国語のテストの解答に、文中で使用されていない違う語句を使うことが多いです[中学受験合格言コラム]

国語のテストの解答に、文中で使用されていない違う語句を使うことが多いです

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小4女子(性格:大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま


質問

解答の際にあえて文中で使用されているのとは違う語句を使うことが多いです。たとえば「うれしかった」と描写されている物語文の問題で「喜んだ」と答えるなど、解釈としてはまちがえていなくても、テストの解答としては減点されてしまいそうな解答をよくします。
「文中の語を使って」「そのまま抜き出して」などの問題であれば、「これでは×」とはっきり教えられるのですが、そうでない場合でも、できるだけ文中の語句を使うべきだと思うのですが、あまりピンとこないようです。ちなみに幼いころから同様の傾向があり、読み聞かせられた絵本の内容を説明する時や、覚えたての歌を歌う時に、原文にある言葉ではなく自分の語彙にある同音異義語や類義語に置き換えて話すことが多かったです。


小泉先生のアドバイス

理由を具体的に示して、安易な言い換えが危険なことを理解させる。

●なぜ違う語句を使うのか?
「文中で使用されているのとは違う語句を使う」というのは、お子さまの“大ざっぱな性格”が原因なのかもしれません。この性格の人は、物事を大づかみにとらえるのがうまいため「要するに、こういうことだよね」と、自分の言葉でまとめがちです。そして、この「大きくつかむ力」は大切な能力の1つであり、国語においても必須の力といえましょう。

●文中の言葉を使う理由
それではなぜ、文中の言葉を使うべきなのでしょう。あるいは、どういう時に使うべきなのでしょうか? 抜き出し問題の時はもちろん、記述問題の時も“極力本文の言葉を使う”というのが原則です。なぜかといえば、同じような言葉でも“ニュアンスの違い”というものがあるので、筆者の伝えたいことと異なる意味になる可能性があるからです。
たとえば、「腹を立てる」と「怒っている」を比べた場合、同じような意味の言葉ですが程度が違います。また、「はにかむ」と「恥じ入る」を比べた場合、程度ではなく方向性が違っているといえましょう。このように、ある言葉を他の言葉に言い換えることは往々にして難しい作業であり、特に、まだ幼い小学生には至難の業といえるでしょう。

●お子さまへの伝え方
お子さまは性格的に「大ざっぱ」ですが、同時に「論理的」でもあります。ひとつの言葉を別の言葉に言い換えた時に、意味合いが違ってしまう場合があることを具体的な例を挙げて示せば納得されると思います。いちばんいいのは、お子さまが実際に誤った言い換えをした時をとらえて、程度や方向性が違うことを示すことです。理由を具体的にきちんと示せば、安易な言い換えが危険なことを理解できると思います。

●言い換えが必要な場合
とはいっても、言い換えがどうしても必要な場合もあります。それは、字数の関係で本文の内容をコンパクトにまとめなければならない時、あるいは、「自分の言葉で書きなさい」などの条件が付いている場合です。このような時は、細心の注意を払って他の言葉に言い換えることになります。しかし、語彙が少ない子どもの場合、なかなかうまい言い換えはできないかもしれません。そんな時は、復習時に模範解答ではどのような言葉が使われているかを確認してみましょう。そして、なるほどと感心するような言い換えがされているのであれば、次の時には使えるようにその言葉を覚えてしまいましょう。このような地道な努力によって、本当の意味での語彙力は培われていくのです。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A