算数の図形の問題で、補助線を見当違いのところにひいて、長く考えていることが多い[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小6女子(性格:神経質・強気なタイプ)のお母さま
質問
図形がとにかく苦手です。補助線をひいて考える問題でも、見当違いのところにひいて、長く考えていることが多いです。とにかくたくさんの問題をやって、慣れようとしているのですが、なかなか解けません。
小泉先生のアドバイス
問題演習をこなすことで、解法の道具を身に付け、その手順を俯瞰(ふかん)できるようにする。
1つの問題を解く手順はいくつもある場合がありますが、ここでは単純なモデルを考えて、下図のような道筋(A→B1→C1→D→答え)しかない、とします。そして、この問題を解いている児童がA地点にいたとしましょう。
さて、この児童はどのようにして問題を解いていくのでしょうか。
この問題がよほど簡単でない限り、A地点にいる時点で答えまでの道筋「A→B1→C1→D→答え」が瞬時にわかるということはあまりないと思います。A地点にいる段階では、次の手としてB1に行くべきか、あるいはB2やB3に行くべきか悩み、試行錯誤することでしょう。ここで、「次の手」というのは問題を解くための「公式*¹」「解き方*²」「性質*³」「計算」などの「解法の道具」を意味します。
「解法の道具」は、その図形問題の条件や求めるものによってさまざまに使い分ける必要があります。しかも、同じ「補助線をひく」でも「どこにひくか?」でさらに選択肢は増えていきます。A地点にいる児童にとって、正しい「次の手」がB1なのかB2なのか、あるいは他にあるのかは、はっきりとはわかりませんから、非常に不安であり考え込んでしまうことでしょう。たとえば、誤ってB2に行き、さらにC4やC5に進んでしまうといくら考えても正しい答えは得られないからです。
*1 公式…「円すいの体積=底面積×高さ÷3」など。
*2 解き方…「補助線をひく」など。
*3 性質…「二等辺三角形の底角は等しい」など。
ここで、算数が得意な児童と、不得意な児童の違いを考えてみます。1つには、算数の得意な児童は、「次の手」である“解法の道具”を十分に持っている子だと思います。たとえば、A地点にいる時に、正解であるものを含めたB1、B2、B3という“解法の道具”に関する知識があるということです。A地点にいて、仮にB2しか知らない(あるいは思い付かない)児童であれば、いくら考えても正解にたどり着くことはないでしょう。
もう1つ大切なことは、「次の手」を考える時は「その次の手」も合わせて考えるということです。たとえば、B1が「補助線をひく」という「解法の道具」だとします。なぜ補助線をひくのか? おそらく、補助線をひくことで「新しい条件」を見つけ出すためでしょう。そして、むやみに補助線をひくのではなく、たとえば「相似の関係が利用できる補助線のひき方はないか」を考えるのです。あるいはC1の地点まで来た時に、答えのほうから考えて、C1とつながるような地点Dはないかと考えるのも1つの方法です。次の地点に飛ぶ時は、その次の地点を同時に考えるとか、あるいはその次の地点から逆に考えて、現在の地点と結べるような次の地点はないかを探すという姿勢が大切です。
このように、算数や数学を解くためには解法の手順を「俯瞰」つまり「全体を上から見ること」が必要です。ただし、「俯瞰」といっても、すでに述べたように、最初から最後までの道筋がわかるというのではなく、せいぜい次とその次くらいまでを考えていく程度でよいでしょう。もちろんその手順が正しいかどうかは、正解が出るまでわかりません。当然、不安であり試行錯誤の連続になります。しかし、問題数をこなしている児童は、「おそらくこれでよいのではないか」という勘も働くようになりますから、ある程度は自信を持って問題を解くことができるのです。
さて、お子さまのケースですが、“解法の道具”を十分に持っていないか、あるいは解法の手順を俯瞰していないかのいずれか、あるいは両方であると思います。前者に関しては、数多くの問題を解いて“解法の道具”に慣れ親しむことで解決できます。そして、後者に関しては次の手順だけでなくその次の手順までも合わせて考えるクセをつけるとよいでしょう。そのように考えられるようになれば、問題を解く時間も短くなり解ける可能性もアップすると思います。いずれにしても、問題演習をこなすことで身に付けていく力だと思います。