最新の研究・調査からみえてきた、中学・高校生の英語学習の実態と課題は?【後編】-加藤由美子-

「英語を使う力」の強化が求められている今、中高生の英語学習や入試の実態はどうなっているのでしょうか。
前回に続き、2013(平成25)年12月1日、上智大学・ベネッセ英語教育シンポジウム「これからの中学校・高校での英語の指導を考える」で発表した研究内容を紹介します。

今回は47都道府県の公立高校入試分析による、「英語を使う力」を問う問題の変化と、これからの中学・高校生の英語学習の課題について考察します。



高校入試で「英語を使う力」は、10年前から問われていた?

2012(同24)年から施行されている中学校の学習指導要領には、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を総合的に育成すると共に、英文を読み、それについて英語で意見を書く、というように複数の技能を統合させて使うことをめざすと記されています。実は、2002(同14)年施行の学習指導要領にも、表現は違いますが、「英語を使う力」を育成するという意味で同じような目標が掲げられていました。
グローバル化の重要性は長きに渡って叫ばれてきましたが、この10年の間にその切実感はさらに高まってきました。ですから、私たちは「10年前より今のほうが、『英語を使う力』を問う問題が増えているのではないか?」という仮説のもとに、2003(同15)年・2013(同25)年の公立高校入試分析を始めました。
その結果、わかったことは「10年前から『英語を使う力』を問う問題は出題されており、その量はほとんど変わっていない」ということでした。



「使う力」とは必要な知識を、状況に応じて引き出せる力

「英語を使う力」とは、「文法や語彙(ごい)などの英語の知識を、状況に応じて頭の中から引っ張り出して使い、目的を果たすことができる力」です。「この文を過去形に直しなさい」なら単に知識を問う問題となりますが、前後の英文を読み、文脈に合うように、動詞を選び、それを時制に合わせて変化させる問題なら「使う力」を問う問題と解釈できます。そういう意味では2013(同25)年と2003(同15)年で、「知識」を問う問題と「使う力」を問う問題の比率にはほとんど変化がありませんでした。一方、2013(同15)年のほうが、「あなたはアメリカにいます。日本でホームステイすることに決まったアメリカ人の友人からの相談に対して、あなたならどのように答えますか」といった、より具体的な場面・状況、コミュニケーションの目的や相手が設定された出題が増えていました。「英語を使う力」の問題としてわかりやすいと思います。
10年前から、高校入試で「使う力」が問われていることとは対照的に、前回、ご紹介したように、現在の学校での英語指導全体が必ずしもそこに向かえていないということは問題です。生徒が「英語を使う力」を強化するという機運が高まる中、学校現場では、指導を変えていくためのさまざまな試行錯誤が続いています。



「英語で~ができる」(Can-do)を目標に

前回の冒頭で紹介した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、「英語で~ができる」という、Can-doリストによる目標設定を行おうとしています。これはつまり、「英語で日記が書ける」「道案内ができる」「意見を発表できる」といった目標です。

文法や語彙の習得も語学学習に欠かせないものですが、「現在完了の意味と使い方がわかる」といった知識ベースの目標より、Can-doによる目標を表に出して、英語の知識と英語を使う力をつなげていこうとしているのです。この発想の転換のためには、学校の先生方だけでなく、保護者を含め、大人全員が変わっていかなくてはならないと思います。

前回紹介した中学・高校生のインタビューにおいて、将来英語を使って仕事をしたいと思っている生徒の一人が、それに向けて今やるべきこととして「スペルミスをなくすこと」と答えていたのが印象的でした。ミスは確かになくしたほうがよいのですが、「英語で仕事をするためには、英語で議論できるような力を高めることが必要だ。そのために今、何をするべきか」というような発想を持てるように働きかけることが、大人の役割ではないでしょうか。

保護者の方は、ことさらに子どもの英語のミスや不完全な部分だけを指摘するのではなく、「英語の歌詞が聞き取れる」「外国人に英語で自己紹介できる」といったような身近なCan-doを実現できている姿を見つけたら、ぜひほめてあげてください。小さなCan-doの積み重ねが自信となり、「もっと使ってみよう」という意欲につながります。「英語を使う力」は英語を使いながらでしか身に付かないということを忘れずに。


プロフィール

加藤由美子

加藤由美子

ベネッセ教育総合研究所 言語教育研究室室長 主席研究員。ベルリッツシンガポールを経て、ベネッセのさまざまな英語事業に携わる。研究部門に異動後は英語教育研究を担当。

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