子どもが着替えを嫌がる……服を着せるのに時間がかかる理由と対処法

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子どもが着替えを嫌がる…服を着せるのに時間がかかる理由と対処法

幼児期のお子さまの着替えにお悩みのかたも多いのではないでしょうか。「着替えたくない!」と嫌がり、朝の支度がなかなか進まないとうこともありますよね。着替えを嫌がる子どもの心理と対処法について、保育士経験もお持ちの大阪教育大学の小崎 恭弘教授にうかがいました。

この記事のポイント

子どもが着替えを嫌がる理由

子どもが着替えを嫌がる理由

着替えは、清潔を保ち、環境や場に応じた服装を選ぶための大切な行為です。気持ちのメリハリもつき、自立にもつながるものですよね。とはいえ、嫌がる子どもが多いのには次のような理由が考えられます。

温度などの環境要因

「寒いから脱ぎたくない」ということもあれば「暑いから着たくない」ということもあるでしょう。部屋の温度を理由に着替えがおっくうになってしまうのは、大人でもよくあることですよね。

面倒くさい、気持ちが乗らないなどの心理要因

気持ちの問題で着替えを嫌がることも少なくありません。たとえば、遊びに夢中で中断したくない、着たくない服を着るように言われて嫌、今着ている服を気に入っていて脱ぎたくないといったことが考えられます。着替えるプロセスをイメージしてしまうと「めんどくさい」と感じることもあるでしょう。

うまく着替えられないなどのスキル要因

着替えには、細かな動作や力の調整が必要です。大人には大したことではないことでも、子どもには難しいこともあります。ボタンがうまく留められない、ズボンがひっかかってうまく上にあげられないといったことが原因で、着替えたくないということも案外多いものです。

着替える理由がわからない認識不足要因

「なぜ着替えなきゃいけないのかわからない」 という理解不足が影響することもあります。大人でも休日にパジャマのままで過ごすことがあるもの。子どもだったらなおさらですよね。着替えの必要性を感じられないということが、根本原因になっていることもあるでしょう。

着替えは自立への第一歩!着替えを嫌がる理由に応じたサポート法とその前に考えたいこと

着替えは自立への第一歩!着替えを嫌がる理由に応じたサポート法とその前に考えたいこと

保護者のかたは、着替えを嫌がっている理由別にどう対処したらいいか知りたいと思われているのではないでしょうか。お子さまに真剣に向き合っているからこそ、「なんとかしたい」と一生懸命になられているのだと思います。

でも、その前に1つ大切なことをお伝えします。何度かお子さまが着替えを嫌がったことから「着替え=子どもにとって嫌なもの」と思ってしまっていませんか?

「嫌なことだけどやらなきゃいけないよ」というスタンスでいると、保護者もお子さまも気持ちがあがらないですよね。「着替えは気持ちいいこと」とプラスの前提に立って伝える視点が大切です。

着替えのイメージをプラスに

お子さまが着替えをプラスにとらえられるように、着替えのメリットを伝えましょう。たとえば、着替えたお子さまに「(新しい服を着ると)気持ちいいね」「(お気に入りの服を着た姿が)かっこいいね」「着替えが早くできたから、いっぱい遊べるね」と声をかけてみてください。お子さまもうれしくなって、「面倒」「イヤ」と思っていた着替えのイメージがプラスに変わるでしょう。

着替えを前向きにとらえられると、自分で選んだり挑戦したりする気持ちが育ちます。こうした経験が、自立につながっていくのです。

理由別サポートのアイデア

着替えを嫌がるお子さまのサポートに「これをやっておけば大丈夫」という唯一の正解はありません。なぜ嫌なのかをお子さまが伝えてくればそれに応じた対応を、そうでなければ、想像力を働かせてサポートしてあげてください。

寒いから着替えるのがイヤな場合
部屋をあたためたり、着替える服をあたためておいてあげましょう。

今着ているものを気に入っていて脱ぎたくない場合や、着たくないものを着るように言われてイヤな場合
お子さまのお気に入りの服を用意してあげてください。3、4歳のころは、色やキャラクターなどにこだわりが強いこともあるものです。「このキャラクターじゃなきゃイヤ」「この色が着たい」といったこだわりには、乗ってしまうのが手。大人から見たら「ちょっと変」と思ったとしても、お子さまがご機嫌でいられることが何より大切です。また、「これとこれ、どっち着る?」「タンスの中から、着たい服持ってきて」などお子さまに選んでもらうことで、主体性を刺激してあげるのもいいですね。

