子どもの自己肯定感がグンと高まる声かけと接し方のちょっとしたコツ【体験談あり】

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近年、教育において「自己肯定感」というキーワードへの注目が高まっています。
お子さまに「自己肯定感を持ってほしい」と考える保護者のかたも多いのではないでしょうか。
しかし、言葉自体は広く知られているものの「『自己肯定感が高い』とはどんな状態か」「高いとなぜよいのか」などはわからないこともあるでしょう。
そこでこの記事では、保護者のかたにとって関心が高いテーマである「自己肯定感」について、ベネッセ教育総合研究所の主席研究員である木村治生が解説します。
子どもの自己肯定感が高まりやすい声かけ・接し方についてもご紹介しますので、お子さまへの働きかけに取り入れてみてください。

この記事のポイント

そもそも「自己肯定感」とは?

「自己肯定感」は、簡単に言えば「自分の存在を肯定する感情」を指します。
似た概念として「自己効力感」(ものごとがうまく行えるだろうという感覚)があります。
この2つは異なるところがありますが、自分をポジティブにとらえる点は共通するので、この記事では「自己効力感」の研究で明らかになっていることも取り入れながらお話ししていきます。

自分に対して肯定する気持ちが強い(=自己肯定感が高い)ことは、子どもが成長していくにあたってとても大切です。
自分を肯定する気持ちがあれば、勉強やスポーツ、趣味などさまざまなことに対して、前向きに取り組めるからです。
最初は失敗しても、「がんばればできるようになる」と自分を信じられれば、ニガテなことや難しいことにも積極的に挑戦できます。
その積み重ねによって、子どもは大きく成長していけるのです。

逆に自己肯定感が低いと、新しいチャレンジに二の足を踏んだり、失敗した時にすぐにあきらめたりしやすくなります。
そのため、自己肯定感が低いと成長の機会を逃しやすく、将来の可能性を狭めてしまいかねません。

自己肯定感が低いとはどういう状態?

どういう状態が自己肯定感が高いと言えるのか、判断するのは難しいと感じるかたもいらっしゃると思います。そこで、まずは「自己肯定感が低い子ども」の特徴をご紹介します。注意すべきポイントを押さえておけば、働きかけがしやすくなります。
もちろん、子どもはその時々で気分や考え方が変わります。下記の特徴が一度当てはまっただけでは、自己肯定感が低いとはいえません。「継続して」下記の傾向が見られないか注視してみてください。

●自己肯定感が低い子どもに見られる特徴

  • 「初めて取り組むこと」「難しいと感じること」はすぐにあきらめる
  • □チャンスがあっても「どうせダメだから」とチャレンジしない
  • □失敗すると、ほかに原因がある場合でも「自分のせいだ」と考えてしまう
  • □自分の行いを後悔し、自分を責める
  • □人との関係づくりが苦手で、思うことを相手に伝えられない
  • □さまざまなことを悲観的に考える

子どもの自己肯定感には「保護者の接し方」が大きく関係する?

子どもの自己肯定感は、さまざまな要因によって育まれます。
中でも大きな影響を与えると考えられるのが、「保護者のかたの接し方」です。
子どもが最も多くの時間を過ごすのが家庭ですから、家族の関わり方によって子どもの自己肯定感は大きく変わります。

たとえば、家族の口癖が「どうせうまくいかないよ」だったらどうでしょう?
子どもも知らず知らずのうちに、「チャレンジしてもうまくいかないだろう」と考えるようになる可能性があります。
子どもが失敗した時、プロセスの何に問題があったのかを冷静に考えることをしないで、「あなたが悪い」と存在を否定するような関わりをしたら、子どもは自分のことを否定的にとらえるようになるでしょう。

ただし、「家庭でしっかり自己肯定感を高めなければ」と考えすぎる必要はありません。
いまは学校教育でも「自己肯定感の向上」が重視されており、「子どものよさ」を認め、はげます取り組みが増えています。
そうしたことが功を奏して、近年は「自分には、よいところがあると思いますか」に対して、「当てはまる」と答える小・中学生が増えています

また、子ども同士の友人関係や学校外の習い事などの場においても、心理的安全性が確保されている場なら、お子さまはさまざまなチャレンジをしながら自己肯定感を高めていけます。
「子どもが自己肯定感を高められる場は家庭だけではない」という前提に立って、ゆったり構えてみてはいかがでしょうか。

※参考:令和5年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料|国立教育政策研究所
https://www.nier.go.jp/23chousakekkahoukoku/report/data/23summary.pdf

子どもの自己肯定感を高めるために保護者ができること

ご家庭でのちょっとした働きかけで、お子さまの自己肯定感は高まりやすくなります。
自己肯定感アップに役立つ、おすすめのアクションをご紹介します。

●成功体験を味わわせる

お子さまが関心を持っていることで、いままでやったことがないことに取り組むようすすめてみてはいかがでしょうか。
料理や大工仕事、旅行の計画、自由研究など、内容はなんでも構いません。
「がんばったらできた!」という達成感は、自己肯定感向上の原点になるはずです。

