中学受験でめざすもの 〜家族はこわい〜[中学受験]

 家族機能研究所代表の斉藤学氏(精神科医)が書いている「家族はこわい」(新潮文庫)という本があって、思春期の問題を具体的に扱っていて身につまされる。

 そして何よりこの本の題名が振るっている。ここのところ続いている新聞報道などでの家族内での殺人事件を思い起こすと、本当に今や家族はこわいものだということが実感として迫ってくる。筆者などにも中学受験のあとにこうした悩み、問題を訴えられる方が必ずおられる。勿論、深刻なケースでは家庭内暴力ということになるけれども、実はそんなことは案外少ない。例えば先日の奈良の高校生による母子殺人事件でも、日頃はおとなしくよいお子さまだったようだし、小学生の頃など、スポーツも勉強もできるリーダー格の人物だったようだ。

 難しいのは、このように家庭内ではその兆候はみようによってはみえてもわかりにくく、しかもその深刻度合いはわからないことだ。勿論、気をつけることならいくらか教訓は引き出せないことはない。

 例えば、母親が成績について父親に告げると、父親から厳しく叱られる、ということが事情としてあったようだが、母親が父親に伝えるその情報の出し方は十二分に注意が必要だ。何よりこのお子さまに限らず基本的に能力も高く、通常の生徒として特段の不都合のないケースだと中学生になれば小学生と違う扱いが必要なところ。できれば一人前の大人として少し自覚を促す方向で接したい。その意味では父親が小学生の時と同じようにお子さまをコントロールする感覚で接するのは避けたい。ここは母親が父親にあれこれ様子を話して語るときに、繰り返し頼んでおくべきだろう。父親にも母親にも中学生からは、例えば相手が未熟にみえようとも、マネジメントをする感覚に変えていただきたい。コントロールとは支配・被支配の関係だが、マネジメントとはいわば契約関係といえばよいだろうか。その際に相手の立場を尊重することが基本なのだが、マネジメントだから、そこに何らかの結果を出すことが共通理解になくてはならない。

 父として母として要望事項があって、成果目標がある。これについてお子さまは努力する。ただ気をつけたいのは、成績の良し悪しで父母ともに同じ態度で接するのはマネジメントとして失敗だ。

 成績管理については手法を決めて、一定の範囲であれば本人に任せ、一定よりよければ日頃の努力を称え、悪ければ問題点を指摘するにしても、まず母親としては無条件の愛を改めて示してあげるべきだろう。

 筆者などは、母親がこうして日常的に管理した平均点に対し、父親はその平均点を引き上げる役割だと考えている。単に悪かったところをみてやるのではなく、そこにある何か弱さ、よくない習慣、あるいは学校などでの心因、親子のストレス等に心をめぐらせ、仕組みを変える方策を考えたい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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