学習習慣の定着には、時間の「可視化」がカギ!ウィズコロナで学びを止めないために(1)

緊急事態宣言が解除されてからも地域や学校によって教育活動にはばらつきがあり、学習の遅れを心配されている保護者のかたが多いのではないでしょうか。そのような中で、家庭でできることとは? 成果の上がる学習について研究を続けているベネッセ教育総合研究所の木村治生主席研究員が、ウィズコロナにおける子どもたちの学びについて、3回にわたってお話しします。

●学習習慣の見直しで自ら学ぶ力を高める

休校などによる授業の遅れが心配される中で、ICT(情報通信機器)を活用して充実した取り組みを行っている学校があるというニュースも耳にします。それを聞いて「うちの学校は?」とやきもきしたり、「よその子は家でどのくらい学習しているのかしら」と気になったり…。落ち着かない日々が続いているかたもいるでしょう。でも、知識の習得は、後でリカバーできます。それよりも今は、お子さんと日頃の学習を振り返りながら、「自ら学ぶ力」を高めることを意識してはいかがでしょうか。

「自ら学ぶ力」は、これからの社会で活躍するのに必要な力です。自分で課題を見つけ、主体的に学んでいくこの力は、新学習指導要領でも重視されています。今は、新しい知識や技術が次々と生み出され、学校で教わったことだけでは、対処しきれない課題にあふれています。変化が大きい時代を生き抜くためには、学び続ける力を備えることが必要です。

では、「自ら学ぶ力」を身につけるには、どうしたらいいのでしょうか。コントロールすべき要素は、学習の「量」と「質」です。このうち、わかりやすいのは、一定量の学習ができているかということ。図は学習時間の平均を学校の成績別に示しています。「学校の宿題」の時間は成績による差がありませんが、成績上位の子どもほど「宿題以外の家庭学習」の時間が長い傾向があります。学習成果を上げるにも、自ら学ぶ力を身につけるにも、自分で勉強しないことには始まりません。まずは、学習習慣の定着を目標にしてみてください。

●学習習慣をつくるには、時間の「可視化」から

一定量の学習ができていなかったり、学習習慣が崩れてしまったりしている場合は、1日のタイムスケジュールを決めましょう。例えば下のような予定表を作り、まずは寝る時間と起きる時間を決めて書き込みます。そして、食事や入浴、学校や習い事といった動かせない予定を入れます。すると、空いている時間が“可視化”されるので、そこに勉強や遊びなどを入れていきます。

その際、勉強するおおよその時間を決めておくと計画しやすいと思います。子どもの学年にもよりますが、平日は宿題を含めた家庭学習を1時間から1時間半ほど行うのが平均的。まずは、それを目安に、調整してみてください。難しければ、もう少し短い時間を目標にして構いません。もちろん、休校が長く続く期間などは、長めに学習する必要があります。
ただし、「勉強は2時間以上!」「夕方6時から勉強しなさい」などと、保護者のかたが強制するようでは「自ら学ぶ力」は身につきません。自分で決めた方が守る責任が生じ、“自分ごと”になって意欲的に取り組めます。計画の中身を見ながら「夕飯前の時間が空いているね」「こんなに長く勉強できそう?」などとアドバイスし、お子さん自身が決められるように導いてあげてください。

●子ども自身が学びについて考えることが重要

1日の終わりに「今日はどんな1日を過ごしたの?」などと、振り返りを促すことも大切です。そして、できたところを、ぜひほめてあげてください。計画通りにはいかなくても叱らずに、「できなかったところはどうしたらいいと思う?」と、子どもが考える機会を作れるとよいでしょう。すると子どもは、自分なりに工夫して軌道修正するはずです。それをくり返すうちに、自分で計画を立て、時間を管理し、振り返って修正できるようになっていきます。重要なのは、子ども自身が自分の学びについて考えることです。

「自ら学ぶ力」は、休校などで思うように教育が受けられない状況下ではもちろん、未知の課題にあふれるこの時代を生き抜くために求められる力。そして、高校生や大学生、さらには社会人になっても役立つ、一生ものの力です。今は、それを身につけるチャンスかもしれません。ぜひ親子でいっしょに、学習のあり方について考えてみてください。

次回は、学習の「量」とともに大切な、学習の「質」についてお話しします。

プロフィール


木村治生

https://researchmap.jp/hrkmr/

これまで、子ども・保護者・教員を対象にした調査に携わり、子どもの生活や学びとそれにかかわる周囲の大人の意識・行動に関する研究を行う。
上智大学大学院(教育学修士)、東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~23年)。

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