●難易度が高いことは一緒に取り組む

難しいことに挑戦したがらないようなら、保護者のかたから「一緒にやってみよう」と誘ってみるのもよいでしょう。
保護者のかたと一緒に取り組んで成功体験を得られれば、お子さまは保護者のかたのやり方を学び、「今度は自分一人でもうまくいくかも」と自分に対する信頼感を持ちやすくなります。

●ほめる・励ます

何かに成功した時は、口に出してほめてあげることも大切です。
たとえば、「重い荷物を運べた」などのささやかなことでも、「力が付いたね」と声をかけると、子どもは「自分は力が付いたんだな」と認知できます。
うまくいかなかったことも、「次はこうすればできるよ」と前向きに励ましてあげるとよいでしょう。
その積み重ねによって、お子さまは自己肯定感を高めていくことができます。
気付いた時でよいので、しっかり評価することをおすすめします。

なお、お子さまの自己肯定感を高めるためには、保護者のかた自身が自己肯定感を高めることも大切です。
生活の中では思いがけないトラブルもたくさん起きるでしょう。
しかし、保護者のかたが「大丈夫、なんとかなる」とポジティブにとらえて前向きに対処していれば、お子さまもその姿を見て育つことになります。
そうすれば、同じようなマインドを持って、自己肯定感を高めて困難に立ち向かえるようになっていきます。

これはNG!? 自己肯定感が下がりやすい接し方・声かけ

お子さまの自己肯定感を引き出す接し方をご紹介してきましたが、逆に「自己肯定感を下げる可能性がある接し方・声かけ」を知ると役立つかもしれません。
普段の行動や言葉かけを振り返る時の参考にしてください。

●子どもを過剰に管理する

「まず宿題をやりなさい。次は明日の準備をして……それから……」「まだ明日の準備をしていないの? 夕ご飯を食べ終わったらすぐにしなさいって言ったよね」
このように、やるべきことを次々と保護者が決めてしまうと、お子さまは「自分で決めるのはよくないんだ」と思い込んでしまう場合も。
幼いうちは子どもの生活を管理することは必要ですが、取り組む順番ややり方をある程度任せるなど、達成感を味わえるような接し方を意識するとよいでしょう。

●保護者の権威を振りかざす

「親の言うことが聞けないの!?」「だから早く寝なさいって言ったでしょ」など、上からの指示が多すぎることも、子どもの自己肯定感が育ちにくくなると思います。
お子さまが「何をやってもどうせ否定されるんだ」と感じてしまうかもしれません。

ただ、時には「もう寝なさい」などとキッパリ言うことが必要な場面もあります。親として伝えるべきことは伝えなければなりません。常に権威的に指示ばかりしていないかを振り返り、もしそうであれば子どもの言い分を聞く場面を増やしてください。

自己肯定感をアップさせる接し方・声かけ【体験談】

小学生から高校生のお子さまがいる保護者のかたに「子どもの自己肯定感を高めるための接し方・声かけ」についてアンケートを実施しました。

特に多かったのは、「小さなことでもほめる」「お手伝いなどをしてくれたら『ありがとう』と伝える」「否定せずに話を聞く」といった声。
また、小学校低学年までのお子さまに対しては、「ギュッとハグ」などのスキンシップを心がけていた保護者のかたも。
お子さまへの愛情やリスペクトを前面に出すことで、自己肯定感が上がっていくことが期待できそうですね。

(体験談)

下の子をほめる時は、上の子も「お姉ちゃんが手伝ってくれるところを見てまねしてるんだね! いつもありがとう」とほめるよう意識しています。
(千葉県・しおりさん 第1子は小学1年生)

学校から帰宅したら「今日は何が楽しかった?」と質問するなど、自然とポジティブな答えができそうな声かけを心がけています。ポジティブ思考は自己肯定感につながると思うので!
(兵庫県・sachiさん 第1子は小学3年生)

「昨日よりうまくなったね」「前回よりできたね」など、以前と比べて進歩したことは、こまめにほめるようにしています。結果だけではなくプロセスも見て声をかけることで、子どもの自己肯定感が上がるのではないか、と感じています。
(北海道・りおさん 第1子は小学6年生)

毎日寝る前に、「大好きだよ~」とお互いに伝え合っています。ベタかもしれませんが、照れずに愛情表現することは大事!
(京都府・ちまさん 第1子は小学2年生)

※2024年2月に行った「保護者のかた向けアンケート」(1217人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

まとめ & 実践 TIPS

日々の生活の中で、「また怒ってしまった」「この言い方はよくなかったな」などと反省ばかりしてしまい、自己肯定感が下がってしまっている保護者のかたもいるかもしれません。
そんな時こそ、「まずはがんばっている自分をほめてあげよう」とゆったり構えてみてください。
そうすることで、結果としてお子さまの自己肯定感も育まれていくのではないでしょうか。

プロフィール


木村治生

東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~22年)。
これまで、文部科学省、経済産業省、総務省などからの委託研究に携わるとともに、文部科学省審議会委員、独立行政法人国立青少年教育振興機構事業選定委員、内閣府調査企画委員会委員、埼玉県草加市教育委員会専門部会委員などを務める。
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