選択肢を選ぶ問題で、間違いではないが正解のほうがより適切な場合の指導をどうすればよいのでしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

模試の復習をする際、選択肢の中で「明らかに違う」場合はいいのですが、「間違いではないが正解のほうがより適切」といった場合の判断が難しいです。どのように指導したらよいでしょうか。


小泉先生のアドバイス

本文や解答解説をよく読みながら、選択肢を比べてその違いを確かめてみる。

「間違いではないが正解のほうがより適切」という選択肢は、確かに選びにくいですね。解答の解説を読んでも、なんだかすっきりしない場合が少なくありません。なぜそのような紛らわしい問題を作るのかと腹立たしくもなりますが、選択肢問題は正答率が高く、なかなか差が付かないためだと思います。なんとかして差が付く問題を作ろうとすると、かなり紛らわしい、「より適切」というような選択基準の問題になってしまうのです。

さて、指導する方法ですが、まずは解答解説をしっかり読んで、正解の選択肢と「間違いではないが……」の選択肢を比べてみてください。どこがどう違うのか、その違いによってなぜ正解とはいえなくなるのかを、解説と共に分析してみることが必要です。そしてその場合、それぞれの模擬試験や学校の出題傾向を十分に意識すること。模擬試験や学校によって、紛らわしくする箇所や方法に違いがある場合があるからです。それぞれの特徴に慣れて、どのようなところに注意すればよいかがわかってくると、出題者の意図も読めて選択肢問題が解きやすくなると思います。

ここで、「間違いではないが……」の選択肢問題の作り方を示しながら、正解の選択肢との違いを説明していきましょう。まずは、要素が欠けている選択肢が考えられます。
たとえば説明的文章の選択肢問題で、問いは「この文章の内容として最も適したものを次の中から選びなさい」であったとします。ここで正解の選択肢Aは文章全体を網羅した内容で「自然環境を守るには、省エネルギーと資源のリサイクルが必要だ」とあるのに対して、もう一方の選択肢Bは「資源のリサイクル」に関する記述が抜けていたら、それは選択肢Aのほうがより適切ということになります。

これが物語文になると、気持ちの表現が不十分であるような選択肢を作って解答者を惑わそうとします。
たとえば、兄弟げんかをして母親に一方的に叱られた兄の気持ちとして、正解の選択肢Aでは「自分ばかり叱る母に腹を立てると共に、いつもかばわれている弟を憎らしく思う気持ち」とあり、もう一方の選択肢では「兄であることを理由に、いつも弟をかばい自分のことを叱りつける母に対して腹立たしい気持ち」とあったら、選択肢Aのほうがより適切な選択肢といえます。なぜなら、Aのほうが母だけではなく、弟に対する気持ちも表現しているからです。

このように、正解の選択肢に比べるともう一方の選択肢は足りないものがあり、それにより選択肢Aのほうをより最適としている場合をよく見かけます。なお、ここに示した選択肢の例だけを見ると単純明快のように感じるかもしれませんが、いかにもそれらしく見せて足りないものがないように表現するのが問題作成者の「腕」です。実際、問題文と絡めると本当に紛らわしいものができるので、生徒の皆さんも、つい適切ではないほうを選んでしまうのでしょう。

また、問い方によってもより適切な答えが違ってくる場合があります
たとえば、先ほどの母に叱られた兄の心情ですが、次のような推移をたどったとしましょう。すなわち、「母に怒られる」→「自分ばかり叱る母に腹を立てる」→「母にかばわれていい気になっている弟を憎らしく思う」→「それでも、母の言うことに逆らえない自分を情けなく感じる」とします。このような感情の推移があった場合、問われ方や傍線部のひかれた箇所によっては、どの感情がその時の感情としてより適切なものになるかは違ってきますから、正解の選択肢と「間違いではないが……」の選択肢を作ることが可能になってきます。

以上、いくつか例を出して説明しました。これら以外にも「間違いではないが……」の選択肢を作る方法はあると思いますので、本文や解答解説をよく読みながら選択肢を比べてその違いをじっくり確かめてみましょう。

最適とそうでない選択肢の違いはどこなのかをお子さまが自分なりに探し説明できるようになることは、選択肢問題を得意になるための1つの方法です。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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