあります。
何事についてもそうですが、化粧についても、子どもを取り巻く環境の相場というものがあるのです。
それとあまりにもかけ離れてしまうと、よほど強い子でない限りつらくなります。
親がその相場を知らないまま、「ウチはウチ。ダメなものはダメ」と押しつけてもうまくいきません。
ですから、まずは、おしゃれ、化粧、メイクなどについての子どもの本音を共感的に聞いてあげることが大切です。
「だってみんなやってるもん。自分だけやらないなんてムリ」「おしゃれして、かわいくなりたい。きれいになりたい」「目が小さいから大きく見せたい」など、本音を話せるようにしてあげてください。
そして、「そうなんだ。みんなやってるんだ」「かわいくなりたいっていう気持ち、わかるよ。女の子だものね」など、共感的に聞いてあげましょう。
決して上から目線で一方的に話すことなく、一人の人間同士としてうなずきながら、横から目線で聞くようにしてください。
次に、親も子どもに伝えたいことを話します。
例えば次のようなことです。
・化粧品には有害な化学物質が含まれていることもある。子どもの肌は弱くて敏感なので、それらを吸収しやすい。大人よりもかぶれやすい
・特に目の周りや唇などで皮膚のトラブルが起きやすい
・子どものうちから化粧をしていると、アレルギーを発症するリスクが高まる
・ハイヒールは成長途中の子どもの足を変形させる可能性がある
・子どものうちから先の細い靴を履いていると外反母趾になりやすい
・露出度の高い服は性犯罪を誘発するリスクが高まる
はじめに親が子どもの話をたっぷり共感的に聞いてあげていると、子どもも親の話に耳を傾けてくれる可能性が高まります。
このように共感的に聞き合う時間を大切にすることで、お互いの信頼関係も深まります。
そして、次にルールを決めます。
これについても、親が一方的に上から目線で押しつけるのではなく、お互いの話を聞き合いながら着地点を見つけていきます。
例えば、次のようなことが考えられます。
・化粧品は親と一緒に買う、または事前に親と相談してから買う
・化粧品について十分知識のある店員さんがいる店で買い、子どもの肌に負担にならない物を選んでもらう
・健康に害のある物は使わない
・学校には化粧をしていかない
・日曜日だけにする
・親と出かけるときだけにする
・化粧をした場合、外出する前に親に見てもらう
など。
そして、決めたことを忘れないように、ホワイトボードなどに明文化しておくといいでしょう。
こういった一連の手順は、スマホやゲームのルールを決めるときと基本的には同じですので、下記もご参考にしてください。
スマホのライン依存症[教えて!親野先生]
https://benesse.jp/kyouiku/201411/20141125-3.html
さらに、これらのことと同時に、子どもがおしゃれ、化粧、メイクなどに興味を持ったのを1つのきっかけとしてとらえ、本当の美しさとは何かということを家族で一緒に考えてみるといいと思います。
本当の美しさのためには、やはり内面の充実も大事です。
意地悪な人は意地悪な顔になりますし、優しい人は優しい顔になります。
内面の知性や感性は外面の顔や振る舞いに表れますので、知性を高め感性を磨くことも必要です。
体が健康であることも必要です。
ジャンクフードや甘い物ばかり食べていては、おしゃれ、化粧、メイクに精を出しても美しくはなれません。
体によい食べ物を食べ、適度な運動を心がけることが大切です。
常に体を清潔に保つことや基本的なスキンケアのスキルを身につけることも必要です。
紫外線対策やニキビ対策も大切になってくるでしょう。
こういったことを、家族で一緒に考えてみてください。
必要な場合には親が啓発してあげるのもいいでしょう。
もちろん、上から目線の一方的なお説教にならないように気をつけながら。
そうすれば、これは子どもの成長にとって、とてもよい機会になります。
私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。