図形問題で、すぐに助け船を求める子に、ヒントを出してよいものでしょうか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

図形をいろいろな方向からとらえるのが苦手で、すぐに助け船を求めてきます。そのような時にどうヒントを出してよいのか、大人の対処を教えてください。

相談者:小4男子(大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま



【回答】

ヒントはタイミングや出し方を考えながら出していく


■ヒントはなぜ出すのか?

各単元の考え方や解き方を勉強するために例題を解き、それらを定着させるために類題や練習問題をくり返し演習します。どんどん解いて、わからなければ解答・解説を読んで理解するというのが算数や数学の勉強方法です。ということで、解けない場合は解説を読んで理解すればよいのですが、もう一歩で解けそうな時はやはりヒントが欲しいものです。自力で答えにたどり着ければ、たとえヒントをもらったとしても、解答を見て理解するよりも勉強になるし達成感も得られると思います。次の一手がわからないが、解答・解説を見るにはまだ早いという時、適切なヒントは学習意欲を向上させ実力も伸ばす妙薬と言えるでしょう。

しかしその効果は、ヒントを出すタイミングや出し方によって大きく変わります。お子さまの様子や性格も考えながら、適切なヒントを出したいものです。

■ヒントはいつ出すか?

ヒントはいつ出すべきでしょうか? ヒントを欲しがった時にすぐ出すべきなのか? 黙って考えているうちは放っておくべきなのか? ヒントを出すタイミングはなかなか難しいもので、その子の年齢や性格、あるいは学習の習熟度にもよると思います。

たとえば、時間がタイトになる6年生では、一つひとつの問題をじっくり解く時間はなくなってくるでしょう。ある程度考えてわからなければ、すぐに解答・解説を見たりヒントをもらったりすべきです。しかし、3~5年生であれば、一つの問題をじっくり考えるのはよいことです。粘り強く考えられることは一つの能力だと思いますから、ヒントをむやみに出すべきではないかもしれません。
ヒントを出す目安としては、その子なりに考えたがどうしても解法が見つからない時に、解法の糸口を与えるというのがうまいヒントの出し方だと思います。のどの渇きを我慢したあとで飲む水のおいしさは、何ものにも代え難いのと同じ。がんばって考えているうちは、まだ余裕があります。もちろんオーバーヒートしてしまっても困りますから、思考が止まる前にスッとタイミングよく与えるのがいちばんありがたいヒントの出し方かもしれません。逆に、あまり考えていない時に出すヒントは、結果的に学習者の勉強を妨げている可能性さえあります。

■ヒントはどのように出すか?

次は、どのようにヒントを出すべきかという問題です。結論から言えば、なるべく解き方を教えないように、ギリギリのところからヒントを出すべきでしょう。考えるスペースをなるべく大きくすることで、気分的にも解いたという達成感をより多く得ることができます。

考えるスペースを大きくするためには、一つのヒントを出す時でもバサッと全部出すのではなく、なるべく小出しにしたほうがよいでしょう。たとえば、補助線を使うような場合、ヒントは(1)補助線を使う。(2)補助線をどこに引くか? (3)なぜ補助線を引くのか? 何を期待して引くのか(図形の性質や相似を使うためなど)?などに分けられます。考えあぐねているお子さまに、「補助線を考えてごらん」と言うのと「点Aと点Eを結んで相似の関係を使うよ」などと多くのヒントを与えるのでは、考える幅が大きく違ってきます。子どもの実力を考えながら、なるべく小出しにヒントを出していくとよいでしょう。

■やってはいけないヒントの出し方

ヒントは学習の効率やモチベーションを上げるためにも重要ですが、出し方によっては逆の効果をもたらすので注意したいものです。たとえば、ヒントを出している人の説明が多すぎて、まるで独演会になっている場合があります。そのようなヒントの出し方では、学習者の力を伸ばすことは難しいでしょう。なぜなら、ヒントを出すほうが説明を始めた瞬間、教えてもらっているほうが考えることをやめてしまう場合があるからです。聞いているようで聞いておらず、「わかった」というわりには同じような問題が次に出てきてもまたヒントを求めます。出したヒントでしっかり考えているかを、十分に確かめる必要があるでしょう。
それからもう一つ。その問題だけに有効ではなくて、このような問題に有効なヒントの出し方も心がけたいものです。たとえば先ほどの「補助線」であれば、「これらの点を結んで、補助線を作るんだよ」ではなくて、「こういう時は補助線を使えないか、補助線を使って相似や面積比が使えないかを考えるんだよ」というヒントの出し方のほうが汎用(はんよう)性は高いでしょう。

以上、ヒントの出し方について説明しました。ヒントは出し方によって学習者の意欲や学力の伸びが違ってきます。どのようなヒントならば学力を上げられるかを常に考えながら、ヒントを出していきましょう。なお、一生懸命考えてはいそうだが、それでもすぐにヒントを欲しがるようなことが続くようであれば、学力不足ということで、もう一段やさしい問題から演習する必要があるかもしれません。そのあたりも、お子さまの様子を見ながら判断する必要があると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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