2023.4.13
成績優秀者の勉強法4つ!調査でわかった「勉強の仕方がわからない」を解消するアイデア
東京大学社会科学研究所と株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所が2015年から行っている調査によると、「上手な勉強のしかたがわからない」という子どもがこの4年間で増加し、7割近くにのぼることがわかりました。また、成績優秀者について分析を行うと、「自分に合った勉強方法を理解していること」が共通点として浮かび上がってきました。今回は、この調査の結果から、成績優秀者が行っている勉強法を解説します。
勉強の仕方がわかると成績も上がる!
① 勉強法を理解して勉強すること、②高い意欲で学習すること、③たくさんの時間勉強すること。この3つのなかで学校の「成績」ともっとも関連が強いのはどれだと思いますか?——正解は①です。図1は、学習にかかわる3つの要素(①勉強法、②学習意欲、③学習時間)と「成績」の相関を示しています。数値は相関係数といって、「-1~1」の値をとります。-1に近いほど負の相関(一方が多くなれば、もう一方は少なくなる関係)、1に近いほど正の相関(一方が多くなれば、もう一方も多くなる関係)が強いことを表します。
図1 学習にかかわる3つの要素と成績の関係
※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2022年
※対象は小4~高3生8,120名。分析は、小4-6生:中学生:高校生が1:1:1になるように重み付けを行った
※「勉強法」は「上手な勉強の仕方がわからない」(数値逆転)、「学習意欲」は「勉強しようという気持ちがわかない」(数値逆転)、「学習時間」は「宿題」「家庭学習」「塾での学習」の1日当たりの時間の合計、成績は5教科(小4のみ4教科)の合計を用いた
図からわかるのは、次のようなことです。
1)勉強法を理解して勉強することは、成績の向上に効果がある
3つの要素のうち成績ともっとも関連が強いのは「勉強法」。「学習時間」はそれほど相関が強くはなく、やみくもに長い時間勉強するよりも、勉強法を理解して勉強するほうが成績には効果がある。
2)勉強法が理解できると学習意欲も高まる
「勉強法」は「学習意欲」との関連が強い。勉強法がわからないと意欲もなかなか上がらない。
調査では、同じ子どもを追跡して調査していますが、1年間で上手な勉強法が「わからない」から「わかる」に変化すると、同じ1年間で学習意欲が高まり、学習時間が増え、成績も上がるということがわかりました。
成績優秀者が実践している勉強法を分析すると……
それでは実際に、成績優秀者はどのような勉強の仕方を実践しているのでしょうか。成績による勉強法の違いを見たのが図2です。
図2
※数値は、「よくする」と「ときどきする」の合計(%)
※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2022年
※対象は小4~高3生8,120名。分析は、小4-6生:中学生:高校生が1:1:1になるように重みづけを行った
※成績上位層と下位層の差が大きい順に並べた
※成績は5教科(小4のみ4教科)の合計について、学年ごとに上位層、中位層、下位層が均等になるように分けた
ここからは、次のようなことがわかります。
1)成績上位層はいろいろな方法を試している
図には5通りの勉強法が並んでいますが、すべての方法で「成績上位層」のほうが「成績下位層」よりも高い比率になっています。成績がよい子どもは、いろいろな方法を実践しているということです。また、上位層と下位層の差は【自己調整方法】がもっとも大きく、自分に合ったやり方を工夫しているかどうかということも成績に影響しているようです。
2)メタ認知を高める方法が成績を高めるのに効果的
図2でご紹介したのは、いくつもある勉強法のパターンのうち、上位層と下位層の差が大きいもので、いずれも、自分の学習の状況や問題の内容を客観的にとらえる方法です。物事の状況を第三者的な見方で客観的に捉える力を「メタ認知」といいます。成績優秀者は、この「メタ認知」を働かせる学習を実践しているようです。
成績優秀者が実践している勉強法4つ
「メタ認知」を働かせる勉強法とは、いったいどういうものでしょうか。もう少し詳しく考えてみましょう。
① 学習の計画を立てる【プランニング方法】
まずは学習の計画を、できるだけ自分で立てることです。何を目標に勉強するか、どんな内容を勉強するか、何を使って勉強するか、どれくらいのペースで勉強するかといったことを、成績がよい子ほど考えています。すべて考えるのが難しい場合は、何をどれくらい行うのかといった大まかなことを、まずは1週間くらいの期間で考えられるといいかもしれません。
自分で計画を立てるのが難しい場合は、保護者のかたがサポートしても構いませんが、最終決定は子ども自身がすることが大事です。保護者のかたが決めてやらせるのでは、計画を立てる力が身につきません。
