急がば回れ! 小学校英語では「聞く・話す」の音声の学習を十分に
- 新課程の英語特集
小学校5・6年生において教科になった英語での、「聞く・読む・話す・書く」ことの学習内容については、以前ご紹介しましたが、小学校や中学校初期の英語学習では、その4技能の学習の順番が大切です。保護者の方は「えっ、順番があるの?」と思われるかもしれませんが、適切な順番で学習すると効果が高いことは言語習得研究からもわかっています。その順番とは、「聞く・話す」→「読む・書く」で、英語の音声に十分に慣れ親しむ学習から、アルファベット学習を経て、読み書きなどの文字に関する学習へつなげるというものです。
音声(聞く・話す)から文字(読む・書く)への学習とは?
小学校3・4年生の外国語活動では、「聞く・話す」ことを通して英語の音声にたっぷり慣れ親しみます。そのあと5・6年生の教科の英語では、「聞く・話す」ことを続けながら、英語の音と文字をつなげて「読む・書く」ことを始めます。この学習の流れをイメージにしてみました。
*下記の参考文献の内容から筆者が作成
文部科学省「小学校学習指導要領 外国語活動・外国語編」(平成29年)
文部科学省「小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック」(平成29年)
文部科学省の旧学習指導要領解説書には、小学校に初めて英語活動が導入される背景として「中学校に入学した段階で4技能を一度に取り扱う点に指導上の難しさがある」と記載されています。ことばの習得では、音声から文字へ向かうことが自然であり効果的です。この流れは、赤ちゃんがたくさんの日本語を聞き、まねして言えるようになり、身の回りにある文字を徐々に目にして音とつなげ、文字、読み書きの学習に進んでいく過程と同じです。
大人が気が付きにくいこととして、アルファベット学習の難しさについて以前ご紹介しましたが、「聞く・話す」ことを十分に行ってから「読む・書く」ことに進むことの重要性も、中学校初めに4技能を一度に学習することを経験した大人には気が付きにくいことかもしれません。
参考:
文部科学省「小学校学習指導要領 外国語活動編」(平成20年)
英語のつまずきはアルファベットから!? -大人が気が付きにくい落とし穴-
小学校や中学校初めに英語につまずかせないために保護者の方ができること
1,まずは英語の音声にたっぷり触れることを忘れずに
英語を読んだり書いたりできることは、英語の学習が進んでいるという印象を与えるかもしれません。そのため、お子さまに読み書きの学習をつい早く始めさせたくなりがちですが、小学校の外国語活動・外国語の授業の流れに沿って、まずは聞く・話すことにしっかり取り組むように促してください。英語の歌やゲーム、絵本の読み聞かせなど、他教科の学習と比べて易しく見えるものにも、音声に慣れ親しむという重要な役割があります。すべての意味がわからなくても、推測しながら集中して聞き続けること、うまく言えなくても言ってみるように励ましてあげてください。日常生活の中で英語が聞こえてきたら、「今、なんて言ってた?」とたずね、英語の音に注意を向けたり、聞き取れたことを一緒に喜んだりしてみてください。
2,音声から文字へ学習をつなげる上で重要なことは「読むこと」、次に「書くこと」
英語や英文を聞いたり言えたりするようになると、次は「書くこと」に気持ちがいきがちです。しかし、読めない(意味がわからない)ものを書き写すことはただの作業になってしまい、学習効果も上がりにくいです。小学校で書き写す宿題が出された時は、まず、お子さまに「英語でなんて読むの?」「指でなぞりながら声に出して読んでみるといいみたいだよ」と英語を声に出してみるよう促してみてください。もし読めないようであれば、教科書付属の音声などをもう一度聞き、文字を見ながら声に出して読み、それから書くようにアドバイスしてあげてください。「読むこと」は、音声から文字への学習をつなげる要となります。
3,正しく書き写すことができるよう見守る
小学校では読めるようになった英文の書き写しまでを行います。書き写す際には、文のルール(文の始めは大文字、単語の間を空ける、文の終わりにはピリオドなど)を意識し、確実に書けるようになっているか確認してあげてください。単語の間を空けるなど、英文のルールは日本語とは違うものがありますのですぐにできなくても仕方ありません。お子さまが時間をかけてできるようになっていくことを見守ってあげてください。
小学校で習う基本の単語や文の意味がわかって、「聞く・話す」→「読む・書き写す」が完璧にできていれば、中学校に入学してからの文法の説明が頭に入りやすく、学習もスムーズに進みます。そのためには、英語の音声に十分に慣れ親しむ学習から、アルファベット学習を経て、読み書きなどの文字に関する学習への流れを大切にしてください。お子さまに英語を苦手にさせないためには、急がば回れ!です。
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