中教審会長に「堀川の奇跡」元高校長…大胆な教育改革が始まる!?

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第12期中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、任期2年)の初総会が2023年3月15日に開催され、第11期副会長だった荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長を新会長に選びました。荒瀬理事長といえば京都市立堀川高校で探究学習に力を入れるとともに進学実績も伸ばして「堀川の奇跡」と呼ばれ、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』(2007年10月)にも取り上げられた元校長です。大学や経済界から就任することの多い会長に、小中学校を含め教員出身者が抜擢されたのは初めてです。何が始まろうとしているのでしょうか。

この記事のポイント

校長会長がそろったのも特徴

第12期では、文科相が任命する委員の人選自体に特徴があります。全国の小、中、高校を代表する校長会の会長がそろったことです。中教審といえば1952年設置の教育界では最も権威ある審議会ですが、省庁再編後は教育課程審議会や生涯学習審議会、大学審議会などを統合した大所帯となり、そのため総会メンバーである「正委員」に選ばれる校長会代表は近年、ゼロの状態が続いていました。その代わり、総会の下に置かれた初等中等教育分科会の「臨時委員」などに就いていたわけです。
もう一つ注目されるのは、第11期に臨時委員だった奈須正裕・上智大学教授が正委員に昇格したことです。奈須教授はカリキュラムの専門家で、新型コロナウイルス禍の学びの在り方についても教育課程部会などで議論をリードしてきました。

教育課程から学校の役割、教育支出まで

このような委員の人選は、何を意味するのでしょうか。大胆に推測すれば、これから始まろうとする初等中等教育(幼稚園から高校までの教育)の大きな改革論議に備えようとするものです。
根拠となるのが2022年6月、岸田文雄首相を議長とする内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)がまとめた「政策パッケージ」です。そこでは中教審初中分科会の学校教育特別部会(22年2月発足)を、教育課程から学校の役割・教職員配置・勤務、教育支出の在り方まで幅広く検討するものと位置付けています。

教育の困難を打開へ、授業にも影響か

学校教育をめぐっては、教員が過労死ラインを超えて働くほど多忙化していることや、必要な先生がそろわない「教員不足」など問題が続出しています。一方で国も地方自治体も財政に余裕がなく、教育に十二分な予算を割けない状況が続いてきました。先生の質は、教育の質に直結するものです。国際的にも先行き不透明な社会で活躍できる「コンピテンシー」(資質・能力)の育成が求められるなか、日本でも早急に困難を打開する必要があります。

まとめ & 実践 TIPS

CSTIの政策パッケージでは、学校教育の諸改革を、2027年と見込まれる学習指導要領の次期改訂(小学校は30年度から全面実施)にも反映させるとしています。現行指導要領の「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)」のように、授業の見直しは改訂よりも前倒しで広がる可能性があります。「荒瀬中教審」の今後から、目が離せそうにありません。

(筆者:渡辺 敦司)

中央教育審議会総会(第135回)会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/09/1421377_00046.html

総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成ワーキンググループ(Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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