② 学習の状況を客観的にとらえる【モニタリング方法】
計画を立てて実際に勉強を始めたら、うまくいっていること・うまくいっていないことをモニタリングして、客観的にとらえることが大切です。立てた計画について、目標はよかったのか、勉強の内容は正しいのか、使う教材は変える必要はないか、決めたペースで勉強できているのかなどを見直して、必要に応じて修正できるとよいと思います。こうした調整力が身につくと、学習をさらにうまく進められるようになります。学習内容についても、自分は何がわかり、何がわからないのかを客観的に理解できていると、わからないことだけに集中して勉強できるので、長い時間をかけなくても効果的に学習を進めることができます。
③ できなかったことをやり直す【解き直し方法】
成績優秀者は、できなかったことをやり直して、できるようにして先の学習に進む傾向があります。できなかったことを放置しておくと、次の難しい学習に進んだときに、その学習の内容を理解することができなくなります。できるだけこまめに、自分は何がわかっていないのかを確認しながら、間違えたらやり直す習慣を付けるとよいでしょう。つまずいた時こそ、成長のチャンスです。
④ 学習の意味を理解する【意味理解方法】
テストなどでも、出題者が求めていることやその問題で問われている意味を理解できていないと、うまく答えられません。日々の学習の中でも、成績優秀者は、教科書に書いてあることはどういう意味なのか、この問題はどのような力を試そうとしているかといった意味を理解しているものです。例えば、漢字の学習などでも単純に丸暗記するのではなく、その漢字の成り立ちや意味を理解すると定着しやすくなります。
保護者のかたもいろいろな場面で「なぜ?」「どうして?」という問いを投げかけて、子ども自身が意味や理由を考えるような働きかけができるとよいと思います。
保護者の働きかけのヒント
こうした勉強法は一朝一夕に身につくものではなく、また、その効果もすぐに表れるというものでもありません。しかし、難関大学に合格するような生徒を見ていると、ただ単に言われたことを忠実にこなすのではなく、こうした方法を駆使して、自分の学習を自律的に組み立てている傾向が見られます。まずはできることから少しずつでも、学習を客観的にとらえられるように、保護者のかたも支援してみてください。例えば、こんなことから始めてみてはいかがでしょうか。
① 子どもができない状況にイライラしない
大人から見ると遠回りなやり方や、適切ではないと思われるやり方をしていても、子どもは自分なりに考えて試行錯誤しています。そのプロセスも大切です。「それじゃあダメじゃない」などと叱ったり、一方的に指示したりしないようにしましょう。
② 自分で考えさせ、決めさせる
目標を立てたら、それを達成するために何をどれくらい勉強すればよいのか、そのために1日や1週間でどのくらいの頻度・量を勉強すればよいのかを子ども自身にたずねてみましょう。あまりにも現実的でない計画を立てていたら「週末に○時間も勉強がんばれるかな?」「予備の日は作らなくて大丈夫?」などと再考を促す助け舟を出してもよいでしょう。ただし、最終的には子ども自身が決めて、責任をもってがんばらせることが大切です。
③ 決めたことを「見える化」する
自分で決めた勉強法や目標、計画は文字にして、子ども自身の目に付きやすい場所に「見える化」しておきましょう。記憶があやふやになった場合でもすぐ確認できますし、何度も目に留まることで意識づけされやすくなります。紙に書いて勉強エリアの机や壁などに貼ってもよいですし、家庭用のホワイドボードを使うと計画を変更する際に修正しやすくなります。
④ 1日の終わりに振り返りをする
その日に予定していたことができたのか、できなかった場合はその理由も含めて子どもと振り返りをしましょう。口頭での簡単な会話でも構いません。できた場合はほめて、できなかった場合はその理由や次からどうすればよいかを一緒に考えてヒントを示すなどの支援をしましょう。
自分で決めて、やってみて、振り返って、調整してまたやってみる、を繰り返すことで、子どもは自分に合った勉強のやり方を身に付けていきます。保護者の方は一歩引いて支援するイメージで、温かく見守りたいものです。
まとめ
成績優秀者への調査・分析からおすすめの勉強法を4つご紹介しました。試行錯誤しながら、自身に合った勉強法を見つけてみてください。次回は同調査から見えた「勉強のやる気を引き出す方法」についてご紹介します。
取材・執筆:神田有希子
※掲載されている内容は2023年4月時点の情報です。
監修者
木村 治生きむら はるお
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員
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