「教育の無償化」が一番求められている。けれど…

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国や社会が優先的に取り組むべきこととして、教育の無償化を求める声が強いことがわかりました。独自に無償化に取り組む自治体も、増えてきました。
ただ、手放しでは喜べない課題も見えてきます。

この記事のポイント

最も望まれているのは無償化

日本財団は2023年3月、全国の10~18歳の男女1万人を対象にした大規模アンケートを実施しました。4月に施行された「こども基本法」に基づき政府が決める「こども大綱」に、子どもたちの意見を反映することが目的です。

優先的に取り組むべきこととして、最も多かったのが「高校・大学までの教育を無料で受けられること」(40.3%)で、以下「いじめのない社会を作ること」(36.7%)、「本当に困っている子どもの声にしっかり耳を傾けること」(30.6%)が続きました。

自由回答の中にも「勉強したい気持ちがあっても、今以上にお金を出してもらうのに親に遠慮してしまう」(中学3年生男性)、「大学など、授業料がとっても高い為、両親は一生懸命働いてくれています」(高校2年生女性)などの声が寄せられました。

無償化の課題:保護者には授業料以外の負担もある

教育費を巡っては、憲法に従い、国公立学校の小中学校では保護者が授業料を負担することはありません。
2010年には国の制度として、高校の授業料無償化も始まりました。
20年からは私立高校にも制度の適用が始まり、高所得の世帯以外は、どの高校に進んでも実質無償化が実現しています。

ただし所得の基準や計算方法は都道府県ごとに異なり、制服やカバンなどの購入費、通学費などは制度の対象外となることが多いため、保護者の経済的な負担は少なくないのが実情です。

大学や専門学校などでは、20年から国の「高等教育の修学支援新制度」がスタートしています。授業料・入学金の減免制度と、給付型奨学金の支給という2つの支援で、世帯収入や学ぶ意欲など一定の条件を満たせば受けることができます。ここでも、教材費や実習費はかかります。

無償化は進化中。自治体独自の取り組みも

こうした現状を踏まえて、自治体独自で新たな取り組みを始めるケースも出てきました。
大阪府では2026年度に所得制限を撤廃し、高校全学年で授業料の無償化を実現する方針を固めました。大阪公立大学などに通う学生にも今後、範囲を広げる方針です。
日本の教育費は公的な財政支出の割合が低く、特に大学や専門学校で学ぶには、保護者の負担や本人の奨学金返済の負担は大きいものになっています。

まとめ & 実践 TIPS

無償化を拡大するには、大きな財政支出が必要となります。
無償化した結果、魅力のない大学まで助けることになるのではないか、という意見もあります。
進学したいという子どもたち本人の声を政策に反映するには、教育費の負担が大きくなっていることを多くの人が理解し、軽減するための知恵を絞る必要がありそうです。

(筆者:長尾 康子)

※ 日本財団「こども1万人意識調査」
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2023/20230501-88166.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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