不器用で着替えるのに時間がかかってイヤな場合
お子さまが着やすい服を準備してあげましょう。ボタンが少なく、伸びがよくてお子さまがあげたり、広げたりしやすいものがおすすめです。

感覚が過敏な場合
素材や肌触りが好みに合うものを準備してあげましょう。「チクチクしてイヤ」「しめつけられる感じがしてイヤ」ということもあるものです。素材やサイズ、デザインを見直してみてください。

お子さまが着替えることができたら「自分でできたね」「似合うよ」「気持ちよくなったね」といった声かけを忘れずに。満足感を感じられることで、次の着替えへのモチベーションがわいてくるかもしれません。

どんなに手を尽くしても着替えない……そんな時はどうすればいい?

どんなに手を尽くしても着替えない……そんな時はどうすればいい?

考えられる対応は全てしたのに、どうしても着替えない。そんな日もありますよね。つい、イライラしてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、無理に子ども1人でやらせようとせず、大人が手伝って着替えさせてあげてください。忙しいときにはパートナーに頼んでももちろん大丈夫です。

何より大切なのは、お子さまのそばにいる大人がご機嫌でいることです。そのほうがお子さまとの信頼関係が築けます。「手伝ったら、自分でできなくなるのでは?」と心配になるかもしれませんが、自立への心配はもう少し先で大丈夫。「自分でやらせたい」とあれこれ試行錯誤している時点で、保護者のかたはしっかりお子さまの成長を見守れているはずです。 無理せず、時には手を貸しながら進めていきましょう。

時には待ってあげることも大切

大人にとって簡単な動作でも、子どもにとってはとても難しいこともあります。手先の器用さがまだ十分でないため、ボタンを留めるのに何分もかかることもあるでしょう。

もどかしく感じることもあるかもしれませんが、お子さまが「自分でやりたい」と思っているなら、時間がある時は根気よく待ってあげましょう。「できた」という満足感を味わうことが、次のチャレンジへの意欲につながります。もちろん、時間がない時は保護者がさっと手伝ってあげればOKです。

途中まで手伝うのも効果的

「全部自分でやらせる」か「全部大人がやる」かと0か100で考えていませんか。途中まで手伝うというのも一つの方法です。

ズボンがうまく上げられないなら、ひざまで上げてあげる。
ボタンが留められないなら、最初のひとつを手伝ってあげる。

こうした小さなサポートでも、お子さまは「自分でできた!」という満足感を得られます。たとえ自分では2割しかできなくても、成長の一歩。「上手にできたね」と声をかけてあげましょう。

「自分で着替えさせなきゃ」「時間どおりに着替えを終えなきゃ」と考えるのは大切ですが、そこにこだわりすぎると保護者のかたも苦しくなってしまいます。「今日は気分が乗らない日なのかな」と受け止めたり、「今日は全部やってあげよう」と柔軟に対応できるといいですね。

子どもの生活はトレーニングではない

子どもの生活はトレーニングではない

着替えは生活の一部です。食事や睡眠、トイレと同じで、当たり前に行うものです。大人はつい「やらせなきゃ」「何度も繰り返し取り組ませなきゃ」とトレーニングのような意識を持ってしまうので要注意。子どもは「着替えができるように練習しなきゃ」なんて思っていません。

また、子どもは大人が考える理屈通りには動かなくて当たり前です。効率や合理性を求める大人の文化から一番遠いところにあるため、ときにイライラしたり、悩まされたりしてしまいますが、それこそが子どもの、子育ての尊さでもあります。

早くできるようにサポートするのもいいですが、時間があるときは、うまくいかないことや、思いもよらない子どもの言動をゆったりと受け止めるのもいいですね。もちろん、子どもを着替えさせるなら、大人もいつまでもパジャマじゃダメですよ。

まとめ & 実践 TIPS

「着替え=嫌なもの」という前提に立っていないか、着替えもトレーニングととらえていないか、など思わずドキッとされたかたもいらっしゃるかもしれません。嫌なこと、できないことをできるようにする訓練ではなく、楽しく快適になるための着替えをお子さまと楽しんで進めていけるといいですね。

編集協力/岡聡子、Cue`s inc.

プロフィール


小崎 恭弘

大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育コース(保育学)教授

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。元大阪教育大学附属天王寺小学校長。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリング・ジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信を行う。2014年に出版した『男の子の本当に響く叱り方・ほめ方』(すばる舎)が子育て関連本で大ヒット。そのほかにも『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパルール』(合同出版)など、著書多数。新聞等で連載を執筆。

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