スマホ時代のSNS事情に注意 一瞬の失敗で仲間はずれに
小学校高学年頃から、スマホを持ち始めるお子さまが増えています。「×年生になったら」「中学生になったら」と約束をしている保護者のかたも多いのではないでしょうか? スマホは便利なツールである反面、それによって起こるトラブルや事件が年々増加しています。
特に女子同士のグループチャットでは、言葉の取りちがいで仲間外れにされてしまったり、いじめに発展したりする事例が相次いで起きています。今回は実際にあったケースを例に、お子さまがトラブルに巻き込まれないための心構えをご紹介します。これからスマホを持たせようとご検討中の保護者のかたや、既にスマホを持たせているというかたは、ぜひ参考にしてみてください。
たった一言で仲間外れに? 顔が見えないグループチャットの危険性とは
女子小学生のA子さんは仲のよいクラスメート数人とSNSのグループチャットをしていました。その日も普段どおり何げない会話をしていましたが、ふと思いつき、グループ内にいるB子さんにもらったぬいぐるみの写真を投稿したA子さん。そのぬいぐるみをとても気に入っていたA子さんは続けて、「B子にもらった~」「このぬいぐるみ、かわいくない」という言葉を送信しました。
このメッセージを最後にみんなの投稿はピタリと止まり、それ以降誰も返事をしてくれませんでした。そしてA子さんを除いた『A子以外のグルチャ』というグループが作られ、A子さんはその日から仲間外れにされてしまいます。誰も口を聞いてくれなくなり、『A子以外のグルチャ』では、「A子は調子に乗っている」などの悪口が書き込まれるようになりました。その後、A子さんは不登校になってしまうほどに事態は悪化します。
なぜこのような事になってしまったのでしょうか? 引き金になったのは、A子さんの「このぬいぐるみかわいくない」という、たったその一言でした。この時みんなを怒らせてしまった理由はなんだったのでしょうか? 考えられる原因はいくつかあります。
● 「このぬいぐるみ、かわいくない」に「?」マークをつけ忘れしまったために、B子に対して悪口を言ったと思われた
● ぬいぐるみのことをみんなに自慢していると思われた
● 別の話をしていたのに勝手に話題を変えたため、「KY(空気が読めない人)」だと思われた
A子さんに悪気は一切ありませんでしたが、これらのほんのささいな行き違いが仲間外れのきっかけになってしまったのです。あの時「?」をちゃんとつけていれば、そもそもぬいぐるみの話をしなければ、このようなことにはならなかったかもしれません。
顔の見えない文字だけのコミュニケーションは、大人でさえ誤解を招きやすいものです。ましてや感情表現や言葉を使いこなすことに長けていない小学生間では、なおさらでしょう。
大人からすれば、なぜこのようなことで?と思うようなことでも、子どもたちにとっては深刻に受け取ってしまう場合があるのです。短い言葉でやりとりをするのが一般的なグループチャットにおいては特に、このようなトラブルがあちこちで起きているのが実情です。
今回のケースを参考に、もしお子さまがメッセンジャーサービスを始めようとした際は「文字だけで気持ちを伝えるのは想像以上に難しい」ということを、しっかり伝えるようにしましょう。「人と自分の感覚は違うということ」「相手の気持ちを尊重すること」……SNSを使う際にはそのようなコミュニケーションスキルが、普段以上に求められているのです。
グループチャット内で起きやすい「同調圧力」。食い止める方法とは?
先ほどのグループチャットで仲間外れにされてしまったA子さんですが、グループの全員がA子さんのことを怒っていたわけではありません。A子さんのぬいぐるみの投稿に悪気がないことを知っていた友人もいました。しかし、「仲間はずしなんてやめよう」と誰も言い出すことができませんでした。なぜならこの時、グループの中には「同調圧力」というものがかかっていたからです。
同調圧力とは、同じ立場に置かれている者同士が≪人と違うことをしてはいけない≫と感じてしまう心理的なプレッシャーのことです。
特にグループチャットにおいては「みんなに合わせないと」「違うことを言ったら今度は自分が仲間外れにされる」という意識が強く働きます。それほど、子どもたちにとってグループチャットはなくてはならない居場所であり、つながっていたい集団なのかもしれません。そのため、今回のケースのように一度A子さんを仲間外れにしてしまった以上、もう誰も「やめよう」とは言えなかったのです。
このように、本来はコミュニケーションツールとして便利なはずのSNSが、実は子どもたちに大きなプレッシャーを与え、抜け出せない環境を作り出している実態があります。今後お子さまがスマホを持ち始める際には、このようなトラブルに関わってしまう可能性が十分あることを、親子で確認しておきましょう。
そして万が一トラブルが起きた場合に、お子さまができる『ワンアクション』は何か?を考えおけるとよいでしょう。ワンアクションとはいじめを止めるだけでなく、影で声をかけたり、相談したり、その子ができることです。周りで見ている人の中から「やめよう、いじめはよくないよ」という声が少しでも上がれば、同調圧力を抑止する力にもなります。
スマホのトラブルを回避するために、保護者ができることとは
この一連のグループチャットのトラブルは、最終的にA子さんの保護者が異変に気づき、手助けすることで解決します。A子さんは誤解を招いたことをグループのみんなに対面で直接あやまり、以前のような仲良しのグループに戻ることができました。
子どもたちを取り巻く人間関係は、大人が想像しているよりも複雑です。また、子どもたちは保護者には弱い部分を見せないように隠そうとするため、保護者はなかなか気がつきにくいかもしれません。保護者が気づいたときには、かなりこじれてしまっていた、という場合も少なくないのです。
そこで、お子さまの異変に早く気がつけるよう、スマホを使用するのはリビングに限定する、子ども部屋に持ち込ませない、使う時間帯を決めておく(スクリーンタイムなどを利用するなど、システム的に利用時間の制限をする)、どんなアプリを使っているのかを把握しておく(年齢制限を守る※)、といったルールをぜひ取り入れるようにしてください。
これからスマホを持つ予定のお子さまは、まずは家族間だけでSNSを試してみるのもよいでしょう。友人と連絡先を交換する場合も、グループチャットはやめて最初は個別のやりとりに限定しておくなど、少し距離を置きながら始めるのもよいです。
そして何より大切なのは、お子さまがトラブルに巻き込まれてしまったとき、保護者が一番の相談役になることです。子どもの悩みにしっかり寄り添い、正しいモラルやマナーを伝え、スマホやSNSとの距離の取り方を一緒に考えてやれるとよいでしょう。
※2019年以降、iPhone版(iOS版)LINEアプリの推奨年齢は12歳以上に引き上げられています。
参照:
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/24/news114.html
まとめ & 実践 TIPS
これからスマホを持たせようとお考えの保護者のかた、また既に持たせているというかたは、スマホが原因で起こり得るトラブルについて、一度親子でよく話し合っておきましょう。ほんのささいな行き違いがきっかけでこじれてしまう場合もあるということを、お子さまに具体的に伝えられるとよいですね。
そしてスマホやネットの使用について親子で一緒にルールを作っておくようにしましょう。「困った時はすぐ相談!」と常に声をかけておくことも大切です。