今井絵理子さん(歌手)が語る、家族が笑いで包まれる子育て【第3回】 笑顔でバリアフリーな社会をめざす

12歳で人気グループ "SPEED"のメインボーカリストとしてデビューした、今井絵理子さん。先天性聴覚障がいがある9歳の息子さんを育てながら、アーティストとしてもさまざまな活動をされています。第1回は今井さんの子育てのポリシー、第2回はご自身が育ったふるさと沖縄について伺いました。今回は、バリアフリーな社会をめざす活動について、そして子育て中の保護者のかたに向けてのメッセージをお話しいただきます。

試練をギフトに変えて

息子の礼夢(らいむ)の子育てにあたっては、病院の先生やろう学校の先生、先輩ファミリーからたくさんの知恵や力をいただいています。お互いの情報交換は密で手厚く、みんなで一緒に成長していこうという、絆を感じます。

歌手である私のもとに聴覚障がいがある息子がやってきたことには、意味があるのではないか、そして私たち親子だからこそ発信できることがあるのではないか、と思うようになりました。受け止めることに精いっぱいだった試練は、子育てをしていく中で次第に、「ひょっとしたら神様からのギフト?」と思うようになったんです。

私は息子との生活を通じて、「障がいを個性と認め合える社会、バリアフリーな社会になったらいいな」と強く感じています。私たち親子が、楽しく幸せに生活しているのを知ってもらうこと、私の経験や得た知識をシェアすることが、その一歩になるのではないかと思いました。

その社会の実現のために、今、国内外のろう学校や児童養護施設、特別支援学校などを訪問しています。時には礼夢も一緒に出かけて行って、お話をしたり歌を歌ったりダンスを踊ったりしています。障がいを公表したことを、息子が今後どのように思うかはわかりません。でも、将来彼に「ありがとう」と言ってもらえるように、心を込めて活動し続けていこうと思っています。



親友の歩幅で一緒に成長

一般的な親子関係というと、親が主で子どもが従、教える側と教えられる側という立ち位置かな、と思うのですが、私たちは「一緒に学んでいる」同志のような関係です。実際、手話サークルでは一から一緒に学んでいますし、ゲームなども一緒にやり方を覚えたり、遊んだりしています。親子というよりは、友達の歩幅に近いかもしれません。趣味も近くて、アクション系やミステリー系のDVDを二人で好んで見ています。

最近は反抗することも多くなりました。そんな時は真正面からぶつからずに、ユーモアで返すようにします。反抗期も思春期も、子ども自身のせいではなく成長の過程で自然に起きるものですから、これも成長の証と思って切り抜けたいですね。「笑顔でいこう!」をポリシーに、ユーモアとふれ合いを大切にして、これからも笑いが絶えない親友のような母子でありたいと思います。



家族の数だけいろいろな子育てがあっていい

子育てはたくさんの方々のサポートが必要だと思います。私は「子育て初心者」として、最初から信頼できる家族や友達の力を借りてきましたし、今もそうしています。それぞれに個性的なお子さまと日々向き合って、奮闘されている保護者のかたには、子育てを一人で抱え込まないでほしいな、と思います。それから、親だから○○○しなくちゃいけない、親はこうあるべき、というプレッシャーを自分に課してつぶれないでほしいです。

家族の数だけいろいろな子育ての形があっていいと思うんです。つらいな、苦しいな、と思うことを子どものせいにしない生き方をしたいですよね。「あなたのために仕事を休んだのよ!」とか「あなたのせいで○○できなかった」などと言われたら、子どもはどうしようもなく悲しい気持ちになってしまいます。そうならないためにも、自分の心を軽くしたり、リセットできたりする「息抜きの場」を持つことが、大事なのではないでしょうか。

一人で抱え込まない、無理をしない、息抜きの場を持つ、そして周囲のサポートを遠慮なく受けながら、大切な子どもたちの未来をつくっていけるといいですね。

『おやこ劇場』
<祥伝社/今井絵理子(著)/1,365=税込み>

プロフィール



1983年沖縄生まれ。1996年に12歳でSPEEDのメンバーとしてデビュー。2004年に結婚、長男を出産。その後、息子の聴覚障がいを公表。音楽活動と並行しての講演会や執筆活動に加え、全国の子どもたちに笑顔を届けるイベントを実行するなど、活躍の場を広げている。

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