AI時代に輝く子どもの育て方 第1回「AI翻訳があったら英語は勉強しなくていいの?」 世界トップティーチャーの回答は?

翻訳・通訳技術の発達が著しいAI時代に、英語学習はどのような意味を持つのでしょうか。立命館小学校の正頭英和先生は、2019年、「教育界のノーベル賞」といわれる「グローバル・ティーチャー賞(Global Teacher Prize)」の世界トップ10ファイナリストに選ばれ、AI時代の教育をテーマとした講演活動にも力を注がれています。お話を伺いながら、AI時代の英語学習について考えていきます。

正頭英和先生 立命館小学校 主幹教諭
聞き手 加藤由美子 ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

この記事のポイント

人とつながるコミュニケーションをするためには英語力は不可欠

加藤 翻訳・通訳技術が発達する中で、小学生が英語を学習する意義はどこにあるとお考えでしょうか。

正頭先生 子どもに英語力を身に付けてほしいと願う保護者の中には、「AI自動翻訳などが普及したら、英語を学んだ時間はムダになるのでは?」と心配するかたがいるかもしれません。確かに、AIを活用した翻訳ツールの実用レベルは高く、今の小学生が大人になるころにはさらに画期的な技術によって言葉の壁がなくなっている可能性もあります。そうしたAI時代において「英語を学ぶ必要があるのか」と問われたら、私は「必要です」と自信を持って答えます。

私が担当している授業では、海外の小学校との交流活動などで翻訳ツールを使っています。その際、子どもたちは翻訳ツールに頼り切っているのかというと、実はそうではありません。直接相手と話したい時には、オンラインであっても、多くの子どもが自分の言葉で伝えようと一生懸命に英語を話しています。

子どもたちの姿から、会話を楽しんだり、相手を喜ばせたりといったコミュニケーションをするためには、これまでと同様に英語力が必要になることがわかります。翻訳ツールは、あくまでもコミュニケーションを補うために、どうしても伝えたいことを英語で知りたい時に機械的に翻訳してくれる便利な道具と位置付けられるでしょう。

英語学習を通して経験を増やすと行動力が高まり、新たな学びが広がる

加藤 コミュニケーションを楽しみ、互いの理解を深めるためには、英語力が必要であることがよくわかりました。そのほかにも、英語学習を通して得られるものはあるでしょうか。

正頭先生 AI時代にあっても英語を学び続けることが大切な理由には、英語学習が多様な経験につながる行動力に火をつけてくれることがあります。英語を話せるようになると、使ってみたくなりますよね。そうすると、外国人と話したり、海外に行ったり、英語のウェブサイトから情報を得たり、行動範囲がグンと広がります。

英語という新たなスキルを身に付けた経験は大きな自信となり、失敗を恐れずに行動して、たとえ失敗をしても、そこから何かを学び取って成長する積極性も高めます。実際、私が教える子どもたちも、英語力が付くと積極的に行動する姿が見られます。翻訳ツールに頼らずに、自分が話す英語で相手と意思疎通ができたといった経験が自信となり、次の行動につながっていくのです。

そうした行動力は、豊かな人間関係にもつながります。特に英語が話せるという自信があると、人間関係は海外にも広がりやすく、異なる文化や価値観、コミュニティへの関わりが増えます。それらを通じて生き方の選択肢が増えると、自分らしく生きる道を見つけやすくなると思います。

現代の日本人は、所属するコミュニティの少なさが、生きづらさにつながっている一面があると感じています。多くの人は家庭や仕事場など限られたコミュニティにしか属しておらず、1つのコミュニティでうまくいかないと、不幸のどん底に突き落とされたような気持ちになります。行動の広がりで多様なコミュニティと関わりを持ったり、英語を使って海外のコミュニティにも所属したりするようになると、生きやすさは大きく向上するはずです。あるコミュニティの中で悩んでいたとしても、別のコミュニティの価値観でとらえると、取るに足らないと感じられるケースはよくあります。

一例を挙げると、日本におけるLGBTQ(性的少数者)に対する理解は、海外に比べて遅れています。他国では、書類の性別欄で男女以外の性別を選べるなど、性の多様性を受け入れる流れが強まっています。日本にとどまっていると、そうした動きに気付けませんが、英語を学ぶプロセスで多くの人と出会い、さまざまな文化や価値観に触れる中で、自分が考える以上に生き方の選択肢は多いことが理解できるでしょう。

子どもの英語学習において保護者は何をすればいい?

加藤 子どもが英語に自然な形で出会い、英語を使うことを楽しみながら力を伸ばしていくために、保護者のかたはどうすればよいでしょうか。

正頭先生 子どもの英語学習において、単にスキルを身に付けようとさせるのではなく、行動や新しいコミュニティにつながるサポートをすることが大切です。今は、動画などで気軽に英語のコンテンツに触れられますから、音楽やアニメなどを入り口として自然と英語への興味を広げやすくなっています。そうしたきっかけから英語に興味を抱いたことを見逃さず、「こっちの動画も面白そうだよ」「こんなイベントがあるけど行ってみない?」など、さらに深い関心や次の行動につながるようにサポートしてみてください。英語を楽しみながら自分の世界を広げ、結果として英語のスキルも高まっていくでしょう。

子どもの英語学習をサポートする際は、ハードルを高く設定しないことも大切です。これまでの日本人の英語学習は、ハードルをとても高く設定し、それが英語を学習することへの壁になっていました。英語科教員ですら、研修などで「英語を話せる人は手を挙げてください」と聞かれても、ほとんど手を挙げません。ほかの国々には、拙い英語でも「自分は英語が話せる」と堂々としている人たちが大勢います。ちょっとした文法の間違いなんて、海外では誰も気にしません。「自分は英語が得意だ」くらいに思っているほうが、英語を使う行動に結び付きやすく、学びはどんどん広がるはずです。

少し気楽に構えて、あくまでも好きなことを体験したり、夢を実現したりする手段、選択肢の可能性を広げるものとして、英語学習を支えてあげるとよいでしょう。

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