増える「自分の偏差値よりも低い偏差値の学校に進学する」現象を、専門家が解説
「出身大学が有名ブランドであれば、豊かな将来が保障された時代から、出身大学だけではなく、人柄や能力などの実力が求められる社会になってきている」。森上教育研究所の森上展安氏が、近年の志望校選びの変化について解説する。
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最近は偏差値が5以上高い学校に合格していても、その学校ではなく、志望順位の高い学校に入学する生徒が少しずつ増えているような事例を目にすることもあります。
そのことを裏付ける話として、最近、教育関連の出版社の方からも、「中堅校の中には、より高い偏差値の上位校に合格できる学力の生徒が、あえて第1志望とするような特別な学校が出てきつつあるのではないかという感覚がある」という話を聞きました。その原因は、まだ明確ではないようですが、中高一貫校に進学させる保護者の価値観に、変化が出てきたことは確かでしょう。
これまでの中高一貫校の人気は、少なくとも中堅校以上では大学合格実績に比例していました。また、受験生・保護者としても同じ大学を目指すなら、少しでも偏差値の高い中高一貫校に進学した方が有利という考え方であったと思います。しかし現在、大学合格実績よりも、中高一貫校の特色である教育方針や校風によって、子どもに身につけさせたいことを重視する保護者が一部に出てきているのではないでしょうか。つまり、志望校選定を行う時、一部の受験生・保護者は、ほぼ大学合格実績で決まる学校の偏差値には、左右されないということになります。
最近までは、出身大学が有名ブランドであれば、豊かな将来が保障されてきました。しかし、現在は、出身大学だけではなく、人柄や能力などの実力が求められる社会になってきており、それがこのような現象の原因となっているのではないでしょうか。社会の求める人材が変化し始めているなかで、変化に敏感な受験生・保護者は、社会の要求を満たす能力を身につけることができる中高一貫校を探しだし、進学しているのではないでしょうか。
そのように考えれば、今は珍しく受け取られる「自分の偏差値よりも低い偏差値の学校に進学する」ことが、不思議なことではなくなりそうです。