[中1~中3生]将来につながる進路選択のために、保護者ができること

新しい年を迎え、進級も間近な3学期は、少し長いスパンで先のことを考えるのに良いタイミングです。今回は、将来につながるお子さまの進路選択のために、保護者ができることについて述べます。

予測のつかない時代だからこそ、子どもの「好き」を大切に

グローバル化・情報化(IT化)の影響で、世界はめまぐるしく変化しています。そのため、何を学べば安定した道が開ける、といった見通しもつきにくく、現在、人気のある学部が将来も人気とは限りません。
だからこそ、進路はお子さま自身が自分の好きなことや適性を第一に考えて選ぶ必要があると思います。高校の大学進学実績、大学の就職実績といった数値は無視できないものではありますが、そこに囚われすぎず、いったん頭から外して考えることも大切ではないでしょうか。「好き」を究めることは、「好き」を通じて世界を広げることでもあります。何を学び、どんな職業に就くにしろ、困難はつきものですが、好きなことややりがいを感じる仕事であれば、たとえ壁にぶつかっても主体的に考え、乗り越えることができるでしょう。

好きな趣味はできるだけ続け、究められる環境づくりを

「誰もが好きなことを、仕事にできるわけではない」というのも事実です。たとえばサッカーが好きだからといってプロサッカー選手になれるとは限りませんが、「好き」を生かす職種は数多くあります。
また、一見勉強や進路と関係なくみえる趣味も、コミュニケーションの手段となったり、人間関係をつくるうえで大切な役割を果たしてくれたりします。たとえば一緒に音楽を演奏したり、スポーツをやったりすることで、異なる文化や背景をもつ人との距離が一気に縮まることもあるでしょう。能や歌舞伎に詳しい、地元に伝わるお囃子や舞を披露できるなど日本の伝統文化に関する趣味や知識、あるいはアニメやマンガ、ゲームなど日本のサブカルチャーに関する話題も、海外の人と交流が深まるきっかけとなるかもしれません。「好き」は徹底的に究めれば特技・才能となり、職業に生かせる可能性も広がるのです。

ですから、お子さまに好きな習い事や趣味があれば「そんなことより勉強しなさい」などといわず、できる限り続けて、自分なりに深めていけるような環境づくりをしてあげてください。

未知の環境で、多様な価値観に触れるチャンスを

現在の子どもたちは、異なる価値観や社会階層の人と接する機会が少なくなりがちです。しかし、さらにグローバル化が進む世界で生き抜くためには、多様な価値観に触れ、相手の立場に立って考えられるようになることが必要です。そのため、職業体験や海外研修旅行といった機会を用意している学校もあります。
自分がこれまで知らなかった様々な現実に触れることは、「この世界で自分には何ができるか」と考え、学ぶ意味を問い直すきっかけになります。そのような機会を、意識してつくってあげたいものです。

子どもが「自分で決める」機会を増やす

2015年夏に行われた、台湾・海南大学の副学長による日本の高校生向けの講演の中で、こんな言葉が印象に残っています。「グローバル化をチャンス到来ととらえ、これまでの枠組みを越えて、新たな進路にチャレンジしよう。そこには確かにリスクはあるが、国境を越えた人的ネットワークをもつことが、リスクを軽減する道だ」。
これまでの枠組みや物差しを乗り越えてチャレンジするためにはまず、自分で判断して「自分で決める」ことができなくてはなりません。ですから、ふだんからお子さまに判断させる機会を増やしてはいかがでしょうか。たとえば、長期休みや休日のお出かけプランは子どもに任せ、なぜそこへ行きたいかも説明してもらう、といったことでもよいと思います。大人を説得するにはどんな説明の仕方がよいかなど、様々なことを考えるきっかけにもなりますし、自分のプランで家族皆が喜んでくれたといった経験は自信につながるのではないでしょうか。

わが子に失敗させたくないという思いから、保護者はつい先回りをしがちです。しかし、進路決定という重要な決定までに、判断を重ねて自己決定する機会を増やし、お子さまの自立・自律を促すことが大切だと思います。

(筆者:安田 理)

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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