中学受験という逆境は、家族で乗り切る[中学受験]

センター試験の結果が出た。今年は平均点が高かった。不況で国公立の難関大学を狙う生徒が多そうだ。センター試験では、ほとんどの生徒が志望大学の合格判定を受けるので、合格可能性が明確になる。合格可能性が明確になれば、生徒本人の得点が思ったよりも高かったとしても、平均点が高ければ、合格可能性は高くはならないはずだ。難関大学を受験しても合格可能性が低いことがわかるので、志願者数は伸びない。つまり、平均点が高いことイコール難関大学受験者が多いということにはならない。もっとも、自分の得点が過去の合格基準に近ければ、難関大学を受験したくもなる。

センター試験の平均点が高かったのは、単に問題が易しかったからだけなのであろうか。不況で就職が難しい昨今では、より高いレベルの大学を目指す生徒が多くなるとは考えられないだろうか。高いレベルの大学でなければ、将来、希望する企業に就職ができないのでは?と不安になったのではないだろうか。まだ将来のことで、おぼろげな不安かもしれないが、その不安をやわらげるためには、より高いレベルの大学に合格するのが当面の良い解決策と考える保護者は多いことだろう。特にセンター試験のように基礎・基本を重視した問題は、がんばれば、得点は上がりやすい。

もちろん不況による将来の就職への不安を持たない受験生や諦めてしまう受験生もいたと思うが、多くの受験生が、将来への不安からこれまでよりも勉強した結果、センター試験の平均点が上がったのかもしれない。人間は、逆境では意外な力を発揮する。地震などの災害にあった地域の受験生は、それ以外の地域の受験生よりも得点率が高くなる傾向が見られるそうだ。学習環境が厳しいなかで、学習時間もなかなか取れないと予想できるが、集中して勉強をした生徒が多かったことになる。そのような事例が多かったことを考えると、日本人は逆境に強い民族なのかもしれない。

中学受験は、小学生にとっては初めて経験する一種の逆境だとも言える。大人でも、個人で逆境に置かれると弱いので、逆境には集団で立ち向かうほうが良い結果が得られると思う。特に小学生は一人では逆境に立ち向かうことは難しいだろう。中学受験のために、塾に通って集団で学習するのも集団で逆境に立ち向っていると言える。集団の中で学習すると、何故か安心することができ、がんばろうという勇気がわいてくるのだ。
中学入試は半分が親の受験と言われるように家族という集団で受験という逆境に立ち向かっている例が多い。中学受験という小学生にとって初めての逆境を家族が支えることでうまく乗り切ることができれば、それだけで良い経験となる。たとえ、第1志望校に合格できなかったとしても子どもにとって失敗の体験ではなく、逆境を乗り切るという成功経験となり得る。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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