グローバル人材になりたいけれど…「海外で働くのはいや」!?-斎藤剛史-

学習指導要領の改訂、大学入試の改革など、現在進められている教育改革の大きな狙いの一つが「グローバル化対応」であり「グローバル人材の育成」です。これからの時代、好むと好まざるとにかかわらず、社会のグローバル化が進むのは確実です。しかし、大学生の意識を見ると、約7割がグローバル人材になりたいと願っている一方で、ほぼ同数の約7割が「海外で働きたくない」と考えていることがわかりました。大学生にとってグローバル化の壁はまだまだ高いようです。

大学でマーケティングを学ぶ大学生らが組織する意識調査プロジェクト「FUTURE2014」は2014(平成26)年7~8月、首都圏の大学生を対象に「大学生の『日本』に関する意識調査」(外部のPDFにリンク)を実施し、800人から回答を得ました。グローバル化が自分の将来に影響するかどうかを尋ねたところ、「大きな影響がある」が29.8%、「やや影響がある」が55.6%で、合計85.4%の大学生がこれからの自分の将来にグローバル化が影響すると感じています。そして、世界に通用する人間、いわゆる「グローバル人材」になりたいかでは、「非常にそう思う」が29.3%、「ややそう思う」が40.6%で、合計69.9%がグローバル人材になりたいと思っています。また、今後の英語の勉強についても89.0%が「勉強したい」と考えています。将来のためにグローバル人材なりたい、そのためには英語を勉強しなければならない……と多くの大学生が受け止めていることがうかがえます。

ところが、海外で就職したいという大学生は34.5%にすぎず、残り65.5%、約7割が海外で働きたくないと回答しました。具体的に就職したい企業も「日本国内のみで仕事をする会社」(63.8%)、「社内での使用言語が日本語である日系の会社」(73.9%)となっています。さらに、世界に通用する自信があるかどうかでは、「全く自信がない」が22.9%、「あまり自信がない」が53.8%で、合計76.7%と約8割がグローバル人材になることは難しいと思っていることも明らかになりました。
これからの時代にはグローバル化対応が求められているとわかっていても、実際には日本国内にある会社、しかも外資系ではない会社で仕事をしたいというのが日本の大学生の本音と言えそうです。これについて同プロジェクトは「『グローバル化』のプレッシャーが先行して、萎縮してしまっている大学生の意識がみてとれる」と説明しています。

ただ、海外で就職してもよいという大学生の割合を環境別に見ると、全体平均が34.5%に対して、「英語の勉強をしている層」では44.0%、「(国内で)外国人と交流している層」で50.8%、「海外旅行を経験している層」で58.9%、「海外留学を経験している層」で65.5%となっており、単に英語を勉強している大学生よりも外国人とじかに接したり、実際に外国に行ったりした経験のある者のほうが高いという結果が出ました。グローバル人材になるには、学生のうちに積極的に海外でさまざまな経験を積むことが大切なようです。まさに「百聞は一見に如(し)かず」ということでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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