「国語の説明文は『上から目線の文章』だから頭に残らない」と主張します[中学受験合格言コラム]

「国語の説明文は『上から目線の文章』だから頭に残らない」と主張します

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小6男子(性格:大ざっぱ・強気なタイプ)のお母さま


質問

国語で、共感・感動できる物語文であれば得点できますが、説明文などは「上から目線の文章だから頭に残らない」と主張し、選択問題でさえ得点できません。好き嫌いで文章を読んではいけないことは、本人もわかっているようですが、精読しきれていないようです。せめて、主題くらいは理解できるようになってほしいのですが……。


小泉先生のアドバイス

「論説文の性格」や「多様な視点」を教える。

「上から目線の文章だから頭に残らない」とありますが、子どもたちのこのような不満はよく聞きます。しかも、このように訴える皆さんは「素直でまじめな子」に多いようです。なぜでしょうか? 一つ考えられるのは、筆者の表現方法が子どもたちには強すぎるのかもしれません。最近の子どもたちは、目立つことを言ったりやったりすることを避け、あいまいな表現を好みます。しかし、論説文では自分の意見を明確に読者に伝える必要がありますから、「~するべき」とか「~である」などの断定する表現が多くなります。そして、このような表現に慣れていない素直な子どもたちは、「そこまで言うか!」とつい引いてしまうのではないでしょうか。引いてしまえば、文字を読んでいても内容が頭の中に染み込んでいくことはありません。それが、「上から目線の文章だから……」ということになってしまうのだと思います。

あるいは、普通とは違った視点で見ようとする、論説文の性格が原因かもしれません。論説文に書いてある内容は、ありふれた見方や意見であったら読者に興味を持って読んでもらえません。つまり、斬新な視点で、「なるほどー」とうならせるような内容でありたいというのが論説文の宿命なのです。

たとえば、「地球にやさしい」を合言葉に、「使い捨ての割り箸」ではなく自分専用の「マイ箸」を持ち歩いて食事をすることがブームになった時期がありました。今もそのように実践されているかたも多いかもしれません。しかし、それがよいことだと教えられた子どもたちが、「日本の林業は採算がとれないため、森林の手入れができず荒れてきている。端材で作られるため自然環境にもやさしく、収益性も高い割り箸は日本の林業を救う。割り箸はぜひ使うべきだ」という文章を読んだらどうでしょうか。今までの視点とはかなり違いますから、おもしろい論説文ではありますが、読み手である子どもたちの常識は180度転換されるわけです。

「マイ箸」か「割り箸」かの論争はここではひとまず置いておきますが、少なくとも、正しいと信じていたことが印刷された文章でひっくり返されることは、子どもたちにとっては衝撃でしょう。一般的に、子どもたちは(大人でも?)テレビや新聞などの情報や印刷された情報は、「絶対的なもの」であり「正しいもの」と考えてしまう傾向にあります。そのため、違った意見や見方が出てきた時には、なかなか頭を切り替えることができないのです。

以上、子どもたちが論説文を読み難いと感じる理由をいくつか挙げてみました。次は、そのような子どもたちへの声のかけ方を少し考えてみましょう。まず、他の人を説得しようとする論説文では、断定的な「○○だから、△△である」という言い方が一般的であり、読み手を威嚇しているわけではないということを伝えましょう。なぜなら、あいまいな言い方、たとえば「××かもしれない」とか「◎◎のように思える」などの表現が多すぎる文章では、読み手が納得しづらいからです。

また、物事にはさまざまな見方があり、いろいろな意見があり得ることも理解してもらいたいポイントです。このことは、先ほどの「マイ箸」か「割り箸」かの話などからも理解できると思います。テレビや新聞のニュース、あるいは印刷された文章は一つの考え方であり、それを自分がどのように受け止めるかが大切なのです。つまり、その意見に賛成か反対かを常に考える必要があるということです。以上のようなことを、折にふれて伝えてあげるとよいでしょう。

最初に述べましたように、この時期の素直でまじめな子どもたちは多様な視点を持つことに違和感を覚える場合があります。しかし、価値観は決して一つではないことを理解し、他の人の意見を吟味する習慣を付けていけば、入試レベルの論説文を読めるようになることはもちろん、物事をさまざまな視点から深く考えるようになると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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