試験本番になると、緊張しているせいか単純な計算ミスが見受けられる[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




試験本番になると、緊張しているせいか単純な計算ミスが見受けられる[中学受験]


質問者

小4男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

普段は問題なくこなせるのですが、試験本番になると、緊張しているせいか単純な計算ミスが見受けられます。公式は頭に入っているのに、図形を見ると単純に図形に書かれている数字で求めてしまいます。


小泉先生のアドバイス

手が自然に動くようになるまで、基礎・基本をくり返し練習する。


試験の前に「深呼吸する」とか、「手に『人』という字を書いて飲み込む」など、緊張しないための知恵はいくつもあります。それらを試すのもよいと思いますが、なによりも基礎・基本をくり返し練習しておくことが重要だと思います。ここでいう基礎・基本とは、算数であれば四則計算や、図形問題を解く時の「手順」であり、あまり考えることなく手が自然に動くまで習得したい事柄のことです。

試験の時に緊張するのは、手が自然に動く前に緊張した頭が「さて何をするんだっけ?」と考えるからではないでしょうか。少し考えて、すべきことがぼんやりしていると、「大変だ、どうしよう」と緊張は増幅します。そうするとさらに緊張は増して、最後はパニック状態になります。結果、普段はやらないようなケアレスミスをしてしまいます。

しかし、最初に手が自然に動いていればどうでしょう。「順調に動き出した」という安心感から、緊張は適度なレベルを保つことができるのではないでしょうか。手を動かすということは、心の安定を保ちながら集中して考えるために必要なプロセスなのだと思います。

それでは、どうしたら自然に手が動くようになるのか。それは、毎日の練習でしょう。日頃のくり返しの練習が手を動かすことになるのです。一流の野球選手や卓球選手が、何千回、何万回と素振りをくり返すのとまったく同じです。

たとえば、お子さまが「図形を見ると単純に図形に書かれている数字で求めてしまう」のは、普段の勉強で、図形問題を解く時の手順を省いてしまうことがあるからだと思われます。
図形の「解法の手順」とは、単純化すると
(1) 条件整理 → (2) 着目 → (3) 公式・解法 → (4) 計算 になります。

すなわち、
(1) 問題文の中にある条件や隠れた条件を、すべて図形に書き込む。
(2) 図形を見て使えそうな公式・解法を考えながら、どこかに着目する。
(3) 着目したところを糸口にして、公式や解法を使って式を組み立てる。
(4) それを計算して答えを出す。
という手順です。



この手順の中で一般的に難しいのは、「(2) 着目」ですが、難関校になると「(1) 条件整理」が問題を解くためのポイントになる場合が少なくありません。

ですから、図形問題が出たら必ず「(1) 条件整理」をまず考えます。たとえ易しそうな問題でも、日頃から手を動かして問題文の条件箇所に線をひくことを習慣にします。これが先ほど述べた、野球選手や卓球選手の「素振り」です。

「問題文が短くて条件はすべて図形にありそう」とか、「一見して隠れた条件などなさそう」などの理由で「(1) 条件整理」を飛ばしてしまってはダメです。練習の時にできないことが、本番の試験の時にできるはずがありません。どんなに簡単な問題でも、必ず「(1) 条件整理」をしっかり丁寧にやりましょう。そうすれば、試験でも落ち着いて自信を持って問題が解けるようになると思います。これは、計算をする時も同じです。日頃から計算問題を丁寧にくり返し練習すると、手が正確で速い計算を覚えますから、本番でも計算ミスは少なくなります。計算をまちがえるのは、ケアレスミス(注意不足のためのミス)というよりも、練習不足のためのミスのほうが多いと考えるべきなのです。

試験や本番で緊張するのは当たり前であり、逆に、ある程度の緊張は必要です。その緊張が過度にならないのは、日頃の練習によってやるべきことを体が覚えているからであり、また、ここまで練習したから大丈夫という自信があるからだと思います。試験やスポーツなど、なんでも原理は同じです。まさに、「練習は不可能を可能にす」ということなのでしょう。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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