脱「英語を話せない日本人」! 保護者が知っておくべき、英語教育の大変化【後編】‐加藤由美子‐

これまで入試で問われることのなかった「話す力」を含めた4技能(聞く・話す・読む・書く)が、近い将来、大学をはじめ公立高校の英語入試でも問われることになっていきそうです。それを後押ししたのが、中高の学校現場における英語指導と、中高生の英語力の厳しい実態です。
これからグローバル社会に羽ばたいていく子どもたちは、「英語を話せない日本人」を脱することができるのでしょうか? 【前編】に続き、子どもの英語学習の実態とそれへの対応について、小中学生の保護者が知っておくべきことを、ベネッセ教育総合研究所・グローバル研究室室長の加藤由美子さんに伺いました。



学習指導要領の目指す方向とは裏腹に、学校の英語の授業は旧態依然……のなぜ?

ベネッセ教育総合研究所が中1・高3を対象に行った「中高生の英語学習に関する実態調査2014」では、英語の授業の実態を知ることができます。
英語の授業で以下のことをどれくらい行っているかについて中高生に聞いたところ、「英文を日本語に訳す」「単語や英文を読んだり書いたりして覚える」「単語の意味や英文のしくみについて先生の説明を聞く」「文法の問題を解く」は学年を問わず7割以上がしていると回答しています。保護者世代が受けた授業とさほど変わらないような、伝統的な授業の実態が浮き彫りになったのです。また、入試の4技能測定で問われるようになる「自分の気持ちや考えを英語で書く・話す」は、中2をピークに減少していくことが明らかになっています。

実は現行の学習指導要領には、中高を通じて4技能を総合的に育成することが明記されており、検定教科書もそれに則した内容になっています。にもかかわらず授業で行われていないのはなぜでしょうか。考えられる大きな理由は、現状の大学入試で「話す」はまったく、「書く」はあまり問われていないことです。入試で問われないから授業でもやらない。当然といえば当然です。



6割の英語教師が、自分の英語力不足の悩みを抱えている

授業で4技能がバランスよく育成されていないことには、入試以外の原因も考えられます。ベネッセ教育総合研究所では、中高の英語教員約4,000人を対象に「中高の英語指導に関する実態調査2015」を行いましたが、その中で6割以上の先生が「自分自身の英語力が足りない」と回答しています(中学校66.7%、高校62.9%)。また、文部科学省の調査(2014<平成26>年度英語教育実施状況調査)でも、一定の英語力(英検準1級以上相当)を持っている英語教員の割合は、中学校で28.8%、高校で55.4%(いずれも全国平均)にとどまっていることが明らかになっています。こういった状況を踏まえ、文科省では教員養成課程や教員免許制度のあり方も検討し始めています。

グローバル化が進展する中で、日本の英語教育は今、大きな転換期にあります。入試改革などの制度の変更自体もまだ見えていない部分が多く、また、前述のように学校の先生の指導面にも大きなばらつきがあります。今の中高生にとっては、ある意味、つらい時期ともいえるでしょう。そんななかで、お子さまにしっかりと「話す力」「書く力」を付けさせたいのであれば、お子さまが進学を希望する高校の英語教育の情報をできるだけ早くたくさん入手し、後悔しない高校選びをサポートしてあげてください。また、学校の授業で「話す」「書く」があまり行われていないのであれば、自分で英語を勉強して実社会で使っている人の話や書物などから、「話す」「書く」の学び方について適切な情報を手に入れ、それに沿った学習をすすめることも必要です。



小学校の外国語活動、子どもは意欲的だが、保護者の6割が不満

このように英語教育の課題が多い時代にあって、小学校の英語教育は順調に進んでいるといえます。ベネッセ教育総合研究所が、小学5・6年生とその保護者を対象に実施した「小学生の英語学習に関する調査」では、5・6年生の6割が「教室の外で英語を使ってみたい」と回答しました。また、英語を使ってみたいと答えた子どもは、「中学校で英語を学ぶことが楽しみだ」「外国の人と友だちになりたい」「英語を使って仕事をしたい」などの英語に関する意識が、使ってみたいと思わない子どもより、いずれも高いことも明らかになっています。

一方で、保護者の6割は外国語活動に満足していないと回答しており、満足していない保護者は、満足している保護者と比較して、子どもに英語力の基礎を身に付けさせてほしいと望んでいます。基礎を身に付けるとはどういうことでしょうか? 実はそこに、気を付けていただきたいことがあります。



英語は実技と捉えるべき

保護者のかたは、自分が学校で英語を学習していたころを思い出し、単語をいくつ覚えたか、いかに正確な文法で作文が書けたか、といったものにとらわれがちです。単語や文法はもちろん大切なものですが、英語が使えるとは、それらを「聞く・話す・読む・書く」の中で使えることであると捉え直すことが大切です。

英語は、単純に言えば実技系の教科です。間違えてもよいから、使いながら覚えていくもの。体育や音楽、美術のように、練習と失敗を積み重ねることでだんだん上手になっていくものなのです。なぜなら英語は、言葉だからです。英語は勉強だという意識から、実技のように身に付ける「ことば」であるという意識に変えていくことが必要です。

お子さまはもちろん、保護者のかたもまた社会の変化に柔軟に対応していかなければならない、厳しい時代です。保護者のかたは、自分が受けてきた教育や評価を基準にするのではなく、めまぐるしく変化する社会で必要とされる力とそれを育てるために教育がどのように変化していこうとしているのか、常にウォッチし続けることが大切なのではないでしょうか。


プロフィール

加藤由美子

加藤由美子

ベネッセ教育総合研究所 言語教育研究室室長 主席研究員。ベルリッツシンガポールを経て、ベネッセのさまざまな英語事業に携わる。研究部門に異動後は英語教育研究を担当。

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